まさかの高市、大逆転!小泉・ステマ依頼にネットが猛烈な嫌悪か…総裁選、唯一のアベノミクス継承者に“高市ラリー” 期待

来月4日に投開票を迎える自民党の総裁選。もともと議員票集めで優勢が伝えられていた小泉進次郎農水大臣(44)が党員・党友票でも票数を獲得する見込みという調査がでたことから、小泉氏が圧勝するだろうという予測だったが、今、異変が起きている。自民党総裁選といえば、これまでも波乱や逆転の歴史だ。今回は何が起ころうとしているのか。誰が総理になるのか。政治に詳しいジャーナリストの長島重治氏が「大本命」の失速と高市早苗元総務大臣(67)の逆転の可能性を予測するーー。
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「高市さんが逆転している!」
「高市さんが逆転している!」
25日未明、一通のメールが永田町を駆け回った。日本テレビによる自民党の党員・党友への独自の電話調査だ。それによると、同様の前回調査(今月19日~20日)では小泉氏が32%でトップだった。今回は28%と4ポイント減らした。それに対し、高市氏は前回は28%で今回は34%と6ポイント増やした。小泉氏32→28、高市氏28→34、となっていて1位と2位が逆転した。ちなみに他の候補者たちでは林芳正官房長官(67)が17%、小林鷹之元経済安全保障大臣(50)が5%、茂木敏充前幹事長(69)が4%となっている。
わずか3日間での小泉氏の失速と高市氏の躍進。一体何が起きているのか?
今回の総裁選で唯一、自民党員への直接の電話調査をしているのは日本テレビだけだ。他の大手メディアも「世論調査」は実施するが、党員調査はできない。おそらく日本テレビは独自のルートで自民党員名簿を入手しているのだろう。サンプル数などは非公表だが、前回総裁選でもこの事前調査はかなり結果に近かったので信頼度が高い。にこの調査に関わった日本テレビ関係者はこう解説する。
「奈良の鹿と万葉集の和歌が党員の保守層に刺さったみたいです。この短期間で6ポイントの増加だからそれしか考えられません。それに、小泉さんが原稿の棒読みに徹していてまったく持ち味を出せていない。内訳をみると、世代交代に期待した40代の支持層が離れていますから.高市さんが党員票では1位が見えてきました」
この関係者がいう「奈良の鹿」とは何のことか。念のためおさらいをしておこう。
自民党が9月22日の自民党総裁選の告示日に実施した候補者の所見演説会での高市氏の演説の冒頭のことを指している。こういう内容だ。
高市・鹿発言に「ドン引きだった」(中堅議員)
「皆様こんにちは。高市早苗、奈良の女です。大和の国で育ちました。奈良の女としては、奈良公園に1460頭以上住んでいる鹿のことを気にかけずにはいられません」 と冒頭でいきなり奈良公園の鹿の話になった。
「そんな奈良の鹿をですよ。足で蹴り上げるとんでもない人がいます。殴って怖がらせる人がいます。外国から観光に来て、日本人が大切にしているものをわざと痛めつけようとする人がいるんだとすれば、皆さん、何かが行き過ぎている、そう思われませんか? SNSも目にしますよね」
この演説では「日本」と16回述べたのに次いで、「鹿」という言葉が11回登場したという。
複数の自民党議員に取材すると、この演説会の会場だった自民党本部8階のホールは「ドン引きだった」(中堅議員)という。そもそも高市陣営では、前回の支持層だった旧安倍派議員が激減しているため、「穏健保守でいこう」という作戦だった。その前週の出馬表明会見では、持論の靖国神社参拝を封印し、「私は穏健保守、中道保守だ」と訴えて、議員票の支持拡大を狙った。
陣営「へずまりゅうと同じになっちゃうじゃないか」」
陣営の作戦通りだった出馬会見が一転、22日の会見では「保守」の高市カラーを前面に出した。陣営メンバーも「作戦と違う。誰の入れ知恵だ。『へずまりゅう』と同じになっちゃうじゃないか」と戸惑ったという。実際に、その演説会の翌日の日本記者クラブの討論会では「蹴り上げているのが外国人という根拠は?」などと詰められる場面もあって、物議を醸していたのは事実だ。
高市陣営さえも焦った「珍事」だったが、ふたをあけてみれば、「党員の保守層にはひびいた」ということになるのだろう。もともと高市氏を支持する層は圧倒的に「保守的な政策への期待」だ。その保守色の強い政策というのは安全保障政策、外国人政策、積極財政的な経済政策のことになる。
経済政策でも、持論だった食料品への消費減税ゼロは封印してしまったものの、5人の候補のなかで唯一、積極財政のスタンスだ。討論会では他の4候補が慎重姿勢を示すなかで、唯一、経済成長のための赤字国債の増発を容認してみせた。
昨年9月の総裁選では、「利上げ」を探る日銀を念頭に「金利をいま上げるのはアホやと思う」と発言した。
5人のなかで唯一、アベノミクスの継承者
今回は、そこまでとがった言い回しは避けているが、日本記者クラブでは財政に関する考え方を問われ、「日本の国債は9割以上を国内投資家が保有して、最も世界で安定した債券市場の一つだ」と指摘。赤字国債を増発した場合でも、名目成長率が国債金利を上回る状況を維持できれば債務残高の対国内総生産(GDP)比は自然に安定するとの見解を示した。
つまり、赤字国債を増発を容認する一方で、財政再建を無視しているわけでもない。あくまで経済成長を求めるという姿勢は、今回の5人のなかで唯一、アベノミクスの継承者の位置を堅持している。
日本の株式市場では「高市ラリー」という言葉がすでに定着しつつある。
昨年9月27日に実施された総裁選では、1回目の投票で、積極的な財政政策・金融政策の高市氏がトップに躍り出たことで円安・株高の「高市ラリー」が発生した。しかしその後の決選投票で、緊縮的な財政・金融派の石破氏が逆転勝ちすると、市場は急速にしぼみ、週明け30日の日経平均株価は一時37,797円(前週末比2,031円安)まで暴落した。いわゆる「石破ショック」だ。
議員票では小泉氏が圧倒的に強い
今回も決選投票が小泉氏VS高市氏になれば同様のことが起こるのか?
