トランプ関税の真の勝者…米中の報復関税の応酬によって中国・習近平が墓穴を掘ることになった理由

米トランプ大統領が打ち出した関税政策で世界中が振り回されている。中国は当初強気だったが、最終的にはお互いが関税率115%の引き下げを受け入れることによって、米中双方がメンツを保てる形で折り合いをつけた格好だ。
国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「トランプ関税が実施されたことで、米国保守派やMAGA派が学んだことがある」という。今後の米中関係はどう展開していくのか。示唆に富む論考をお届けするーー。みんかぶプレミアム特集「危機の時代を生き抜く」第1回。
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米中の報復関税の応酬は、双方がメンツを保つ形で折り合いがついた
4月2日に公表されたトランプ大統領による相互関税、その後に、英国との合意や中国との仕切り直しなど動きがあり、世界情勢は目まぐるしく変わる国際情勢に振り回されている。
ところで、誰が「トランプ関税」の影響によって生まれた真の勝者だったのだろうか。特に米中の貿易戦争は両国の関係者に何をもたらしたと言えるのか。
米中の報復関税の応酬は、双方が矛を収める形で一旦手打ち状態となった。お互いが関税率115%の引き下げを受け入れることによって、米中双方がメンツを保てる形で折り合いをつけている。
強気な姿勢を見せていた中国が、本当は冷や汗ダラダラだった理由
この結果に対しては、トランプ政権の敗北と揶揄する向きが多い。実際、中国側は米国に対して報復関税を講じた上に、実際にはトランプ政権にほとんど何の譲歩もしなかった。この交渉経過を見れば多くの識者が中国の勝利と理解することも分からなくはない。そして、今度は欧州やインドなどの経済力を持った国々は米国に対して報復関税が有効と考える可能性もあり、トランプ政権としては一層難しい対応を迫られることになるだろう。
一方、中国は既に不動産バブル崩壊が深刻な状況な上に、個人消費も大きく落ち込むデフレ環境にある。そのため、今回のトランプ関税は中国経済にとっては止めの一撃になりかねない状況であった。そのため、レアアースの輸出規制などの切り札を切りつつも、その強気のポーカーフェースの裏側は、冷や汗でダラダラものであったと推測される。そして、現在も米国による対中関税は依然として30%も残っており、中国から米国の輸出に甚大な影響を与え続けることに変わりはない。