台湾有事のリスクに「平和ボケ」の日本はノープラン?自民党保守派のサラブレッドが警鐘を鳴らすワケ

国民を苦しめる物価高に加え、実質賃金の停滞、高止まりする税・社会保険料の国民負担率、さらには台湾有事のリスクなど、石破茂政権には取り組むべき課題が山積している。こうした中、物価高や関税措置を受けた減税措置を求める提言を取りまとめて注目されたのが自民党青年局長代理の平沼正二郎氏だ。
保守派重鎮である平沼赳夫氏を父に持つ「政界のサラブレッド」に、消費減税や米価高騰、台湾有事にいたるまで、民間出身者だからこそ言える本音を尋ねた。短期連載全3回の第3回。(取材日:5月16日)
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「新しい資本主義」って結局何だったんですか?
――岸田文雄政権では「新しい資本主義」という言葉が出てきましたが、中身がなかなか見えてこない、わかりづらいという意見もありました。今後この「新しい資本主義」というものはどうなっていくのでしょうか。
やっぱり一番は、経済が好循環しないといけないんだというのは、ずっと岸田さんもおっしゃっています。ただ以前アベノミクスがあって、いわゆる金融緩和政策が進められましたが、そこで踏み込めなかった部分というのがあったわけです。どうしても増税があったり、消費税のことがあったりして、少し経済的に腰折れになっちゃったということですね。
そこでデフレがまだずっと続いてるという中で、かねてから議連などで、いわゆる積極財政をやったほうがいいんじゃないかという声があります。マクロ経済的に見たときに、やっぱり今経済成長が実現していない状況においては、やっぱり呼び水として政府がある程度お金をしっかり出して、そこからいろんな企業に乗っかってもらう、と。そうすることで企業にしっかり投資していただいて、また新たな稼ぎを得ていただく。そしてそれを給料に回していただく、というようなことですね。
こういう好循環を生むっていうところが、まだ私はちょっと弱いと思ってるんですよね。そこを回していくために、ある程度の税政策をやっていくというのは、今は個人的にはありなのではないかなと思っています。
台湾が日本に一番期待しているものとは「中国が…」
――今、日本の安全保障環境は非常に厳しさを増しています。特に「台湾有事」の可能性が現実味を帯びていますが、平沼さんは先日、実際に台湾を訪問されました。
私が所属する青年局は、実は自民党の中で唯一、台湾との正式なパイプを持つ組織なんです。ご存知の通り、日本は台湾を正式な国家として承認していないため、政府間の公式な外交ルートはありません。
しかしこの青年局の交流は、かつて竹下登・元総理大臣が青年局長だった時代に作られた歴史あるもので、台湾側もこれを非常に重視してくれています。そのため、今回私たちが訪問した際も、頼清徳・総統や副総統をはじめ、立法院長や各大臣など、台湾の政権中枢を担う方々と直接会談する機会をいただきました。
――台湾側は、日本に何を期待しているのでしょうか。
彼らは有事というリスクもありますから、本当にそれが迫ったときに、もちろん彼ら自身で守る力というのもつけていますけれども、やっぱり一国でどこまでその脅威を排除していけるのか、という問題があります。そうなると、そもそも有事を起こさせない、抑止する、というのが重要になってくるわけです。
だから台湾だけではなくて、たとえば日本、そしてその同盟国であるアメリカ、一方で韓国みたいなところと、しっかり彼らが連携を取っているんだよという状況を作ることで、中国が台湾に攻め込む確率を非常に難しいものにしていくというところを彼らもやっていかないといけません。そういった意味では、そこをすごく彼らは重要視しているんだと思います。
「台湾有事」発生しても日本は何もできない?
――仮に台湾有事が起きてしまった場合、日本はどうするのでしょうか?
これは本当に喫緊の課題だと私は思っています。たとえばアメリカであれば、台湾関係法という法律があって、今でも武器供与ができたりとか、ある程度そこの関与をしっかりと法律上明記してやっています。ところが日本にはそういうものがありません。そのため現状だと、実際の有事が起きた際に日本がどれぐらい台湾に対してコミットできるかっていうところは、すごく難しいと思います。
ところが台湾の世論調査などを見てみると、いざとなったら日本が助けてくれる、みたいな意識がとても強いのが伺えます。だからそこの部分のギャップというのはものすごくあるんですね。なので我々としても、どこまで明文化するかは別としても、やっぱり台湾に何かあったときに日本はコミットするんだよっていう姿勢を出せる法律を作っておかないといけないと、個人的にはすごく感じています。それはやっぱり抑止力にもつながると思うんです。
政治家が「小物」だけになった最大の理由はこれだ
――平沼さんはホームページで「選挙制度改革」も訴えていらっしゃいます。小選挙区と比例代表の並立を見直すべきなのではないか、と。これはなぜでしょうか?
これは、もともと私が最初に無所属で出たというのもちょっとあって(笑)。ただ政治の世界に入ってもうひとつ思ったのは、昔は中選挙区でしたよね。それで、たとえば選挙のときに、ある県で定数が5だとすると、自民党公認で3人くらい出て、勝った方が当選してくるという形でした。私はこれが、結構政治のダイナミズムにつながっていたと思うんです。
なぜかというと、こういう中選挙区の制度だと、たとえば自民党の中にもA、B、Cという候補がいて、Aは「俺は今の経済対策はこうだと思う」、Bは「いや、俺はこう思う」、さらにCは「違う、こうなんだ」ということになります。そうなったときに国民の皆さんが判断して、支持を受けた人たちが最後に当選して集まってきて、党に対していろんな意見を交わしてしっかりと政策を作っていくということができたんです。
ところが今はどうなっているかというと、たとえば「党が決めました」みたいになると、一切もう、ものが言えなくなるというか。だから今の制度になってから、だれもが認める大物政治家みたいな人はやっぱり出てきにくくなっちゃったんじゃないかなとも思います。
選挙情勢に思わず弱音 自民が目玉政策出せないのは「与党だから」?
――参院選が迫ってきていますが、このままだと自民党は大敗するんじゃないかと言われている状況です。
今ちょうど公約の策定などをやっていますけれども、やっぱりどうしても自民党ってオールレンジ政策になりがちなんです。責任政党だという自負があるので、全部やらなきゃいけない、という。ですがそれでも「これだ」というような、いわゆる目玉政策みたいなものは、キャッチーなものを含めて何個か打ち出していかないと、結構大変だろうなというのはちょっと感じています。
――仮に衆参ダブル選挙になったときは、戦えますか?
戦うしかないですからね、それは。