2025年最新「3万円給付金」の申請はしましたか?「価格高騰重点支援給付金」支給開始…誰か受給対象者なのか

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 物価上昇が止まらない中、石破茂首相は2025年度補正予算案の編成を検討している。米国のトランプ大統領による相互関税や為替変動の影響にも対応する狙いで、予算規模や財源を総合的に見極めていく方針だ。ただ、与党内で浮上する国民一律の現金給付案や消費税減税策に対しては慎重姿勢を崩していない。大盤振る舞いのバラマキ批判を避け、低所得者対策に特化した“小粒”なものにとどめたい意向だという。経済アナリストの佐藤健太氏は「物価高騰の波に全国民が疲弊する中、またしても低所得世帯に限定した対策だけでは納得感が得られないのではないか。首相は『外交音痴』批判に加えて、『経済音痴』の烙印を押される可能性もある」と指弾する。

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国民が望む現金給付案や消費税減税を首相が採ることは考えにくい

「この事態に対応するために補正予算が必要なのかどうか。適切に判断していきたい」。石破首相は4月14日の衆院予算委員会で、トランプ関税などによる不確実性を踏まえた対策を求められた際、「バラマキを行うつもりはない」と断言した。補正予算案の編成についても「政府として検討している事実はない」などと慎重な答弁に終始した。なぜ、このような言い回しを首相が選ぶかと言えば、年度初めの4月時点で補正予算に言及するとなれば「当初予算の見通しが甘かったのではないか」と批判を受けるためだ。

 複数の政府関係者によれば、実際は政府・与党内で補正予算を前提にした議論が進められているのだが、その中身によっては財源の問題が生じる。今夏の参院選を前に国民一律の現金給付案や減税策といった「大玉」を打ち出したい与党と、それだけの財源があるならば「年収103万円の壁」見直しやガソリン税の暫定税率廃止などを先行させることができたとする一部野党の主張に挟まれる形で、首相の心は日々揺れ動いているように映る。

 ただ、残念ながら国民が望む現金給付案や消費税減税を首相が採ることは考えにくい。その理由は石破政権の経済対策はこれまでも低所得者対策が中心であり、大半の国民が影響を受けたガソリン補助金の縮小や電気代・ガス代の支援策をストップさせてきた経緯があるからだ。1年前から2倍にもなったコメ価格の高騰を招いても、迅速に効果的な手を打たず、自らの政権でストップしておきながら、今度は一転してガソリンや電気代・ガス代の支援策を再開する方針というのだから理解に苦しむ人は多いだろう。

住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円を支給

 石破政権は昨年11月に決定した総合経済対策で、物価高の影響を受けている住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円を支給することを決めた。また、対象世帯のうち子育て世帯には子ども1人あたり2万円を加算し、自治体に応じた対策に充てる「重点支援地方交付金」を活用することにした。申請の方法やスケジュールなどは自治体で異なるため、それぞれ自治体の公式ホームページ上などでチェックしてもらいたい。

 東京・世田谷区のサイトを覗くと、申請は2024年12月13日時点で住民票がある自治体にすることになっており、2024年度の課税情報で判断される。給付金に関する書類は世帯主宛てに送られ、申請完了後1カ月~1.5カ月程度で振り込まれる。国籍に関係なく、支給対象世帯の要件を満たしていれば対象となる。内閣府によれば、3月までに約8割の市区町村において給付開始済みで、4月までに9割超、5月までにほぼ全ての自治体で給付が開始される予定となっている。

 2024年度補正予算の重点支援交付金を活用した自治体の例としては、山形県川西町が町内で使用できる子育て世帯応援券を0~18歳の児童1人あたり6000円分配布。徳島県は18歳未満の児童を持つ「ひとり親世帯」に子供1人あたり2万円給付。和歌山県岩出市は乳児1人あたり「紙オムツ・お尻拭き」(5000円相当)を支給している。

対象が「住民税非課税世帯」になっている点

 また、北海道知内町は全世帯に地元産米を1世帯あたり5キロ支給。長野県辰野町は町出身者で町外に暮らす学生に対して町の特産品(コメ、麺類など)を詰めあわせした「学生エール便」を支給。滋賀県草津市は、私立学校や保育所などの給食費負担を軽減(小学校は月額4000円に据え置き、1学期分の給食費を無償化)。鳥取県三朝町は町内の全世帯を対象にガソリン、灯油、プロパンガスなどの購入に使用できる燃料券(1世帯あたり5000円分)を配布している。埼玉県越谷市は、市内で購入する省エネ性能の高い家電(エアコンまたは冷蔵庫)に対する補助金を支給(補助率1/2、限度額4万円)。北海道士幌町は町民、町内の事業者支援のため水道使用量の基本料金(月額1045円)を3カ月減免することにした。

