“政治家女子48党”で政治デビューの女性都議が語る「立花孝志氏の素顔」NHK党と決別した理由を激白

 2025年6月の東京都議会議員選挙で、都民ファーストの会、自民党という二大勢力の候補を打ち破り、無所属で奇跡的な当選を果たしたさとうさおり氏。その異色の経歴の原点には、「貧乏子だくさん」の家庭で育ち、19歳で月500時間労働の末に過労で倒れたという壮絶な過去がある。

 大手監査法人での安定したキャリアを捨てて政治の道を選んだ彼女が掲げるのは、都政の「ブラックボックス」の解明と徹底した減税だ。既存政党の論理に縛られず、たった一人で都議会に乗り込んだ彼女は、停滞する都政にどのような風穴を開けるのか。その逆転戦略と覚悟の全貌に迫った。短期連載全4回の第2回。(取材日:7月23日)

目次

“政治家女子48党”を選んだ、たった一つのシンプルな理由

――そして、最初の政治活動のステップとして選ばれたのが、2023年の統一地方選挙の際に話題となった「政治家女子48党」でした。これは当時NHK党の立花孝志さんが立ち上げた政党ですが、正直、少しキワモノ感というか、「ふざけているのでは?」という印象を持つ人も多かったと思います。なぜここからスタートしようと?

 たしかに、そういう見方があるのは理解しています。ですが、私が掲げていた「女性特有のゆらぎを抱えたまま働ける社会にしたい」というコンセプトと、政治家女子48党が掲げた「女性だけで作り上げる政治団体」というコンセプトが、ぴったりと一致したんです。しかも、党首も同世代の女性でした。今まで、女性だけが集まって政治を変えようという団体はほとんどありませんでしたから、そこに大きな可能性と魅力を感じました。

――なるほど、コンセプトに共感されたのですね。

 はい。それに、無所属でいきなり立候補するというのは、政治のことが何もわからない当時の私には考えられませんでした。一方で、既存の大きな政党に入ってしまえば、自分の主義主張が自由に言えなくなるのではないかという懸念もありました。その点、政治家女子48党は自由に発言できる雰囲気がありましたし、とにかく「女性が集まった団体」という一点が、私にとっては非常に魅力的だったんです。

立花孝志氏は「友達」近くで見た意外な素顔

――政治家女子48党、そしてその母体であるNHK党との関わりについてお伺いします。結果的に、さとうさんは現在無所属で活動されていますが、立花孝志さんという存在は、さとうさんにとって恩師のようなものなのでしょうか。それとも反面教師なのでしょうか。

 うーん、なんだろうな……「友達」というのが近いかもしれません(笑)。

――友達、ですか!

 恩師という感じではないですね。ただ、政治の世界に初めて足を踏み入れたときに、彼から影響を受けたことは間違いありません。「今まで当たり前だと思われていた概念を壊してもいいんだ」「言いたいことを言ってもいいんだ」ということを教えてくれた、そういう存在です。

NHK党に「帰属意識は全くない」決別のワケ

――今でもNHK党に帰属意識のようなものはありますか?

 それは全くありません。そのことは立花さん本人にも伝えていますし、彼も理解しています。立花さんも公の場で「さとうさんと今後政治的に組むことはない」と明言しています。仮に私が議員になっても、同じ会派を組むことはない。お互いの政治的主張は全く違います。これは、お互いにとっての共通認識です。

――具体的に、どのような点で主張が違うのでしょうか。

 立花さんの基本的なスタンスは、今の自民党政権と連立を組みたい、というものです。「戦後の平和を守り抜いてきたのは自民党だから、今後も自民党にお願いするべきだ」という考え方ですよね。私は、その根本的な方向性が違うと考えています。なので、個人的には知人ですが、政治的に交わることは今後もないと思います。

なぜ参政党は躍進し、NHK党は失速したのか?

――そのNHK党ですが、先の参議院選挙では議席を獲得できず、一方で参政党が大きく議席を伸ばしました。かつて中にいた人間として、この両党の明暗を分けた要因はどこにあるとお考えですか?

