もう限界だ…辞任NOの石破首相に自民も非自民もがNOだ!「私欲の言い訳でしかない」「みっともない、恥を知りなさい」党内から公然批判

参議院選挙で自民党と公明党は大惨敗した。減税を求める国民に対し、頑な否定し「2万円給付」という公約を掲げた石破自民だったが、選挙前恒例のバラマキであるということを国民に見透かされた。「国民を馬鹿にするな」という怒りの声が選挙結果からは聞こえてくる。昨年衆議院選挙、6月の都議会議員選挙と三敗目を喫した石破政権だ。当然、石破茂総理は辞任すると思われた。が、蓋をあけてみるとこの期に及んで続投宣言が飛び出してしまった。これには身内である自民党からも公然と批判の声があがる。もはや自民支持者も非自民支持者からもNOがつきつけられている状況だ。ネットなどからは「もう限界だ」「いい加減にしろ」という声があふれる。一体なぜそれでも石破自民は続けるのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
目次
「今最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」
7月20日に投開票された参議院選挙の結果、自民党と公明党は目標としていた与党での過半数議席を維持できなかった。与党は衆議院に続き参議院でも少数与党に転落した。
この選挙結果は、2024年10月の衆議院選挙、6月の東京都議会議員選挙での大敗に続く、石破茂政権にとって3度目の厳しい審判であった。国民は主要選挙で3回連続、石破首相にノーを突き付けた形だ。石破首相は選挙翌日の21日、自民党総裁として記者会見を開き、続投の意向を表明した。
石破首相は会見で、「日本が現在、アメリカの関税措置、物価高、明日起こるかもしれない首都直下型地震や南海トラフ地震といった自然災害、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境という国難とも言うべき状況に直面している」と指摘。このような厳しい状況の中、「今最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」と説明したのだ。石破首相はテレビ番組においても、「自民党が選挙後も衆参両院で比較第一党の議席を得る見通し」であることを踏まえ、「比較第一党の議席を頂戴することの重みをよく自覚しなければいけない」と述べた。続投の意思と受け止めてよいかとの問いに、「結構だ」と明言している。日米関税交渉も続投の理由の一つに挙げ、トランプ米大統領と協議を重ねてきた事実に言及し、「国益の実現のために全身全霊を果たすのは当然のことだ」と強調している。
石破首相の続投表明に対し、政権幹部は体制を擁護する姿勢を見せている。岩屋外務大臣は閣議後の記者会見で、大変厳しい選挙結果を受けて党内にさまざまな意見があることは当然だと述べた。岩屋大臣は、「言ってみれば進むも地獄、退くも地獄だが、国家国民のために前に進んでいかなければならない」と語った。石破政権の延命という次元の問題ではなく、難局にある日本の政治をどう再構築するかに直面しているとし、野党とも幅広い合意を形成していく作業が求められるとの認識を示した。森山裕幹事長も、「政治空白をつくってはいけない」と強調した。
自民党内部から自民を求める声
一方で、自民党内からは石破首相の責任を問う声が公然と噴出している。青山繁晴参議院議員は、レームダックの政権にアメリカとの関税交渉はできないとして、石破首相の辞任を求めた。自民党の高知県連は、選挙で示された民意に沿う形で、党本部に総裁の早期退陣を申し入れることを決めた。
河野太郎選対委員長代行は、自身の委員長代行の辞表を木原誠二選対委員長に預けたと報告した。河野氏は、「関税交渉の最中に総理がお辞めにならないのは理由があるにせよ、選挙の責任者である幹事長がまだ辞表を出していないのはおかしい」と、責任を取らない森山幹事長の姿勢を厳しく批判した。山田宏参議院議員は、今回選挙で示された国民の意思は「諸課題の解決は喫緊の仕事だが、それをやるのはあなたではないという明確な意思だ」と断じている。石破首相が列挙する続投理由は「私欲の言い訳でしかないと国民は見透かしている」と述べ、「みっともない、恥を知りなさい」と激しい言葉で批判した。
石破首相の現在の姿勢は、過去の自身の言動とも矛盾する。2007年の参議院選挙で自民党が大敗した際、石破氏は当時の安倍晋三首相に辞任を迫った一人であった。石破氏は当時、「総理がお辞めになるとご自身でおっしゃるしかない」と述べ、安倍首相に決断を促していた。安倍元首相は「政治の空白は許されない」として続投を表明したが、今回はからずも石破首相が安倍元首相と同じ立場に立ち、同様の論理で続投を表明する事態となった。
