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“石丸新党”が急失速して参政党が爆伸びした本当の理由。政治家が気づき始めたネット選挙の限界「YouTubeの影響力は過大評価」

(c) AdobeStock

 2025年7月の参議院議員選挙では、参政党の躍進が大きくメディアに取り上げられた。この現象を、「政治的に無知な支持者たちが陰謀論や排外主義に毒されただけ」と切り捨てるのは単なる思考停止だと批評家の東浩紀氏は指摘する。

 参政党が支持を広げたのは既存政治が国民の声に応えられていない現状の裏返しだと分析する同氏に、参政党躍進が映し出す日本社会の地殻変動から凋落するリベラル勢力の課題まで、多角的に論じていただいたーー。

 みんかぶプレミアム特集「参政党が勝ち、リベラルが負けた理由」第9回。

目次

リベラルはJ・D・ヴァンス氏から「新しいリーダー像」を学ぶべきだ

 新しいリーダー像を考える上で、僕はアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領を思い浮かべます。彼はまだ、41歳。これから先20年、30年と、アメリカの政治の中枢で活躍する可能性を秘めた人物です。

 彼の著書『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)を読んだ方も多いでしょう。彼は、アパラチアの貧しい白人労働者階級(いわゆるヒルビリー)の出身です。しかし、そこから猛勉強して名門イェール大学のロースクールを卒業し、弁護士になった。しかも、その過程で海兵隊にも所属している。

 つまり彼は、「貧しい労働者階級の痛み」を知る成り上がりでありながら、「エリート層の言語」を操る知識人でもあり、さらに「軍務経験」という強さの象徴も兼ね備えている。このように、異なる階級や世界を横断する複雑な経歴と、そこから生まれる物語。それこそが、現代のリーダーに求められる「共振力」の源泉なのです。リベラル的な視点から見れば、彼の思想には家族主義や仲間びいきといった批判すべき点も多々あります。米国内ではアパラチアを利用しているという非難もあるようです。しかし、理屈を超えて人々の感情に訴えかけ、大きなうねりを生み出す力を持っていることは間違いありません。

小泉進次郎氏と石丸伸二氏に“圧倒的に欠けている”モノ

 日本も、このJ・D・ヴァンス氏と渡り合えるような、新しいタイプの政治家を必要としています。それは、世襲で何不自由なく育ったエリートでも、特定の業界や組合の利益を代弁するだけの政治家でもありません。自らの人生経験を通じて社会の様々な階層の痛みを理解し、それを自分の言葉で語り、人々の感情を束ねて行動へと変えていけるような、芯の強さを持った人物です。

 その意味で、たとえば小泉進次郎さんや、あるいは石丸伸二さんのような政治家は、残念ながら弱いと言わざるを得ません。彼らが語る「怒り」や「改革」に、多くの国民は自分の感情を乗せることができない。なぜなら、彼らと自分たちの生きている世界があまりにも違いすぎるからです。立場が違いすぎて、感情の「共振」が起きないのです。

次世代の政治的リーダーが持つべき“強さと優しさ”の正体

 これから数年の間に、日本でも新しいリーダーが次々と現れてくるでしょう。その中から、階級や立場を横断し、国民の多様な痛みに共振できる人物が登場したとき、日本の政治は大きく動くはずです。

 そして、僕が切に願うのは、そうして登場する新しいリーダーが、排外主義的な安易な解決策に流れるのではなく、僕が先ほど述べたような、日本の「雑種文化」の伝統に根差した「寛容」の精神を持った人物であってほしい、ということです。人々が安心して暮らせる社会基盤を整えることで、他者への優しさを取り戻す。強いリーダーシップと寛容の精神は、決して矛盾するものではないはずです。その両方を兼ね備えたリーダーの登場を、僕は待ち望んでいます。

SNS選挙という“巨大な幻想”が1年であっさり崩壊したワケ

 政治のモードやリーダー像の変化と並行して、政治とメディアの関係もまた、この1年で劇的に変化しました。特に、「SNS選挙の幻想」が急速に剥がれ落ちたことは、特筆すべき現象です。

 思い返すと、昨年は都知事選や衆院選、兵庫県知事選などを経て、「SNS選挙」「ネット選挙」という言葉がメディアを席巻しました。「ついにネットが選挙を動かす時代が来た」「YouTubeの再生回数やXのフォロワー数が当落を左右する」といった論調が、さも常識であるかのように語られていました。

YouTubeの影響力は過大評価か…政治家が気づき始めた“ネット選挙の限界”

 しかし、今回の参院選の結果はどうだったでしょうか。SNS上で存在感を誇っていた候補者が必ずしも勝利したわけではなく、むしろ地道な組織戦、いわゆる「地上戦」を展開した陣営が強さを見せました。

 ネット討論番組の影響力も、今となっては過大評価されていたのではないか、という見方が広がっています。YouTubeの再生回数が100万回だろうが200万回だろうが、それが直接、現実の投票行動に結びつくわけではない。政治家たちも、ようやくそのことに気づき始めたのではないでしょうか。それは、日本の政治にとって、きわめて健全なことだと僕は思います。

ネットの熱狂が“本物の支持”に繋がらない根本的な理由

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この記事の著者
東浩紀

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。 著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』など。

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