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参政党支持者を見下す“上から目線”がリベラルを滅ぼす…立憲民主党が「瀕死」に陥った根本的な原因とは

(c) AdobeStock

 2025年7月の参議院議員選挙では、参政党の躍進が大きくメディアに取り上げられた。この現象を、「政治的に無知な支持者たちが陰謀論や排外主義に毒されただけ」と切り捨てるのは単なる思考停止だと批評家の東浩紀氏は指摘する。

 参政党が支持を広げたのは既存政治が国民の声に応えられていない現状の裏返しだと分析する同氏に、参政党躍進が映し出す日本社会の地殻変動から凋落するリベラル勢力の課題まで、多角的に論じていただいたーー。

 みんかぶプレミアム特集「参政党が勝ち、リベラルが負けた理由」第10回。

目次

「自分と意見の違う相手はバカだ」と罵るようになった日本社会の悲惨な現状

「高齢者の医療費は削減しろ」「生活保護受給者は怠け者だ、打ち切れ」「外国人は犯罪者予備軍だ、追い出せ」。これらはすべて、自分にとって「気に入らない」「負担になる」と感じる他者を、社会から排除しようとする発想です。そして、自分と意見の違う政党や個人に対しては、「あいつらはバカだ」「情弱だ」と罵声を浴びせ、対話を拒絶する。みんなが同じ思想を持つ社会など、それこそディストピアに他なりません。さまざまな考えを持つ人々が混ざり合って生きているのが社会だという、大前提が忘れられています。

 自分にとって気に入らないものを排除するのは、政治ではありません。それは単なるいじめや差別の正当化です。

なぜリベラルは経済格差という“巨大な敵”と戦わず「文化戦争」に逃げるのか

 もし、私たちが本当に「怒る」べき対象があるのだとすれば、それは自分より弱い立場にある他者ではなく、もっと巨大な、構造的な不正に対してであるはずです。現代社会の極端なまでの「経済格差」は、その良い例でしょう。

 たとえば最近、AIエンジニアが移籍するのに100億円単位の報酬が動いた、といったようなニュースが平然と報じられています。これを聞いて、皆さんは「おかしい」と思わないでしょうか。もちろん、能力や努力に応じて報酬に差がつくのは当然です。しかし、一人の人間が、他の1000人、1万人分の富を独占するような社会が、本当に公正な社会と言えるのでしょうか。

 リベラルが人間の権利や平等を語るのであれば、本来、こうした巨大な経済格差に対してこそ、怒りの声をあげるべきなのです。「人間は生まれながらにして平等なはずだ」というリベラルの理念は、こうした場面でこそ強力な武器となるはずです。しかし、今のリベラルは、そうした大きな不正義を問うのではなく、より小さな、身近な文化的な対立にばかり目を向けているように見えます。

隣人を攻撃して溜飲を下げる「SNS政治」の深刻な病理

 怒りの矛先が、間違った方向に向いている。自分たちを本当に苦しめている巨大な構造から目をそらし、隣にいる、少しだけ自分と違う人々を攻撃することで、溜飲を下げている。それが、今の社会の病理ではないでしょうか。

 これからのAI時代、この問題はさらに深刻になります。「AIを使いこなせる人間と、そうでない人間の間では、生産性に天と地ほどの差が生まれる。AIを使わないのは自己責任だから、給料が3分の1になっても文句は言えない」。そんな論理がまかり通る社会を、僕たちは受け入れるべきではありません。

AIを使いこなせない「時代遅れ」を切り捨てる社会に、本当の多様性はない

 新しい技術に適応できない人間を「時代遅れ」として切り捨て、貧困に突き落としていくような社会は、健全な社会ではありませんし、何よりも「多様性」のある社会とは言えません。最先端のテクノロジー産業で働く人々がいる一方で、昔ながらのやり方でコツコツと仕事をしている人々も、それなりにきちんと生活していける。さまざまな生き方、働き方が尊重される。そういう社会こそが、本当に豊かで多様な社会だと僕は思います。

 一部の超エリートがAI産業で巨万の富を稼ぎ、残りの大多数はベーシックインカムでただ生かされる。そんな社会は、僕に言わせれば最悪のディストピアです。それは、文化的にきわめて貧しい社会となるでしょう。

 どのような社会を理想とするのか。僕たちは今、こうした根源的な問いを、政治の場で真剣に論じ合うべきなのです。

リベラルと立憲民主党が“瀕死”に陥った本当の理由

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この記事の著者
東浩紀

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。 著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』など。

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