国民民主、支持率急落の玉木ショック!党を消滅へと導く死の道…どうする、年収の壁撤廃、賃上げ促進、ガソリン減税「SNS研究から分析」

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 国民民主党が支持率が落ちている。思い当たる節はただひとつ。高市早苗総裁誕生、公明党の連立離脱後に起きた「優柔不断さ」だ。もしかしたら、玉木雄一郎総理が誕生するかもしれない……。そんな声も漏れるなかで日本維新の会が連立候補に名乗り出て、自民党との“スピード結婚”を果たしてしまった。そうした中で国民民主党支持者から落胆の声も漏れた。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説していくーー。

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目次

玉木代表「経済政策が重なっている高市・自民」

 高市早苗内閣が発足し、世論は祝祭的なムードに包まれた。各社の世論調査では軒並み高い支持率を記録し、特にこれまで自民党への支持が伸び悩んでいた現役世代からの熱狂的な支持を集めている。この風は、与党・自民党にとって順風以外の何物でもない。しかし、その強風の陰で、ある政党が失速し、よろめいている。玉木雄一郎代表が率いる国民民主党だ。

 日本経済新聞社の調査では支持率が9%から6%へ、読売新聞社の調査では9月から4ポイント減の5%へと急落した。これまで「手取りを増やす」という明快なスローガンを掲げ、ガソリン減税や年収の壁撤廃といった現実的な政策で、既存の政党に飽き足らない層の受け皿となってきた国民民主党にとって、この数字は深刻な事態である。

 なぜ、支持が離れたのか。理由は複合的だが、日経(10月28日)の分析は一つの構図を浮かび上がらせる。国民民主党の支持基盤であった40代から50代の現役世代、そして参政党に流れていた若年層の一部が、保守色を鮮明にする高市自民党へと回帰したのだという。高市内閣は、国民民主党や参政党の支持層からさえ8割を超える支持を得るという、驚異的な吸収力を見せつけている。玉木代表自身が「経済政策が重なっている高市総裁が就任した自民党に支持が流れた」と分析するように、政策的な競合相手の登場が支持層の移動を促したことは間違いない。

 私は繰り返し書いてきたが、国民民主党が掲げてきた経済政策には、特筆すべき価値があった。特に、国民の財布に直接響く減税策は、他のどの政党の主張よりも具体的で、地に足の着いたものであった。

 ガソリン価格の高騰にあえぐ国民のために「トリガー条項」の凍結を解除し、ガソリン税を引き下げるという提案。これは、地方で自動車が生活の足である人々や、物流を担う中小運送業者にとって、まさに干天の慈雨となる政策だ。あるいは、働きたいのに税制の歪みのせいで就労時間を調整せざるを得ない、パートタイマーの女性たちを苦しめる「年収の壁」問題。この壁を引き上げる具体的な提案は、多くの世帯の収入を増やし、深刻な人手不足の解消にも繋がる妙案だった。

 これらの政策は単に国民に金を配るバラマキではない点だ。減税という手法は、人々の消費や企業の投資を促し、経済全体を活性化させる力を持つ。つまり、経済のエンジンを再始動させるための、極めて合理的な選択なのだ。

自分とは反対の意見を持つ者を1カ月間Xでフォローすると、自分の考えは変わるのか

 しかし、首相指名選挙を巡る動きの中で、玉木氏の立ち位置が曖昧に見えたことは影響したかもしれない。与党との連立協議と、野党としての連携。その天秤の上で揺れ動く姿は、一部の有権者には「腰が定まらない」と映ったようだ。

 支持率の低下は、党首にとって悪夢だ。焦りが生まれ、何か新しい手を打たなければという強迫観念に駆られる。

 そして、多くの場合、保守層の支持する高市政権との対決姿勢を明確にするため、よりリベラルで、より批判的な言説へと傾斜していくという罠に陥る。しかし、国民民主党が今、この道を選ぶことほど愚かで、致命的な過ちもない。それは、単なる政治的勘ではなく、科学的な研究が裏付ける冷徹な事実なのである。

 ここで一つの興味深い研究を紹介したい。クリストファー・ベイル氏らが2018年に発表した論文、『ソーシャルメディアにおける反対意見への暴露は政治的分極化を増大させる可能性がある』である。この研究は、政治的な「エコー・チェンバー」、つまり自分と同じ意見ばかりが反響する閉じた空間が、社会の分断を深めるという通説に、実験というメスを入れたものだ。

