これが玉木内閣最強布陣だ!「榛葉官房長官、進次郎農水大臣」悪目立ちの山尾・足立の処遇は…経済改革何が起きる

政局の不透明感が強まる中で、次の総理候補をめぐる議論が水面下で活発になっている。その中で注目を集めているのが、国民民主党代表の玉木雄一郎氏だ。もしも現実に「玉木内閣」が発足したら、どのような布陣となり、どのような政策が掲げられるのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が大胆予測した!その可能性と政治的リアリズムについて詳しく解説するーー。
目次
石破政権が崩れた先に浮かぶ「玉木内閣」の現実味
石破茂首相が参院選で敗北を喫する。そのような政治情勢が到来すれば、玉木雄一郎総理大臣の誕生が俄然現実味を帯びてくるであろう。現下の自民党内においては、石破氏以外に積極的に総理の座を目指す人物が少ないという見方が永田町では支配的である。その背景には、衆議院で単独過半数に満たない現状において、誰が自民党のトップに立とうとも、予算案をはじめとする重要法案の成立には野党との協力を仰がざるを得ず、いわゆる「土下座外交」を強いられる場面が増え、総理としての強いリーダーシップや「見せ場」を演出しにくい状況が予測されることが挙げられる。
しかし、わが国の歴史教科書に名前が刻まれる可能性すらある総理大臣の椅子を、自らの意思で辞退するような政治家が本当に自民党に存在するとは考えない方が賢明であろう。自己の政治的野心に満ち溢れ、「自分がやればうまくいく」という根拠のない確信、繰り返される慈善錯誤にも反省の色が見えない。それが今日の自民党という集団の特性である。それでも、かつての日本の政治史において、自民党が野党の党首を首班とする連立政権を樹立し、政治の安定を図った例が存在することも事実である。玉木氏率いる国民民主党が次の参院院議員選挙で大幅に議席を伸ばすようなことがあれば、国民の期待感が高まり、自民党、公明党、国民民主党による連立政権、すなわち「自公国連立」が実現する可能性は十分にあり得る。
その玉木内閣が船出するにあたり、まず処遇が検討されるべき人物は榛葉賀津也幹事長であろう。永田町の関係者たちの間では、玉木氏と榛葉氏の関係性を、第二次安倍晋三内閣における安倍総理大臣と菅義偉官房長官のそれになぞらえる声が数多く聞かれる。表向きの顔として、安倍総理が各方面に配慮し、柔らかい姿勢を見せる一方で、その後ろで政権運営の要として厳しい判断や調整を一手に担っていたのが菅氏である。
玉木×榛葉の“陽&陰コンビ”が政権を動かす
玉木氏もまた、様々な場に積極的に顔を出し、愛想よく振る舞う一方で、政党運営の裏側では榛葉氏が冷静かつ厳格な判断を下し続けている。このような役割分担、すなわち玉木氏が「陽」の顔となり、榛葉氏が「陰」の実務を担うという関係性は、玉木総理誕生後も政権運営の安定のために継続していく必要がある。
国民民主党は国会において単独で過半数を確保するには全く足りない少数政党である。したがって、連立政権を組むことになれば、自民党や公明党からも多数の閣僚を受け入れる必要が生じる。その閣僚人事で、絶対に影響力を持たせてはならない人物が存在する。現在の自民党において幹事長を務める森山裕氏である。彼はこれまでの政治活動において、消費税減税に反対し、自由貿易の推進に反対し、長年の懸案である農協改革に反対し、経済成長に不可欠な規制緩和にも反対する姿勢を貫いてきた。
森山氏は経済改革の“ブレーキ役”になりかねない
さらに、政治資金問題が国民の厳しい批判を浴びる中で、衆議院選挙期間中に裏金問題に関与した議員に対して資金を配布していたことも報じられている。このように、ありとあらゆる点において、日本の経済や国民生活にとって有害な主張と行動を繰り返してきた政治家である。さらに厄介なのは、森山氏自身がそれらの自身の主張や行動こそが正しいことであると信じて疑わない点にある。
しかし、経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)をはじめとする世界中の公的な機関が発表する実証データは、減税、自由貿易、規制緩和が国の経済成長に肯定的な影響を与えていることを明確に示している。特に減税は、一時的な所得移転である給付金とは異なり、経済全体の活動を刺激し、中長期的な経済成長とも相関する制度であるという事実を、多くの国会議員はもっと真剣に受け止める必要がある。
玉木内閣が目指すべき主要政策は、まさに減税と自由貿易と規制緩和、そして徹底した歳出削減であるべきだ。そして、これらの改革の方向性から最も遠い位置にいる政治家こそが森山裕氏なのである。
農林水産大臣には、小泉進次郎氏に引き続きその任を務めてもらうのが良いであろう。
小泉進次郎農水大臣はあえて続投。「改革農政」の賭けに出る
