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大谷ファミマ、増量ローソンに負けた「セブンのおにぎり」…アナリスト「軸を失っている」カナダ社からの買収を阻止した日本の“会社法”の闇

(c) AdobeStock

 企業のガバナンスは、単なる内部管理の枠を超え、社会全体に影響を及ぼす重要な要素である。透明性や信頼性をどのように確保するか、そして取締役会や社外取締役がどのように役割を果たすかは、企業の競争力や株主価値に直結する。近年、企業統治の強化が求められる中、特に注目されているのが、「フィデューシャリー・デューティー(信認義務)」の重要性だ。経済産業省や金融庁が中心となり、ガバナンス改革を進める中で、企業と株主の信頼関係をどう築き、どのように向き合っていくべきか。展望を、日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏が分析するーー。

目次

大バトル!セブン&アイvsカナダ企業

 2024年夏、日本企業のガバナンスと市場の信頼をめぐる論争に火をつけたのは、カナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard、以下ACT)によるセブン&アイ・ホールディングスへの買収提案だった。創業者アラン・ブーシャール会長がみずから来日し、水面下で丁寧に交渉を進めたとされるが、わずか1カ月でACTは提案を撤回。静かに、だが深い失望とともに日本を去った。

 その顛末は、まるで異種格闘技のようだった。ACTが欧米流のスピーディーかつ透明性の高いM&Aを志向する一方で、セブン&アイの対応は一貫して鈍く、曖昧なままだった。提案は「検討中」のまま塩漬けにされ、7月中旬、ACTは「十分な協議ができなかった」とする文書を残し撤退した。

 ACTが提示した1株2600円という価格は、市場価格を大きく上回るプレミアムを含む好条件だった。だが、セブン側の井阪隆一前社長を中心とする経営陣は、最後まで明確な立場表明を避け続けた。公開買付(TOB)や三者委員会設置などの手続きに進まず、買収を受け入れる気配すら見せなかった。

 こうした態度を支えたのが、日本の会社法における「フィデューシャリー・デューティー(FD、信認義務)」の不在である。米国や英国では、取締役は株主の利益のために忠実に職務を遂行すべきと法律で定められているが、日本ではそれが明文化されていない。企業価値向上に資する可能性のある買収提案であっても、取締役が積極的に検討しなければならないという法的義務は存在しない。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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