 研究者たちは、民主党支持者と共和党支持者のX(旧Twitter)ユーザーを対象に、ある実験を行った。参加者の一部に、自分とは反対の政治的意見を発信するボットのアカウントを1ヶ月間フォローさせ、その後の態度の変化を測定したのだ。常識的に考えれば、反対意見に触れる機会が増えれば、相互理解が深まり、人々の考えは穏健化し、中道に近づくはずだ。異なる文化に触れることで視野が広がるように、異なる意見に触れることで政治的な寛容さが育まれると期待されるだろう。

素朴な期待を無慈悲に打ち砕いた実験結果

 しかし、実験結果は、その素朴な期待を無慈悲に打ち砕いた。特に、保守派である共和党支持者の間で、驚くべき現象が確認された。論文はこう結論付けている。

「共和党員がリベラルなX(旧Twitter)ボットをフォローしたところ、事後には実質的により保守的になった。民主党員は保守的なX(旧Twitter)ボットをフォローした後、リベラルな態度がわずかに増加したが、これらの効果は統計的に有意ではなかった」

 これは「バックファイア効果」として知られる現象だ。人は、自分の信念と矛盾する情報を突きつけられると、その情報を否定するだけでなく、かえって元の信念をより強固にしてしまうことがある。まるで、無理やり嫌いな食べ物を口に押し込まれると、その食べ物への嫌悪感が一層増すようなものだ。

国民民主がリベラルな立場から批判を始めたらどうなるか

 この研究が示したのは、特に保守的な思想を持つ人々に対してリベラルな言説を浴びせかける行為が、保守的な思想を持つ人々を説得するどころか、さらに頑なにし、分極化を加速させるという非対称的な現実である。

 この科学的知見を、現在の国民民主党の窮状に当てはめてみよう。国民民主党の支持基盤には、現実的な政策運営を望む穏健な保守層や中道層が少なからず含まれている。彼らは、高市自民党の登場によって、より魅力的な選択肢を見つけ、そちらへ移動しつつある。この状況で玉木代表がもし、焦りから高市政権に対して「極右だ」「独裁的だ」「人権意識が欠如している」といった、リベラルな立場からの紋切り型の批判を始めたらどうなるだろうか。

 論文が示す通り、それは最悪の結果を招く。まだ党に残っている穏健保守・中道層は、そのリベラルな言説に強い反発を覚えるだろう。「国民民主党も、結局はあの騒がしい人たちと同じなのか」と失望し、最後の期待も捨てて高市自民党へと完全に流れ去ってしまう。これは、火事に油を注ぐ行為に等しい。支持者の流出を食い止めるどころか、むしろ加速させるだけの愚策なのだ。

 では、どうすればよいのか。まず、高市首相への批判の仕方から変える必要がある。リベラルな土俵で戦ってはならない。むしろ、高市氏の支持基盤である保守層の心に響くような、ある種の「愛ある鞭」のように見える批判を展開するべきだ。

「高市首相も一緒に靖国参拝しましょうよ」

 例えば、「高市総理、その程度ですか。もっと日本の国益のために大胆な改革を断行されると期待していました」「いつもの迫力が感じられませんね。その人事では結局、旧来のリベラルに傾いた頃の自民党政治と何も変わらないではないですか」「安倍元首相は靖国参拝したのですから、高市首相も行きましょう」といった具合だ。

 これは、高市氏を応援しているかのような体裁を取りながら、その支持者の期待を裏切っている点を鋭く突く高等戦術である。支持者自身が抱いているかもしれない、かすかな不満や物足りなさを代弁することで、彼らの心に揺さぶりをかけるのだ。

 そして何より、国民民主党は自らの原点に立ち返らなければならない。

党を消滅へと導く死の道

 国民民主党が支持を集めたのは、イデオロギー闘争から距離を置き、「給料が上がる経済を実現する」という一点に集中したからだ。ガソリン減税、賃上げ促進税制の強化、年収の壁撤廃。こうした政策こそが、党の生命線である。日本維新の会が連立入りしたことで、野党のスペースは広がった。しかし、その空いた席に、古いリベラル政党の焼き直しとして座ってはならない。「政策本位の是々非々」という立ち位置を、何があっても堅持しなくてはならない。

 玉木代表が直面している支持率の低下は、単なる数字の減少ではない。それは、国民民主党という政党のアイデンティティそのものが試されている、正念場なのである。安易なリベラル化という甘い誘惑は、支持基盤を崩壊させ、党を消滅へと導く死の道だ。科学は、その危険性を明確に警告している。厳しい保守層の奪い合いの戦場だからこそ、感情的な反応ではなく、冷静な戦略と、自らの政策への揺るぎない自信が求められている。

 玉木代表は今こそ、この科学的な警告を真摯に受け止め、目先の批判に流されず、自身の原点である「政策本位の是々非々」を貫くべきだ。それが、国民民主党がこの危機を乗り越え、真に国民に支持される政党として再浮上する唯一の道なのである。

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