橋下氏に代表復帰してほしい…維新ガバナンス委員・竹中平蔵が大学無償化に大反対「今の維新は意思決定がうまくできない」

3月4日、2025年度当初予算案が、自民・公明・維新の賛成多数により衆議院を通過した。新年度予算に盛り込まれたのは高校授業料の無償化だ。NHKによると「高校授業料の無償化では、来月から公立高校を実質的に無償化し、来年4月からは私立高校を対象に加算されている支援金の上限額の所得制限を撤廃し、私立の全国平均の授業料である45万7000円に支援金を引き上げる」という。今回の予算通過で重要な鍵を握っていた日本維新の会共同代表の前原誠司氏は「次は大学無償化に取り組みます。制度設計を策定した上で」とSNSに投稿し波紋を呼んでいる。日本維新の会が設置するガバナンス委員会に招聘される経済学者の竹中平蔵氏はこのことについて「大反対だ」と述べるーー。
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「政治とお金」の問題を解決させる、真の方法
私は長年、日本に政党法が必要だと主張してきました。なぜなら、日本の政党の党員数があまりにも少ないからです。自民党でさえ党員数は国民の1%以下しかありません。自民党の党員数は100万人程度で、次に共産党が30万人ほど、他の政党はほとんど10万人以下です。このような構造が成り立っている理由は、企業や団体から資金を得ていることも一つ理由にあげられます。結局これによって党が掲げる政策が企業や団体の影響を受けているという現状もあります。
日本で党員数が少ない理由は、党員になることに魅力がないからです。例えば、自民党員になっても総裁選の時に実質的な投票権はありません。最初の投票で50%が国会議員票で、2回目の投票はほとんど議員投票。実質的に国会議員が決めています。他の国では党員がもっと代表を選べる仕組みになっています。
アメリカなどでは分かりやすいですが、党員が大統領候補を選ぶことができます。だからこそ数千万という党員を民主党も共和党も持っています。もし日本でも自民党総裁を党員が自分で選べるようになれば、党員数は100万人ではなく、すぐに1000万人になるでしょう。党員の会費が収入源になるだけでなく、党員による監視も強まるので「政治とお金」の問題も解決します。
日本は間接民主主義だから今のままでいいという意見もありますが、間接民主主義の国でも、ヨーロッパの国々ではもっと党員の力が大きくなっています。また、一部の学者からは党の右翼的な意見が拡大することを危惧して「党員の力を増やすと危険だ」という意見もありますが、それは民主主義の否定です。
なぜ私が維新「ガバナンス委員会」の委員になるのか
アカデミズムの中でも自分の気に入らない意見を排除しようとする人がいるのには愕然とします。
むしろ、党員数が少ないからこそ、一部の人だけで意見が偏ってしまう危険性があります。党員数が大きくなれば、全体の意見に近づくはずです。自民党だけでなく、アメリカの共和党や民主党もスペクトラムがあり、様々な意見の人が存在しています。
トランプが選ばれた現象についても、私は最終的に人々が民主党でも共和党でもない人を選んだのだと思います。ワシントンのエスタブリッシュメント全体を否定したという感じです。日本にも似たような状況があるかもしれません。
さて、そんな中で私は日本維新の会が設置する党の「ガバナンス委員会」の委員になることになりました。維新の会からの打診をお受けした理由については、党というよりも日本全体の政党ガバナンスを高める必要があるという問題意識があったためです。
維新の会については、橋下徹さんや松井一郎さん、吉村洋文さんを見ると、彼らは「保守の改革派」だと言えます。自民党は保守ですが、改革的ではありません。非常に保守的で既得権益に支持を得ています。そのため、自民党ではない保守の改革派である維新に対して、多くの人が期待していました。
今の維新は「意志決定がうまくできていない」
しかし最近の維新は、前原誠司さんが共同代表になるなど、色が変わってきた印象があります。前原さん自身も基本的には保守の改革派ですが、教育の無償化など特定の政策に偏っている感があります。維新の会は「保守の改革派」として何を当面の戦略的アジェンダにするかという点で、まだ意思決定がうまくできていない印象です。