 スタート地点は、立花さんと参政党の神谷宗幣さんは、ほぼ同じだったと思います。6年ほど前ですよね。そこからの戦略が違いました。神谷さんは、地方議員を一人ひとり育てていくという、非常に地道な組織作りを徹底してきました。

 一方のNHK党は、選挙の時の「風」で当選した議員がいても、その後の組織固めがうまく行かず、風と共に去ってしまうような状態だった。その組織作りの巧拙が、今の結果に繋がっているのではないでしょうか。神谷さんはもともと自民党に出入りしていましたから、自民党的な、伝統的な組織の作り方を熟知しているのだと思います。

――NHK党にはそうした組織作りが欠けていたと。

 そう感じています。もちろん、党内にそうしたケアをしようとしていたメンバーもいましたが、トップである立花さんからナンバー2以下の幹部へ、権限委譲が明確にされていませんでした。権限が曖昧なまま、それぞれが動いてしまった結果、内部が割れてしまった。それが当時の実態だったと思います。

「NHK党とは別のやり方で」虎視眈々と狙う国政進出プランの全貌

――さとうさんご自身は現在、「減税党」という形で党員を募り、現在4,000人以上集まっているそうですね。これは、まさにNHK党がやらなかったような組織作りを実践されているように見えます。

 はい、全く別のやり方です。組織が全くなくてもムーブメントは広がりませんし、かといって、旧来型の組織作りはお金がかかりすぎる。その中間、ハイブリッドな形で、どうすれば効率的に仲間を増やし、政策を広げていけるか、日々模索しているところです。この4,000人の党員は、もちろん千代田区民だけではなく、全国から私の考えに賛同して集まってくれた方々です。

――その組織は、今後の国政進出を見据えたものですか?

 そうですね。次の衆議院議員選挙に向けて、現在、公認会計士の資格を持つ候補者を募集しているところです。

都議会でいきなり直面した“水面下の権力闘争”

――本日、都議として初登庁されましたが、いかがでしたか?

 いやあ、良かったです(笑)。私は1人会派なので、割り当てられる会派室は窓もない「独房」のような部屋を覚悟していたんです。ですが、初日は臨時の、窓があって見晴らしの良い部屋を使わせてもらえて、非常に気分爽快にスタートできました。ただ、水面下ではすでに重要な動きが始まっています。

――と、言いますと?

 副議長のポストをどの会派が取るか、という交渉です。今、これを自民党と立憲民主党が争っています。慣例では第2会派が副議長を出すことになっていますが、この副議長というポストは非常に重要で、例えば本会議で都知事が答弁を拒否しようとした際に、「知事、きちんと回答してください」と議事を進行させる権限を持っています。

――なるほど、議会運営の鍵を握るわけですね。

 はい。ですから、私は今回、立憲民主党に副議長ポストを取ってもらいたいと思っています。そうなれば、知事による一方的な答弁拒否が減り、より実質的な議論ができる可能性が高まるからです。ただ、これは会派間の話し合いで決まるので、どうなるかはまだ分かりません。

なぜ東京都は「お金の使い道」を隠すのか?

――さとうさんは選挙戦で「都のお金の使い道を明らかにする」「ブラックボックスを暴く」と訴えてこられました。この「ブラックボックス」とは、具体的に何を指しているのでしょうか?

 例えば、東京都が支出している補助金です。予算の段階では大まかな使い道が公開されますが、その後の決算、つまり「実際に、いつ、どこに、誰に、いくら支払われたのか」という詳細な情報が、ほとんど公開されていないんです。その規模は、年間で約1兆円にも上ると言われています。

――それは情報公開請求をしても出てこないのですか?

 請求はすでに出したのですが、「膨大な量なので、少しずつ小分けでお願いします」という対応をされます。そのペースで開示請求を続けていくと、令和5年度分の情報を全て手に入れるだけで、2~3年はかかってしまう計算です。しかも、いざ開示されても、中身が黒塗り(あるいは白塗り)でほとんど見えない可能性もある。これが、私が言う「ブラックボックス」の正体の一つです。

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