参政党が躍進した本当の理由について古谷経衡「戦後日本が生み出した結果だ」…政治的無関心層が「マスコミが伝えない真実」に触れ、「政治に目覚める」カラクリ

7月の参院選で大躍進した参政党について、なぜ急激に支持を集めるようになったのか、さまざまな識者が考察している。
なかでも注目を集めた論考「参政党支持層の研究」(Yahoo!ニュース)を発表したのが、作家の古谷経衡氏だ。氏にあらためて、なぜ参政党が支持を集めたのか、その本質を解説していただくーー。
みんかぶプレミアム特集「参政党が勝ち、リベラルが負けた理由」第12回。
目次
自民党を支持していた岩盤保守層を参政党が切り崩したという明確な形跡はない
参政党支持層の多くは、所謂「ネット右翼(ネット保守とも)」ではない。私の推計では彼らは最大でも250万人程度だが、参政党は今次参院選で約742万票(比例)を獲得した。単純に数が合わない。彼らの好むような政策はあるものの、その多くは日本保守党(比例で約298万票を獲得して躍進)に流れたとみる。よって従来自民党を支持していた岩盤保守層を参政党が切り崩したという明確な形跡はない。
参政党支持層は、大きく分けてオーガニック・スピリチュアル信仰層(ここには、反ワクチンなども含む)、消費税減税・積極財政を主張する層、そして政治的無関心層の三つである。
では、参政党に投票したのはどの層なのか
最初にあげたオーガニック・スピリチュアル信仰層は参政党の岩盤を形成する支持層で、その総数はおおむね約200万弱である。というのも、過去二回の参・衆選挙で同党はそれぞれ約180万票、約187万票を得た。これが参政党の基礎票を形成する。
二番目の層は、元来れいわ新撰組や国民民主党などを支持していた層の一部が、参政党に乗り換えたものである。朝日新聞とANNの出口調査によると、当選した自民候補と二位で落選した参政候補が激しく競った群馬選挙区(1人区)のうち、れいわ新撰組支持層の約57%、国民民主党支持層の約59%が参政党に流れたことが示されている。本来両党に入れるはずだった100万~200万票が、参政党に流出したのだ。
しかしもっとも分厚いのは三番目の政治的無関心層である。この人々は政治的な右・左や、保守や革新といった対立軸にはほとんど関心がないどころか、全般的な政治・社会・歴史・科学への基礎的知識が薄弱かほとんどゼロである。その中には40、50年も生きてきて、一度も選挙に行ったことのない層が大量に含まれている。今回参院選の投票率は前回比で約6%強上昇した。つまり、約600数十万人の有権者による新規票が増えた計算だ。そこに含まれる政治的無関心層のおよそ200万~300万票近くが、参政党の躍進を支えた主因とみる。
「政治と宗教の話はするな」の弊害…政治への知識や関心と社会的地位が関係ない日本の惨状
驚くべきことに現代日本では、学歴や年収と、政治・社会構造への理解はまったく比例していない。「政治と宗教の話はするな」という奇妙な社会通念が支配してきた戦後日本にあっては、政治への知識や関心と、社会的地位は関係がない。
畢竟私の人生でもこのような人々は大量にいた。東京大学を卒業したAは、参議院が解散されないことに激しく憤っていた。私と同じ大学に推薦で合格したBも、参議院は解散するものだと思い込んでいた。早稲田大学を卒業したCは、時の総理大臣の名前を知らず、アラスカを国だと思っていた。元カノのDは、私が半ば強引に投票所に連れて行くと、幸福実現党に入れたと言った。理由は「名前がHappyだから」。私が家庭教師として教えていた大学受験生のEは、日本の初代総理大臣を夏目漱石と答えた。
民主主義社会における最低限度の「市民としての基礎知識」がゼロでも、その分野は入試で問われないので、赤ちゃんと同様に無垢であっても、社会人としてきちんとやっていけるのが日本国である。
政治的無関心層が「マスコミが伝えない真実」に触れ、「政治に目覚める」カラクリ
無論、彼らがそののち、参政党支持に回ったのかどうかは定かではない。しかし政治的無関心層とはこのような人々で、左様な世界観を持つ。