私は高市氏については党員票1位で通過しても結局、決選投票で敗れる可能性が極めて高いと予測している。というのも総裁選は1回目の投票は議員票295票と党員票295票の合計590票で争う。一人も過半数の票をとれなければ、上位2人での決選投票だ。
高市氏が2位以内で決選投票への進出はほぼ間違いないだろう。ただ、問題は決選投票のルールにある。1回の投票では同数だった議員票と党員票が決選投票ではなぜか議員票295に対し、地方票は47に激減してしまう。どんなに党員票に強くても、決選投票では議員票の支持がないと勝てない仕組みなのだ。それが前回の総裁選で1位通過した高市氏が決選投票で石破氏に逆転負けした要因だ。
今回も党員票では高市氏が伸ばしても、議員票では小泉氏が圧倒的に強い。さらに決選では3位の林氏の議員票も小泉氏に流れるとみられる。高市氏が勝つには、議員票も取り込む必要がある。そのためには高市氏が大幅に自民内の議員支持を伸ばす必要もあるが、逆に言えば小泉氏が大きく失速すれば、決選投票も勝負の行方が分からなくなる。
「ステマの件どうなっている?」と支援者から激詰め
小泉氏が失速していく可能性があるのが今週の文春報道だ。小泉陣営の広報班長を務める牧島かれん元デジタル大臣の事務所が陣営関係者に「ニコニコ動画」にポジティブなコメントを書いて欲しいとメールで要望したという。「総裁間違いなし」、「泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね」などのコメント例を紹介されている。
こうしたやらせというか、いわゆる「ステルスマーケティング」がネット空間では猛烈な批判にさらされている。さらに批判はネット空間だけにとどまっていない。落選の九州地方の地元議員が26日の朝から地元を回っていても「ステマの件どうなっている?」と支援者に詰められているという。
そんな「大炎上」のさなか、小泉氏は26日午前の閣議後の会見で謝罪に追われた。
まず記者から事実関係を追及され、「私を支援してくれている議員の事務所において、他の支援議員からの問い合わせもあって当該事務所の独自の判断として、コメントの参考例を示したメールを送付したものだと報告を受けている」と事実関係を大筋で認
そのうえで「ひとえに応援のメッセージを広げたいという思いだったと聞いてはいるが、参考例の中に一部行き過ぎた表現があったことについては適当ではなく、二度とこういうことがないように話をさせていただいた。再発防止を徹底をして、引き続き緊張感を持って総裁選に臨みたいと思う」と釈明した。
小泉氏本人が知らないところで陣営の議員の秘書が先走ってしまった、ということらしい。総裁選については「緊張感を持って二度とこういうことが起こらないようにしっかりと最後まで臨みたい」と語った。
ネット上の批判は本人の謝罪でどこまで落ち着くか、今後の党員票の行方に直結するだろう。
「陣営内に裏切り者がいる。一体誰なんだ!」
さらにこの問題は盤石と言われた小泉陣営の「連帯」にも影を落とす。
「陣営内に裏切り者がいる。一体誰なんだ!」
ある陣営幹部がそう筆者にこぼした。元々議員だけでも100人近い大所帯だ。情報管理も難しいのだろう。内部情報がこうして漏れていることに陣営内が疑心暗鬼になっているのが透けて見える。
別の陣営関係者はこうぼやく。
「みんな自分の手柄争いはするけど泥をかぶれる人がこの陣営にはいない。自民党を一つにまとめるっていうけど、すでに自分のチームがバラバラですよ。みんなに良い顔をしているけど、彼は『裸の王様』だよね」
「失言ゼロ」でも失速するまさに予測不能な政治家
「大本命」小泉氏が前回同様に失速モードに入ったようだ。「失言ゼロ」でも失速するまさに予測不能な政治家だ。前回出馬の際に小泉パパが慧眼していたようにまだ「若すぎた」のだろう。
総裁選はこれまでも大逆転のドラマが繰り広げられてきた。「奈良の女」のそうした逆転劇の歴史に新たな名を刻むのだろうか。ドラマの終幕は10月4日だ。