小池百合子都知事がトム・クルーズに見せた「乙女の顔」…16億円プロジェクションマッピング、真の成果をイベント手がけた都民ファ幹事長が語る

(撮影:原貴彦)

 映画「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」のイベントで、俳優のトム・クルーズが東京都庁を訪れた。都庁舎にプロジェクションマッピングで映画シーンなどが映されるなどし、話題を呼んだ。そのイベントを仕掛けた「都知事の右腕」都民ファーストの会・尾島紘平幹事長がイベントの裏側を語る。珍しくとぎまぎしていた小池百合子都知事が、来日したトム・クルーズにだけ見せた「乙女の顔」とは――。連続インタビュー全2回の第2回。

目次

16億円のプロジェクションマッピング、小池百合子がひらめいた瞬間

――都庁舎のプロジェクションマッピングには、どんな狙いがあるのですか。

(都民ファ-ストの会幹事長・尾島紘平氏、以下同)プロジェクションマッピングというと、単なる映像投影のイベントだと思われがちですが、実はそれだけではありません。東京都がこの事業に本格的に取り組み始めた背景には、いくつかの大きな狙いがあります。

 まず、コロナ禍以降、日本のソフトカルチャーを海外に発信していく必要性が高まっていました。インバウンド需要が一時的に落ち込む中で、東京の魅力を世界に伝える新しい手段が求められていたんです。さらに、ナイトタイムエコノミーの復活も大きな課題でした。夜の時間帯に人を呼び込み、経済を活性化させるためには、何か目玉となるコンテンツが必要だった。そうした中で、小池知事が都庁の帰り道に再開発で高い壁が立ち並び、殺風景になっている都心の景色を見て、「ここに光を当てて、東京の夜をもっと魅力的にできないか」とひらめいたのがきっかけです。

――いくら予算がかかっているのですか。

 東京都は都庁だけでなく、新宿や渋谷など複数の拠点でプロジェクションマッピングを展開し、総額16億5000万円の予算を投じています。

プロジェクションマッピングは、海外の主要都市ではすでに一般的な観光資源になっています。夜になると歴史的建造物やランドマークが光と映像で彩られ、観光客が集まる。東京も世界都市として、そうしたトレンドに乗り遅れるわけにはいきませんでした。

 この事業の本質は、単なる「見せ物」ではなく、東京のブランド力を高め、経済波及効果を生み出すことにあります。例えば、新宿のプロジェクションマッピングはガイドブックにも掲載され、国内外から多くの人が訪れています。イベントを見た後に新宿の思い出横丁やゴールデン街で飲食を楽しんだり、近隣のホテルに宿泊したりする人も多い。こうした人の流れが、地域経済の活性化につながっているんです。

さすがに税金使いすぎでは…一方で都庁広場のビアガーデン構想も

ーーとはいえ、さすがに税金使いすぎではないでしょうか。

 批判はたしかにあります。「税金の無駄遣いだ」とか「映像を投影するだけでそんなにお金がかかるのか」といった声も聞こえてきます。しかし、私は単なる映像投影ではなく、しっかりと都民にとっての”利益”を生み出していく仕組みだと考えています。観光客の消費や都内産業の活性化、さらには東京の国際的なプレゼンス向上まで、さまざまな波及効果がある。こうした複合的な狙いが、東京都のプロジェクションマッピング事業には込められているんです。

 また、私個人としては「ビアガーデン」構想も提案してきました。都民広場に東京都の島や多摩の名産品のキッチンカーや地ビール、地酒を出すビアガーデンを開けば、都内産業の活性化にもつながる。GWに実施されましたが、今年の夏も開かれます。プロジェクションマッピングをきっかけに、東京の食や文化を体験してもらう場を作ることで、より多面的な経済効果が期待できると考えています。

トム・クルーズを呼んだイベントの舞台裏と世界発信

――映画「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」公開時に俳優トム・クルーズさんを招いたイベントが話題になりました。あのイベントって本当に必要だったのですか。

 あのイベントは、まさに東京都のプロジェクションマッピング事業の象徴的な瞬間だったと思います。世界的なスターであるトム・クルーズさんが来日し、都庁のプロジェクションマッピングを背景に映画のプロモーションを行う――これほどインパクトのある国際発信はなかなかありません。

 実は、トム・クルーズさん側と事前にかなり細かい調整を重ねてきました。東京が今お金を出してやっているプロジェクションマッピングを、BBCなど全世界のメディアに乗せることができる。これ、もし東京都が単独で世界に向けてプロモーションを打とうとしたら、何億円もかかる規模の話です。でも、映画のプロモーションと連動させることで、ほぼ無料で世界中に東京の魅力を発信できた。これは本当に大きな成果だったと思います。

 都庁のプロジェクションマッピングが、世界的な映画の舞台装置として使われることで、東京のブランドイメージが一気に高まった。インバウンド需要の回復や観光都市としての東京の再評価にもつながったと感じています。

トム・クルーズに会って乙女の顔になった小池都知事

――小池百合子都知事もとても楽しそうでしたね。

 小池知事も大喜びでした。終わったあとに控室で「グッジョブ」と肩をポンと叩かれました。久しぶりに褒められました。もちろん、自分がトム・クルーズという有名人に会えたこと自体を喜んだのではなく、「これ東京にとって大きなメリットがあるよ」ということに喜んでいたはずです。

 ただ、小池都知事はトム・クルーズに会っているときは完全に「乙女の顔」をしていました。そもそも本人も会えることを楽しみにしていたようで、当日何を着るのかすごく悩んでいました。トム・クルーズはスーツで来るはずだから、「自分も素敵なドレスを着なきゃ」と。

 当日は雨の予報で、知事は引きずらないよう、裾の短いドレスにしようと思っていました。そんな中で「これはどうかしら?」と私に見せたのは、東京パラリンピックの閉会式で着たイッセイ・ミヤケのドレスでした。日本のクリエイティブ産業をアピールする意味でも、最高の衣装だと思い「それで行きましょう!」と即答しました。

悩みに悩んで選んだイッセイミヤケのドレス(写真=尾島氏提供)

「ひねり」と「一石二鳥三鳥」の発想

ーー小池都知事の政治手法と特徴はなんでしょうか。

 小池知事の政策立案スタイルは、非常に特徴的だと思います。単なる「ばらまき」や従来型の施策にはあまり興味を示さず、必ず何か「ひねり」を加えたがるんです。たとえば、プロジェクションマッピングも、ただの観光イベントで終わらせるのではなく、経済波及効果や国際発信、都内産業の活性化など、複数の目的を同時に達成しようとする。「一石二鳥三鳥」を狙う発想が、まさに小池流だと感じます。

 意思決定のプロセスも独特です。都議会各会派からの要望を受けて立て付けを整えるのが毎回の議例的な流れですが、最終的なアイデアや方向性は知事自身が強いリーダーシップで決めていく。たとえば、プロジェクションマッピングのような新規事業も、知事が自分で現場を見て「これだ」と思ったら、すぐに動き出す。スピード感と柔軟性がある一方で、周囲にはサプライズになることも多いです。

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