消費減税を頑なに拒絶する自民党に未来はあるのか…自民若手が本音をぶっちゃけ?「経済を回していくという発想が必要」

国民を苦しめる物価高に加え、実質賃金の停滞、高止まりする税・社会保険料の国民負担率、さらには台湾有事のリスクなど、石破茂政権には取り組むべき課題が山積している。こうした中、物価高や関税措置を受けた減税措置を求める提言を取りまとめて注目されたのが自民党青年局長代理の平沼正二郎氏だ。
保守派重鎮である平沼赳夫氏を父に持つ「政界のサラブレッド」に、消費減税や米価高騰、台湾有事にいたるまで、民間出身者だからこそ言える本音を尋ねた。短期連載全3回の第2回。(取材日:5月16日)
目次
消費税減税はありなのか 自民党若手の「本音」とは
――平沼さんは先日、食料品などにかかる消費税率8%をゼロにすることなどを求める政策提言をまとめられました。これはどのような意図があるのでしょうか。
これは青年局というよりは、議員連盟のいろんな集まりの動きの中で出てきた提言です。今、物価高によって国民の皆さんの生活が非常に困窮している状況があります。こういうときこそ、税のあり方を柔軟に見直すべきだと考えています。たとえば一時的にでも税率を下げて、消費を喚起し、経済を回していくという発想が必要です。
――恒久的というわけではなく、あくまで時限的な措置ということでしょうか。
もともと税というものは、本来であればインフレを抑制する機能を持っています。景気が過熱してインフレが進みすぎたときに、税率を上げることで経済を冷ます、という役割です。
しかし、今のインフレは、必ずしも経済が良くて起きているわけではありません。原材料価格の高騰や円安による輸入物価の上昇といった、いわゆるコストプッシュ型のインフレです。こういう状況においては、政府がある程度手助けをしてあげないと、消費がうまく回らないのではないか、と私は考えています。
減税か給付金か…自民党の「次の一手」を占う
――ただ自民党全体としては、消費税の減税に否定的なスタンスの議員の方も多いかと思います。これについてはどのようにお考えですか?
自民党の良いところは、多様な意見が存在し、それを議論できるところだと思っています。さまざまな議員がそれぞれの立場から政策提言を行い、党内で徹底的に議論を戦わせる。そして最終的に「これがベストだ」ということで責任政党としての政策が出てくるわけで、これは非常に正しいことだと思います。
――本当に困っている人にとっては、減税よりも直接的な給付金の方がありがたい、という声も国民の中にはあるかと思いますが、いかがでしょうか。
給付だと、毎回「どこまで対象にするのか」という議論もあって、不公平感のようなものが出てしまいがちです。
また前回の定額給付金のときもそうでしたが、給付金は一度きりなので、将来への不安から消費に回らず、貯蓄に回ってしまう傾向があります。一方で減税のように継続的に効果が続くものであれば、人々のマインドを変える効果が期待できますから、消費の喚起につながりやすいのではないでしょうか。
コメ価格高騰の裏側「そもそも消費量は落ちてる」
――食料品の中でも、お米の価格が高騰していますよね。今年もあまり多くとれないのではないかという話もあるようです。
これはちょっといろんな議論もあって、農水省からすると、とれていると。作況指数も悪くないということになっているんですね。一方で意見としてあるのが、もともとの生産量が減ってきているのでないか、と。それはなぜかというと、お米の消費量が年々落ちているという問題があるからなんですね。お米の消費量というのがだいぶ落ちていて、そうした中でどれぐらいまで作るんだみたいな話もあるんです。
今は食料安全保障が重要になってきていますので、いっぱい作ったほうがいいのかなとは思うんですけれど、いきなりバーって作れと言っても、なかなか急に作れるわけではないので。
安価な海外米の輸入は悪手なのか「カリフォルニア米」どう見る
――最近では、大手スーパーが「カリフォルニア米」を販売して話題になりました。いっそのこと、高い関税を撤廃して、安価な海外米をどんどん輸入すればいい、という意見もありますが、その点についてはいかがですか。
消費者の方々にとっては、安くお米が手に入るというのはひとつのメリットかもしれません。しかし、食料安全保障の観点から考えればこれ以上生産量を落とすわけにはいきませんし、お米を作る方がこれ以上減ってしまうと困った状況になります。
また、日本のコメの関税を下げたところで、アメリカがほかの分野でかけようとしている高い関税を下げてくれるのかというと、効果は限定的なのではないかという議論もあります。
――「コメ」の問題で、国民の怒りが煮えたぎっているような印象も受けます。
やはり、お米の話というのは昔から「キャッチー」だという側面もあります。何と言っても主食ですし、「お米はいつでも安く手に入って当然」という意識が、我々の中には根付いています。ですから、その当たり前が少しでも揺らいでしまうと、国民の皆さんの不安や不満は、他の食料品とは比べ物にならないくらい大きくなる。それが、今の状況なのだと思います。
実質賃金停滞に打つ手なしの自民…なぜ政策出せない
――経済の状況に目を向けてみると、実質賃金がなかなか上がらない状態が続いていますが、どう変えていくべきでしょうか?
特に地方の中小企業とかですと、これはすごく難しい部分もあって、「これをやれば賃上げできる」といったような絶対的な正解みたいなものはなかなかないというのは感じています。
今は地方の中小企業などの場合、仕事はあるけれど人手がないから稼ぎが出せないとか、そういうケースが結構いっぱいあるんです。なので働き方改革みたいな部分も少し関わってきたりもするんですけれども、やっぱりある程度労働環境の整備というところも含めてやっていかなければいけないのかな、と。
加えてDX化を進めるなどして、生産性をしっかり上げていけるような仕組み作りを促進していくことも求められるでしょう。その上で、後押しにつながる導入費用みたいなものは我々が補助金で出しますよとか、そういう取り組みを、複合的にやっていく必要があるのかなと思っています。