“死んでも消費減税しない”石破自民に民意示したが…辞めへんで!「減税すると道路に穴」主張のプロパガンダはもう意味がない

参院選で消費減税を頑なに否定した石破・自民が大敗した。さて、税金は人々の生活を支える重要な役割を果たす一方で、家庭や企業の負担にも直結している。「小さな政府と大きな政府の議論が繰り返される中、減税が経済に与える影響について改めて考える必要がある」。そう語るのは経済誌プレジデント元編集長で作家の小倉健一氏だ。減税の必要性と効果を具体的なデータを基に解説し、日本の経済にとっての可能性を探るーー。
※本稿は小倉健一、土井健太郎、キヌヨ共著『図解 「減税のきほん」新しい日本のスタンダード』(ブックフォース)からの抜粋(一部編集)です。
第1回:山本太郎のお辞儀パフォーマンスに「反吐が出る」とひどい批判、農家訪問の報告投稿が物議…経済誌元編集長「農水大臣よりマシ」高まる減税への期待
第3回:何でも無償化は地獄が待っている…「医療費無償化で起きた子どもへの投薬過剰問題」それでも政府は減税を否定する
目次
小さな政府と大きな政府、どちらが正しいのか
税金には、人々の生活を支える重要な役割がある。学校や病院、警察などのサービスは税金で成り立っている。その一方で、税金が高くなると、家庭のお金が少なくなり、生活が苦しくなってしまう。
世界では、税金をどうするかについて大きな考え方が二つある。一つは政府の取り分を減らす「小さな政府」という考え方だ。この考え方では、政府の役割を少なくして、税金を低く抑えることで、人々が自分たちのお金を自由に使えるようにする。「政府」よりも「市場経済」に信頼を置く考えだ。
もう一つは「大きな政府」という考え方だ。この考え方では、政府が多くのサービスを提供するために税金を増やし、みんなが平等に助けを受けられるようにする。「市場」は「市場の失敗」に満ちており、政府による積極的な介入こそが大事だと言う考えだ。
歴史を振り返ると、ある時期には小さな政府が流行し、別の時期には大きな政府が支持されてきた。たとえば、アメリカでは、1980年代に税金を大幅に減らす政策が行われた。一方、ヨーロッパでは、福祉を充実させるために税金を増やす政策が長く続いた。
どの考え方が良いかを決めるためには、実際のデータや歴史的な出来事を詳しく調べる必要がある。経済を巡る議論は、前提を立てながら話をするので、どんな非現実的な理論も正しいように聞こえてしまう部分がある。「これは経済の教科書の最初のページに載っていることですよ」という主張も、実際の経済と合っているかは別の問題なのだ。
税金を減らした国が本当に経済的に良くなったかどうかを数字で確認する。逆に、税金を増やした国でどれだけ人々が助けられたかも調べる。統計や事例をしっかり分析することで、どの方法がうまくいくかを知ることができる。
大きな政府主義の本質と小さな政府の意味
「教祖様がおっしゃっていた」「(自分の支持する)経済学の理論ではこうなっている」と自分で進歩を止めてしまう人には、現在の「減税」運動には向いていないだろう。あくまで実証的な話をもとに議論をスタートさせるべきなのである。今、国民が「減税」を要求する理由は、政府の規模があまりにも大きくなりすぎているという事実に基づいている。
「社会主義(大きな政府)とは宗教を失ったときに人々が得られる宗教です」(リチャード・ジョン・ノイハウス)
政治家は「貧しい人を政策で救いたい」「貪欲な金持ちを法令で懲らしめたい」「税金で誰もが幸せになる社会を作りたい」と主張する。このように政府を使って自分の理想を他人に強要してしまうのが大きな政府主義の本質だ。
たしかに、セーフティネットや再挑戦できる社会は必要だ。しかし、弱者に優しい社会は、政府に常に頼らないとできないものなのだろうか。大きな政府を支持する方は知らず知らず自分の理想を他人に押し付けてないだろうか。