 ここで注目したいのは、対象が「住民税非課税世帯」になっている点だ。政府が給付金を配るというニュースが流れて喜んでいると、対象が限定されて自分は受け取ることができないという人も少なくない。

この「住民税非課税世帯」とは何なのか

 では、この「住民税非課税世帯」とは何なのか。そして、所得制限は本当に意味があるのかを考えてみたい。

まず、年収が一定水準より低い場合は住民税の支払いが免除される。全員が住民税非課税の世帯を「住民税非課税世帯」という。2022年の「国民生活基礎調査」によると、1万世帯あたりの住民税非課税世帯は約2400世帯となっている。実に4世帯に1世帯近くが該当する計算で、思ったよりも多いと感じるのではないか。

 約1300万世帯と推定される住民税非課税世帯は、①生活保護法による生活扶助を受けている②障害者、未成年者、寡婦、ひとり親で前年の所得が135万円以下③それ以外の人で前年の所得が市町村の基準以下―の3つが当てはまる。「それ以外」の場合は扶養家族の有無によっても異なり、家族がいる場合は月収20万円でも非課税世帯となる場合がある。

 生活扶助を受けている人や障害者、ひとり親の世帯は特に物価高の直撃で困窮するケースが目立ち、手厚い支援がなされるのは当然だ。ポイントは、非課税世帯の7割超が年金生活世帯となっていることである。年齢別の割合を見ると20代が2割超、30代から50代は約1割にとどまっているが、65歳以上のシニアは75%近くに上っている。これは「公的年金等控除」(110万円)によって年金生活者が非課税になるケースが多いためだ。

深刻な影響を受けているのは住民税非課税世帯だけではない

 年金生活者は、現役世代のように賃上げの恩恵が得られない。エンゲル係数が高いシニア層は食料品や生活必需品が高騰すればダメージを受けやすいのも事実だ。低所得世帯を対象にした給付を振り返れば、2020年の「特別定額給付金」では全国民に10万円が支給されたが、その後は非課税世帯に限定して2021年に10万円、2022年に5万円、2023年に10万円が給付されてきた。先に触れたように、この給付対象の75%は高齢者だったことになる。

 政府の言い分としては、低所得世帯は物価高の影響を賃上げや年金物価スライドなどで賄いきれず、それらをカバーできる水準として1世帯あたり3万円を目安に給付するということになる。もちろん、その必要性を否定するつもりはない。だが、エンドレスになるような錯覚に陥る足元の物価上昇をにらめば、深刻な影響を受けているのは住民税非課税世帯だけではない。とりわけ、先に挙げた非課税世帯の条件をわずかに外れ、ギリギリの生活を強いられている世帯は辛いものがあるはずだ。

国家・国民のために責務を果たすのが宰相の務めのはず

 誤解を恐れずに言えば、政府は「財源」を気にするあまり対象となる世帯を限定しているように映る。昨年来、衆院選で躍進した国民民主党は「年収103万円の壁」見直しやガソリン価格引き下げ策などを訴えてきたが、「財源がない」と政府・与党は折り合いをつけてこなかった。たしかに財源の裏打ちがないものは将来世代へツケを回すとの理屈はわかる。だが、過去最高の税収を誇りながら国民の血税を還付できない国家は「一人前」と言えるのだろうか。もはや、今の状況のままでは低所得世帯に対象を限定にした給付金だけでは国民の理解が得られるとは思えない。

 野党第1党の立憲民主党は今夏の参院選公約に「食料品の消費税ゼロ%」を盛り込む方針だという。その他の政党も国民に寄り添った政策や公約を打ち出すことだろう。その時に政府・与党はどう対応するつもりなのか。言うまでもなく、野党の支持者も国民だ。トランプ関税に世界中が振り回される中、石破政権の次の一手は極めて重要になるだろう。「バラマキ批判」を恐れるのはまだ良いとしても、国民にこれ以上の忍耐を強いるのだけは控えてもらいたい。いかなる批判を受けても、国家・国民のために責務を果たすのが宰相の務めのはずである。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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