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リベラルエリートの理想が完成させた「知能カースト社会」の絶望 何が日本社会の残酷な格差を生み出したのか

(c) AdobeStock

 日本社会の格差が拡大し続ける中、多くの人が漠然とした経済的不安を抱えている。「ごく普通の一般人」が厳しい現代社会で勝ち抜き、資産を増やしていくにはどうすればいいのか。

 作家の橘玲氏は、リベラルが追求した“公正な能力主義”こそが皮肉にも深刻な分断と新たなカーストを生んだと指摘しつつ、普通の人間が圧倒的な経済的自由を達成するための驚くほどシンプルで堅実な生存戦略を提示する。持てるものと持たざるものの格差が開き続ける根本的な原因から、凡人でも資産1億円を目指せる最強の投資戦略まで、同氏に詳しく話を伺った。全3回の第1回。

 みんかぶプレミアム特集「格差社会サバイバル」第3回。

目次

リベラルエリートが語らない“格差の正体” 何が日本社会の残酷な分断を生んだのか

「持てる者」と「持たざる者」の格差が、日本でも深刻な問題として語られるようになって久しい。多くの人が漠然とした不安を抱え、先行きの見えない社会に苛立ちを感じている。なぜ、これほどまでに格差は拡大してしまったのか。この問いに答えることは、これからの時代を生き抜くための生存戦略を立てる上で、避けては通れない第一歩となるだろう。

 本稿では、この格差社会が生まれたメカニズムを、いくつかの「不都合な事実」とともに解き明かしていきたい。そして、その上で、誰もが実践可能な、きわめて現実的な資産形成と人生の戦略を提示したいと思う。

同じ「年収500万」でも圧倒的な“資産格差”が生じる恐るべき理由

 格差社会はなぜ生まれたのか。この問いに対する私の答えは、きわめてシンプルだ。そしてそれは、多くの人にとって目をそむけたい「不都合な事実」かもしれない。

 格差が拡大した主要な理由は何かと問われれば、私は「第二次世界大戦後、豊かで平和な社会が80年続いたからだ」と答える。

 一見、逆説的に聞こえるかもしれない。しかし、考えてみてほしい。たとえば、誰もが同じ資産をもち、同じ収入(たとえば年収500万円)を得る完全に平等な社会を想定してみよう。その社会にも、アリとキリギリスのような人間がいるはずだ。「宵越しの金は持たない」とばかりに稼いだお金をすべて使い切ってしまう人もいれば、コツコツと節約し、毎月5万円、10万円と貯蓄に励む人もいる。

 この月々のわずかな差は、時間が経つにつれて累積していく。さらに、銀行に預けたお金には利息がつくので、複利で雪だるま式に増えていく。このプロセスが何十年と続き、その資産が相続されれば、なにひとつ不正なことが起きていなくても、孫の代には人生のスタートラインで大きな差がつくだろう。80年はおおよそ3世代に相当するから、この単純な累積効果だけで、現代の格差のかなりの部分が説明できてしまうのだ。

“豊かで平和”になるほど格差が広がる絶望的なパラドックス

 なぜ、わずかな差が複利で累積していくのか。それは、私たちが「平和な世界」に住んでいるからにほかならない。歴史を振り返れば、格差をリセットしてきたのは、常に戦争、内乱、革命、疫病といった「とんでもないひどいこと」だった。スタンフォード大学の歴史学者ウォルター・シャイデルが大著『暴力と不平等の人類史 戦争・革命・崩壊・疫病』(鬼澤忍/塩原通緒訳/東洋経済新報社)で示したように、ギリシア・ローマの時代から、富の破壊を伴う大惨事だけが抜本的な格差の縮小をもたらしてきた。

 逆に言えば、格差をなくしたいのなら、第3次世界大戦が起きて、ほとんどの人類が死に絶え、残された者もすべてを失えばいいことになる。そうすれば貧富の差はリセットされ、平等な社会が訪れるだろう。つまり、平和な時代が続くこと自体が、格差を必然的に拡大させる構造的な要因なのだ。受け入れがたいかもしれないが、人類の歴史を振り返れば、これが揺るぎない事実である。

現代は「頭のいい人」がすべてを独占する社会なのか

 そして、もうひとつのさらに不都合な事実がある。それは、私たちが生きる現代が「知識社会」だということだ。

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この記事の著者
橘玲

2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。橘玲公式サイト http://www.tachibana-akira.com/

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