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トランプ政権の本質を「全く伝えない」日本メディアの酷さ…「日本は米を守る義務ない」発言、本当はどういう意味なのか「欧米の価値観」を盲従する報道

 米国のドナルド・トランプ大統領は3月6日「アメリカは日本を防衛しなければならないが、日本は我々を守る義務はない」と日米安保の片務性に不満を表した。「日本はアメリカに基地を提供する義務を負っている。これは他のどの国も負っていないもので、一方的にアメリカが日本を守り、日本は一方的に守ってもらっているという、そういう関係だけではない」と反論した。また日本メディアもトランプを批判する言説を展開した。早稲田大学招聘研究員で国際政治アナリストの渡瀬裕也哉氏は、日本におけるトランプ報道の問題点を解説するーー。

目次

それが本当に日本の視点から見た分析や感想なのか

 トランプ政権に関する日本の報道は本当に酷いものが多い。特に有識者・ジャーナリストと呼ばれる人々のトランプ政権の外交安全保障政策に関する論評は、それが本当に日本の視点から見た分析や感想なのか、と突っ込みたくなる例も少なくない。

 曰く、「トランプ政権が従来までのリベラルな国際秩序を破壊する」、「同盟国からの信頼が失われる」、「世界の課題に関心を持たない」「パワーゲームを重視する予測不能な指導者」など、様々な論評が飛び交っている。

 しかし、このような論評はアジア人の視点ではなく、欧州人(及び米国内のリベラル)の見方に過ぎないものだ。欧州の価値観であるリベラルな国際秩序が共有されておらず、ソ連と対峙した時代の欧州との同盟が見直されることに動揺し、欧州が重視する気候変動等の世界的課題を軽視し、危機に対応する軍事力がない欧州諸国が相手にされていない、という話に過ぎない。したがって、トランプ政権の外交安全保障に対する懸念の声の大半は、米国の態度に対する欧州人の憤りを表現した文言に過ぎない。

日本の有識者・ジャーナリストは欧米で教育を受けるために欧米にかぶれている

 日本の有識者・ジャーナリストは欧米で教育を受けるために欧米にかぶれている。もちろん、彼らが欧米で学ぶ内容が欧米のリベラルが提供したパッケージであることを理解し、その思考枠組みを受け入れることを是とするほどに入れ込んでいるなら、筆者はそれも一つの物の見方として尊重したい。

 しかし、欧米かぶれの思考がそのまま日本を含めたアジアの現状を分析するのに役立つわけではない。これは日本人として忘れてはならないことだ。上述のトランプ政権に対する評価は、あくまでも欧州人の感想でしかないのだ。

 一方、アジア諸国は欧州諸国が主張するほど米国に対するリベラルな幻想を持ち合わせてはいない。特に日本が密接な関係を持つ東アジア・東南アジアの国々にはそのような意識は希薄だ。(当然、欧州だけでなく、東南アジア以外に住んでいる人々が更にリベラル幻想を持っていないことは容易に想像ができる。)

民主主義国の同盟国であった日本との関係はソ連の崩壊後には蔑ろに

 たとえば、米国はニクソン時代に中国共産党との関係を再構築し、その後も中国に対する経済協力を発展させることで、中国共産党を実質的に延命させ、権威主義国の雄として彼らの台頭を軽視してきた。東アジア・東南アジアの人々にとって米国がリベラルな価値観を持っているなどとどうして言えるのだろうか。さらに、民主主義国の同盟国であった日本との関係はソ連の崩壊後には蔑ろにし、北朝鮮の核拡散の問題は事実上放置し、直接的な軍事介入はベトナム戦争以来行われていない。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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