小さな政府を志向することは、特定の意見に偏っているように見えるかもしれないが、実際には、行き過ぎた政府の肥大化を抑え、適正な規模に戻そうとする取り組みである。減税の主張を過激だと捉える人もいるが、それはむしろ現状を真っ当な状態に戻すための穏健な提案なのである。
減税すると道路に穴ができるのか
減税が進むと、公共サービスが崩壊し、社会が混乱するといった批判もよく耳にする。しかし、これは必ずしも正確ではない。たとえば、ドイツの地方州では、財政的な制約(国債も発行できず、増税もできない)のもと減税が実施された結果、歳出は削減されたが、管理予算が大幅に削られる一方で、治安や教育、インフラといった重要なサービスは維持された。この事例は、減税が社会の機能を損なうわけではないことを示している。
一方で、増税すれば人々の手取りがほぼゼロになるという極論を持ち出して議論を混乱させることも無意味である。ファクトにもとづいた冷静な議論こそが求められている。
何か社会問題が発生すると、多くの国で政府が問題解決に向けた動きが強まるものだ。お金の動きを調整したり、特定の産業を助けたり、さまざまな規制を作ったりして社会を管理しようとする政策が広がる。しかし、政府がやりすぎると、経済がうまく動かなくなったり、腐敗が広がってしまう。しかし、当たり前の事実に立ち返るべきなのは、市場や社会に問題が発生したとしても、そこに政府が関わるのが正しいとは限らないことだ。
莫大な税金を投入したことを実績として誇示する岸田元総理
たとえば、国土交通省がタクシー業界を守るためにライドシェアを抑える動きや、農水省がコメ農家を守るために高い関税を支持する例がこれに当たる。こうした規制があると、本来ほかに使われるべき資源が無駄に使われてしまう。
3.6兆円が投入された「異次元の少子化対策」は、政府が「成果を生むこと」ではなく「対策を立てること」だけに熱心になり、税金をドブに捨てた好例だろう。少子化の原因は、未婚率の上昇と晩婚化で9割が説明できるというのが統計上得られるファクトだ。ゆえに、子育て支援に偏った「少子化対策」は少子化に何の意味もなさないことは実施前からわかっていたことだ。
ムダな浪費によって少子化が何一つ改善しない中で、財源として「子育て支援金」なる現役世代への増税を実施することとなった。恐ろしいことに、岸田首相は、退任の記者会見で「異次元の少子化対策」に莫大な税金を投入したことを実績として誇示していた……。政府のやることが無批判であると、こうした税金の浪費は繰り返されていくことになる。
減税の効果は、日本の経済政策の歴史からも明らか
『21世紀の財政政策』(オリヴィエ・ブランシャール著)は、現代の財政政策を考える上で注目を集めている一冊である。著者は世界的に著名なマクロ経済学者であり、同書ではオーソドックスな経済学を基に、持続可能な財政の条件についてバランスのよい議論がされている。その中で減税の効果についても具体的なデータを用いて論じている。
ブランシャールは、財政政策において支出を増やすよりも減税の方が効率的であると指摘した。この結論は、多くの国で実際に行われた政策の効果を詳細に分析した結果である。
減税の効果は、日本の経済政策の歴史からも明らかである。1990年代以降、日本ではバブル崩壊後の低迷を乗り越えるためにさまざまな政策が試みられた。その中で減税は、経済成長の回復に貢献した重要な手段であった。税金が減ることで、家庭や企業の経済的な余裕が生まれ、結果として消費や投資が拡大した。ブランシャールの分析は、減税の重要性とその経済への影響を多角的に示しており、日本の政策立案にとっても貴重な指針となるものだ。税金を減らすことで、家庭や企業の手元に残るお金が増え、消費や投資が活発化する。
誤った経済理論を打ち砕く
これにより、経済全体の活性化が期待できる。何より、政府の取り分が減ることで、ムダ遣いができる余地が減る。
本書によって、日本の霞が関や永田町、そしてSNS上で流布する誤った経済理論を打ち砕くことを目的として、「減税のきほん」となる実証データをなるべく時事に即した形で紹介したいと考えている。