立民野田代表も不信任案提出可能性を示唆
この選挙3連敗という選挙結果は、石破政権が国民の支持を得られなかった現実を突きつけている。発足から約10カ月、政府与党は政策実行力を示せなかった。派閥の裏金問題への対応は中途半端に終わり、実態解明に切り込まず、国民の大きな失望を招いた。トランプ米大統領が発表した相互関税の引き上げ問題も、赤沢亮正経済再生相が交渉を重ねても状況は打開できていない。
しがらみのなさと国民的人気を期待され総裁に就任したにもかかわらず、人気は瞬く間にしぼみ、選挙戦では候補者から応援演説を断られる場面さえあった。衆参両院で少数与党となったことで、政権運営は一層困難になる。立憲民主党の野田佳彦代表は石破政権を機能不全と酷評し、秋の国会での内閣不信任決議案提出の可能性を示唆した。
自公連立政権の枠組み自体が限界
あらゆる政策で野党の協力が不可欠となる状況で、弱体化した与党に積極的に協力する野党は見当たらない。自民党と公明党による連立政権の枠組み自体が限界を迎えたとの声も、現職閣僚から漏れている。
これほど明確な不信任を突きつけられ、党内からも辞任要求が噴出する中で、石破首相が職に留まり続ける理由は何か。通常の政治力学で考えれば、9月頃の退陣を表明し、党総裁選挙を実施して後進に道を譲るのが穏当な判断であろう。その選択をしない背景には、一般的な政治家の損得勘定とは異なる、石破首相個人の強い信念が存在すると考えられる。
作家の佐藤優氏は、石破首相の行動原理をキリスト教信仰の観点から分析している。
佐藤氏は2024年10月18日のダイヤモンドオンラインへの寄稿文で、石破首相の信仰心に触れ、以下のように記述した。
<石破さんはキリスト教系のメディアにしばしば登場し、自らの信仰について語っています。18年9月5日の「Christian Press」紙では、次のように述べています。
石破首相は神の声を聞いたのか
《――クリスチャン議員として、どのような思いで政治に向き合っておられますか。
私は、神様の前に自分の至らなさ、誤っているところをお詫び申し上げるようにしています。そして、「過ちを正してください」、「ご用のために用いてください」という思いでお祈りしています》
10月6日、石破さんは裏金議員の一部を公認しない方針を表明しました。世論の反発を受けて軌道修正をしたという報道もありますが、石破さん自身が初志を貫徹するという腹をくくったのだと思います。党内の反発を押し切って、よく決断したと思います。有権者にも納得のいく判断です。
「茂、裏金議員に対しては厳しく対処するのが、君の良心に忠実な生き方だ。初志を貫けば、国民も君の政治改革に対する決意が本物だと理解してくれる」という神の声が聞こえたのだと思います>
佐藤氏のこの分析が正しければ、石破首相は自らの政治的役割を一種の天命や天啓として受け止めている可能性がある。首相就任自体を、自民党や日本が大きく行き詰まった時にこそ自分が担うべき責務だと考えていた節が見られる。
国難を乗り越えるという使命感が、周囲のあらゆる辞任要求を退ける強固な意志の源泉となっているのかもしれない。国民や党からの審判よりも、自らが信じる国家への責任、あるいはそれを超えた宗教的な義務感を優先している姿が浮かび上がる。
過去の菅直人元首相の政権末期を想起させる
あるいは、戦後談話の発表のような、歴史に刻む特定の政治的目標を達成するまで退くつもりはないという、個人的なこだわりが存在する可能性もある。一方で、石破首相の頑なな居直りは、過去の菅直人元首相の政権末期を想起させるとの指摘もある。
追い詰められた指導者が、特定の政策実現を辞任の条件とするような、政治的な駆け引き、最後のゴネを始めるのではないかという懸念だ。国難を盾に続投を正当化する行為は、権力への執着と見なされ、政治不信を一層深刻化させる危険をはらむ。石破首相が辞任しない根源的な理由は、選挙の敗北という政治的現実を超えた、個人的な使命感や特定の政治目標への固執にある。この姿勢が、国民の意思との深刻な乖離を生み出し、日本の政治をさらなる停滞へと導いている。
この石破首相の頑なな姿勢は、国民の強い不満と政治不信をさらに深めることにつながりかねない。度重なる選挙での審判、党内外からの退陣要求、そして野党からの不信任案提出の可能性。これらすべてが、現政権が国民の負託に応えきれていない現状を示している。政治の停滞と混乱を回避するためには、リーダーシップの明確な交代と、国民の意思を尊重した新たな政治体制の構築が喫緊の課題である。石破首相が真に国難を乗り越えることを願うのであれば、自らの信念に固執するだけでなく、国民の「ノー」の声に真摯に耳を傾けるべき時が来ている。