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元モルガン銀行東京支店長「高市政権誕生でバブル崩壊を遥かに超える悲劇が始まろうとしている」年内に「1ドル180円」突破も十分あり得る理由

(c) AdobeStock

 自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し、「高市政権」誕生の可能性が高まっている。市場は株高・円安でこれを歓迎しているように見えるが、元モルガン銀行東京支店長の藤巻健史氏は、この光景こそ日本経済崩壊の序曲に他ならないと強く警鐘を鳴らす。

 高市氏が掲げる「バラマキと減税」は、英国を大混乱に陥れた「トラスショック」の再来になりかねず、異次元緩和の末に機能不全に陥った日銀にはこの暴走を止める術がないと憂慮する同氏。制御不能なハイパーインフレと「円の紙くず化」という破滅的な未来が現実味を増す中、我々が資産を守るために今すぐ取るべき行動とは何なのか。同氏に詳しく語っていただいた。全3回の第2回。みんかぶプレミアム特集「資本主義は人を幸せにできるのか」第2回。

目次

「異次元緩和」の時限爆弾で日本円は紙切れになる

 しかし、日銀だけが「中央銀行は株式を本格保有すべきではない」という金融論の鉄則を破りました。そして今や、その禁断の果実である株の評価益がなければ、とっくに債務超過に陥っているという有り様です。これは例えるなら、巨大メーカーが本業そっちのけで「馬券で大儲けして黒字になりました」と発表しているようなものです。そんな企業のことを誰が信用するでしょうか。誰も評価しないし、むしろその経営の危うさから株は売られるでしょう。

 日銀がやっていることは、それと同じくらい、あるいはそれ以上に無責任で危険なことなのです。異次元緩和を始める前の健全な日銀であれば、200年、300年経っても潰れることなどあり得ませんでした。債務超過になり得るリスク資産を持っていなかったからです。しかし、今の危険な資産を抱え込んだ日銀は違います。株価が暴落すれば一発で終わりです。そのとき、日銀の信認は地に堕ち、円の価値もまた、紙切れ同然となってしまうでしょう。

高市政権と日銀が生み出す「資産インフレ」という名の毒薬

 高市政権の財政バラマキと、機能不全に陥った日銀。この二つが組み合わさることで、日本は制御不能なインフレへの道を突き進むことになります。

 そのメカニズムはこうです。まず、今日の株価急騰が示しているように、資産価格が上昇します。いわゆる資産インフレです。株や不動産を持っている人々は豊かになり、気が大きくなって消費を増やします。贅沢品が売れ始め、経済は一時的に狂乱状態になります。

 これは、1980年代後半のバブル経済のときと似ています。当時、「シーマ現象」という言葉がありました。日産の高級車シーマが飛ぶように売れ、それを見た人々が「景気がいいぞ」とさらに日産の株を買い、株価が上がるという好循環(あるいは悪循環)が生まれたのです。

バブル崩壊を遥かに超える悲劇が始まろうとしている

 しかし、今回について言えば、バブル期と決定的に違う点が二つあります。

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この記事の著者
藤巻健史

1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後 三井信託銀行に入行 1980年社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。ロンドン支店 勤務をへて1985年 米銀のモルガン銀行(現JP モルガンチェース銀行)に転職。 同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表を歴任し東京市場屈指のディーラーとして 世界に名を博し JPモルガンの会長から伝説のディーラーと称された。 2000年にモルガン銀行を退社後はジョージソロス氏アドバイザーを務めた他、一橋大学 経済学部、早稲田大学大学院商学研究科にて講座を受け持った。2013年から2019年までは参議院議員。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。 現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役 。

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