怖すぎる…誰が対象?日本年金機構からの手紙をスルーし続けた人に待つ恐怖「赤い封筒を放置した人に起こること」

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 老後生活を支える年金をアテにしている人は少なくないだろう。20歳から60歳まで保険料を支払った場合の老齢基礎年金(国民年金)は月額6万8000円が受給でき、会社員や公務員など「第2号被保険者」(厚生年金)の標準年金額(夫婦2人分、老齢基礎年金含む)は月額23万円超に上る。物価上昇が続く中、まだまだシニアライフに不安を抱く人はいるものの老後資金の柱となるのは間違いない。だが、年金保険料をしっかり払っていなければ満額受給できないばかりか、財産が差し押さられる可能性があることをご存じだろうか。経済アナリストの佐藤健太氏は「差し押さえ条件は厳格化してきており、注意が必要だ」と警鐘を鳴らす。シャレにならない年金未納、その恐怖とは―。

目次

2024年分の納付率は78.6%

 日本に居住する20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入することになる。これは国民年金法に定められており、年金制度は全員が加入する国民年金の「1階部分」と、会社員や公務員などが加入する厚生年金の「2階部分」に大別される。会社員や公務員などは「第2号被保険者」と呼ばれ、それ以外の自営業者などは「第1号被保険者」だ。

 厚生労働省が2025年6月に公表した「国民年金の加入・保険料納付状況」によると、2024年度末の公的年金加入者数は6755万人となっている。国民年金の「第1号被保険者」(任意加入被保険者数を含む)は1368万人だ。会社員や公務員であれば、厚生年金の保険料は給料から天引きされるため未納となるケースは想定しづらいが、国民年金は自分で納める必要があるため未納となっている人が存在する。

 足元の2024年分の納付率は78.6%で、前年と比べて1ポイント上昇したものの約2割の人が保険料を払っていないのが実情だ。今年3月に発表された厚労省の「国民年金被保険者実態調査」を見ると、第1号被保険者の就業状況は「自営業主」が18.7%、「家族従業者」6.4%、「常用雇用」5.9%、「パート・アルバイト・臨時」31.9%、「無職」33.7%となっている。国民年金保険料を納付しない理由は「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」が最も高く、「うっかりして忘れた、後でまとめて払おうと思った」「納める保険料に比べて、十分な年金額が受け取れないと思う」「年金制度の将来が不安・信用できない」の順で多かった。

未納のままにしていると、財産が差し押さえられる恐れが

 特に学生や無職の人には切実な問題なのだ。

 だが、先に触れた通り国民は国民年金に加入し、原則として保険料を支払わなければならない。未納のままにしていると、財産が差し押さえられる恐れがあることは認識しておく必要がある。

 日本年金機構の公式サイトによれば、国民年金保険料が納付期限までに納付されない場合、納付勧奨を実施している。支払う能力がありながら、たび重なる納付勧奨を実施しても保険料が納付されない場合には特別催告状が送付される。

 特別催告状とは年金保険料の請求書のようなものです。最初は封筒の色が青で、次は黄色、最後に赤い封筒で送られる。封筒が青のときは未納状況の説明程度の内容だというが、赤になると、財産差し押さえの準備に入ることを説明するなど、強い警告に変わる。

 指定期限までに未納の国民年金保険料を納付しなければならない。もしも、未納の国民年金保険料が納付されない場合は延滞金に加え、財産が差押えられることになる。

どのような人が差し押さえ対象となっているのか

  未納が続く人には日本年金機構から特別催告状が送られる。同機構が公表している「国民年金保険料強制徴収の実施状況」によると、2024年度(9月末時点)の「最終催告状送付件数」は10万3194件、「督促状送付件数」は5万8666件に上っている。さらに「差押執行件数」も1万909件ある。加入者全体を見れば少ないと映るかもしれないが、最終的に財産が差し押さえられる件数が1万以上もある点は甘く見ない方が良いだろう。

 では、どのような人が差し押さえ対象となっているのか。日本年金機構が「基準」としているのは、「所得額が300万円以上」で「7ヵ月以上未納」のケースだ。ここで言う「所得額」とは、給料から各種控除などを差し引いた金額である点には注意が必要となる。実際、差し押さえ対象となる財産は、「給与」「預貯金」「不動産」「有価証券」「貴金属」「自動車」などがあげられる。日本年金機構の「基準」は法令に基づいたものではないが、10年前に比べれば厳格化されており、「自分は控除後の所得額が300万円以下だから大丈夫だ」と思っていたら、さらに厳しくなる可能性もあることは認識しておかなければならない。

年金未納が続いている家族の世帯主には連帯して納付義務が

 シニアライフを支えるはずの公的年金が思わぬ「恐怖」を生むのは、何もこれだけではない。実は、世帯主や配偶者は「連帯責任」を負うことになる。保険料の納付義務を定めた国民年金法88条第2項は「世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う」と規定している。第3項には「配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う」とある。

「えっ、もう成人なのに?」と思う人がいるかもしれないが、年金未納が続いている家族の世帯主には連帯して納付義務があるのだ。つまり、それは世帯主の財産も差し押さえ対象となる可能性があることを意味する。

 先に触れたように、「最終催告状」が送付された件数に比べれば「差押執行」にいたるのは1割程度だ。だが、被保険者に連帯納付義務者(世帯主および配偶者)がいる場合には、連帯納付義務者に対しても財産の差し押さえが行われる点は十分に理解しておく必要がある。20歳を超えている学生も納付義務があるのは当然だ。

免除や猶予の制度を利用することもできる

 督促状で指定された期限より後に国民年金保険料を納付した時には延滞金も発生する。納付期限の翌日から納付日の前日までの日数に応じて計算がなされるものだ。国民年金保険料は1カ月あたり1万7510円(2025年度)で、納付期限は納付対象月の翌月末日。保険料の納付が難しい時には、免除や猶予の制度を利用することもできるので理解しておく必要がある。

 保険料免除制度は、本人・世帯主・配偶者の前年の所得(1~6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合などが対象で申請書の内容が承認されれば保険料の納付が免除される。免除される額は「全額」「4分の3」「2分の1」「4分の1」の4種類がある。

 保険料納付猶予制度は、20歳以上50歳未満で本人・配偶者の前年所得(1~6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合、承認されれば納付が猶予される。学生には在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」も設けられている。また、生活保護の生活扶助を受けている人や障害基礎年金・被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている人などは国民年金保険料が免除される。詳しくは、日本年金機構や年金事務所に問い合わせると良いだろう。

「うっかりしていた」では、済まされない年金未納の恐怖

 改めて、日本の年金制度は、国民年金と厚生年金に大別され、20歳以上60歳未満の国民は国民年金への加入が義務付けられていることを忘れてはいけない。にも関わらず2024年分の国民年金納付率は78.6%と約2割が未納の状況なのだ。そして未納が続くと、最終的には財産が差し押さえられる可能性がある。特に所得300万円以上、7ヵ月以上の未納が目安とされ、給与、預貯金、不動産などが差し押さえの対象となってしまう。

 さらに、世帯主や配偶者には連帯納付義務があり、家族の未納によって自身の財産も差し押さえられるリスクがあることも肝に銘じておこう。経済的に支払いが困難な場合は、保険料の免除や猶予制度、学生納付特例制度なども利用できるため、日本年金機構や年金事務所への相談が不可欠だ。年金未納の深刻さを理解し、適切な対応を怠らないことが重要だ。

「うっかりしていた」では、済まされない年金未納の恐怖。あなたは大丈夫だろうか?

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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