彼は過去に自民党農林部会長を務めた経験があり、その中でJAやいわゆる農水族議員による既得権益死守のための抵抗に遭い、改革を頓挫させられた苦い経験を持っている。この経験は、日本の農業が抱える構造的な問題点を彼に深く認識させたはずである。農業分野においても、農家が自身の経営判断や生産・販売戦略においてより自由度を持てるようにすることが、農業全体の活性化と発展に繋がることは、国内外の成功事例からも明らかになっている。
過剰な補助金漬けは、農家の自立を妨げ、日本の農業、特に長い歴史を持つ稲作文化をむしろ弱体化させる要因となっている。最近報じられた政府による備蓄米の異例の放出は、センセーショナルに報じられたが、それが米価の安定や農家の経営改善にどれほどの経済効果をもたらすかは未知数である。少なくとも、これによりJAの経営戦略には混乱が生じているようである。玉木内閣においては、一時的に注目を集めるような センセーショナルな政策を行う必要はない。地道であっても、改革を通じて農家をJAからの過度な依存から解放し、自由な経営を可能とすることが重要なのである。
財務大臣は茂木氏…玉木内閣の不安要素?足立康史と山尾しおりの存在
財務大臣には、茂木敏充氏が最も適任であろう。彼は、既得権益を守る守旧派が99%を占めるとまで言われる自民党にあって、「増税をしない」ことを自身の自民党総裁選における公約として明確に主張した数少ない政治家である。最近のSNSでの動画配信においても、国家財政や日本経済について、説得力のある論を展開している。財務省は、本来ならば国の財政健全化のために、何よりも歳出削減に力を入れるべき組織である。しかし、現状は増税のことばかりを考える組織に変質してしまっている。この財務省の組織文化やあり方を根本から変革し、歳出削減こそが最優先の任務であることを徹底させるには、茂木氏以外にその任を果たせる人物は考えられない。
しかし、玉木内閣の組閣にあたり、やはり処遇に頭を悩ませることになるのは、特定の二人の存在であろう。かつて「汚物まみれの4人衆」と揶揄された人物たちとは別の意味で、党内で特別な配慮が必要となる足立康史氏と山尾しおり氏である。山尾氏は国民民主党の結党以前からの、いわゆる旧民進党・旧民主党系の支持層からの評判があまり芳しくないという問題を抱えている。
一定の制約をかけ、黙らせるという方策が必要
一方、足立氏は、国民民主党が近年獲得した新たな支持層から「増税志向」を指摘されているという難点がある。山尾氏は、夫婦別姓制度の推進や女系天皇容認といった、現在のリベラル勢力が強く主張する社会制度改革を推進する立場にある。足立氏は、かつて所属していた日本維新の会時代には資産課税(いわゆる貯金税)を推進する立場であり、現在でも応能負担原則の強化や高齢高所得者への負担増を主張している。本人は自身が増税派ではないと主張しているが、増税論者が好んで使う用語を現在でも繰り返し使用していることは事実である。また、歳出削減の有効な手段とされるシーリング(予算の上限設定)に対しても否定的な見解を示している。
この二人の政治家に対する閣僚や党の要職における処遇は非常に難しい問題を含んでいる。山尾氏は玉木氏や榛葉氏と、国民民主党結党以前からの長い期間にわたる政治的な関係性を有している。そのため、理性的な判断だけでなく、情の部分として、これまでの関係性から厚遇してあげたいという気持ちが働く可能性がある。また足立氏は、国民民主党に移籍したからといって、その政治スタイルや性格が穏やかになることは考えにくい。したがって、政権や党内で余計な波風を立てさせないためにも、何らかの役職ポストを与えることで一定の制約をかけ、黙らせるという方策が必要になるだろう。
足立は組織、山尾は広報へ…くせ者2人の“平和的処理案”
自民党ではこのような場合に、特定の政治家に対して実務が比較的少ない「組織運動本部長」や「広報本部長」といった役職を与えることが常套手段となっている。組織運動本部長が具体的にどのような職務を担うのかを正確に理解している人間は、永田町内部でも限られているであろう。党の組織活動全般を統括し、広く党内外から専門的な意見や要望を集約するという名目があるが、実際には特段重要で多忙な業務は少ない。しかし、れっきとした党の公式な役職であることには変わりない。この組織運動本部長のポストには、足立氏が適任であると考えられる。
広報本部長は、党の政策や活動を国民に向けてどのように広報していくかを統括する役職である。自身の政治的信条や意向に必ずしも沿わない政策であっても、党の方針として国民に分かりやすくPRしなくてはならない立場である。ただ、国民民主党も議員数が増えれば、党の広報活動にかけられる予算も増えることが予想される。したがって、現在よりも多様な媒体や手法を用いた広報活動が可能になるだろう。この広報本部長のポストは、山尾氏に任せるのが良いのではないか。