なぜ?NO MORE 映画泥棒キャンペーン「若者を再犯に走らせる深刻な懸念」弁護士が捨て身の問題提起

映画館で上映される「NO MORE 映画泥棒」キャンペーンは、映画盗撮の抑止と著作権保護を目的とし、最大で「懲役10年、罰金1000万円」という重い刑罰を警告している。しかし、実際の映画盗撮の刑事罰は軽く、ほとんど実刑判決はないという現実がある。城南中央法律事務所の野澤隆弁護士は、こうした実態と乖離した啓発が、かえって「どうせ捕まらない」という誤解を招き、若者をより深刻な犯罪組織に取り込ませるリスクを指摘。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が野沢弁護士にインタビューしたーー。
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NO MORE映画泥棒に物申す弁護士
一般社団法人日本映画著作権協会が中心となり、著作権法に基づいて実施されている「NO MORE 映画泥棒」キャンペーンは、映画館での映画の無断盗撮を防止し、観客の著作権に対する意識向上を図ることを目的としている。映画は多くの人の努力と費用をかけて制作されている。その著作権を保護することは、映画産業全体の維持発展のために不可欠だというメッセージを伝えることを目指している。このキャンペーンは、映画館での盗撮行為への対策として2007年に開始された。キャンペーン映像は、映画館で上映される本編の前に流され、観客に盗撮が犯罪であることを分かりやすく伝えるために、特徴的なキャラクターや音楽、ユニークな演出が用いられている。「映画の盗撮は犯罪」という明確なメッセージが繰り返されている。映画館での盗撮は、日本の著作権法によって明確に禁止されている犯罪行為である。
著作権法第120条の2では、映画館等において上映されている映画を、録音録画機器を用いて無断で録音または録画する行為を禁止している。著作権法第120条の2に違反した場合の罰則は非常に重く、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方が科される可能性がある。これはキャンペーン内で犯罪であると強調されている根拠である。
キャンペーンは、盗撮をしようと考える人への抑止効果や、観客に改めて盗撮防止への意識を持ってもらうための啓発活動として機能している。多くの人が目にする映画館という場所で繰り返し上映されることで、著作権侵害に対する注意喚起として広く認識されている。しかし、城南中央法律事務所(東京都大田区)の野澤隆弁護士は、キャンペーンの在り方に疑問を投げかける。
弁護士「なぜ私が疑問をもったのか」
ーーキャンペーンに疑問を持ったきっかけは何か。
(野澤隆弁護士)