ニセコの次に狙われるのはココだ…海外資本の無届け開発が繰り返される北海道!堀江貴文「日本人ファースト的ムーブの考えは醜悪」と言うが…

日本有数の国際リゾートが揺れている。中国・香港などの外国資本によって開発が進んできた北海道・ニセコ地域で、外国人・外資による不動産取得に伴う地価高騰や無許可での森林伐採、税滞納などの問題が相次いでいるのだ。2022年に土地利用規制法が施行されたものの、対象は限定的で売買規制もなく、北海道の対応が遅い・甘いとの指摘も絶えない。一方で実業家の堀江貴文氏はSNSで、「日本人がろくに投資もしてこなかったニセコエリアとかが外国人の投資で盛り上がってきたら規制をしろとかどんだけ自分勝手なんですか?って話ですよ。だったら何で日本人はこれまで放置してたんですか?二束三文の役に立たないエリアだと思ってたからでしょ?」「日本人ファースト的なムーブの人たちの自分勝手な考えはほんと醜悪」高市早苗政権は外国人による不動産取得の規制など必要な法改正を急ぐ方針だが、はたして世界的に知られる「ニセコブランド」は守っていけるのか。経済事情に詳しいライターの伊藤慶氏が解説するーー。
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目次
ニセコ、不動産の固定資産税の滞納も後を絶たない
外国人による観光地や大都市中心部での不動産の“爆買い”は、土地価格や家賃の上昇を招いている。その代表的なものが北海道・ニセコ地域だ。この地域は倶知安町、ニセコ町、蘭越町の3つの町から構成されるが、2000年代初頭から外資が急増。不動産や宿泊施設、観光関連事業などに外国資本が参入し、スキー場周辺の別荘地なども次々と買われていった。
外国人観光客は激増し、2023年度の外国人宿泊数は統計の残る2006年以降最多の73万8800人(延べ)に上る。ニセコには、世界屈指といわれるパウダースノーを期待するスキーヤーやスノーボーダーが殺到し、北海道の中でも多い降雪量は外国人を楽しませる。
ニセコ地域の開発は、中国など外国資本なしには語れない。不動産市場は購入者の多くは外国人が占め、中国本土や香港、オーストラリア、シンガポールなどからマネーが流入する。特に中国系企業は観光や飲食などの富裕層向けサービスを展開し、宿泊施設の価格帯は上昇。計画されている北海道新幹線の札幌延伸に向けて、外国人にターゲットを絞ったコンドミニアムの宿泊需要も高まる。
だが、その一方で課題となっているのが外資や外国人とのトラブルだ。開発が進められていたニセコの高級リゾートは中国系企業が4月に破産手続きの開始決定を受けた。東京ドーム9個分というニセコ地域最大規模の複合リゾートは、中国国営企業の参入で工事が再開され、2030年代前半に開業予定というが、地元では開発の行方を不安視する声もあがる。
ニセコ地域では、外国人が所有する不動産の固定資産税の滞納も後を絶たない。無許可での森林伐採や土地の転売も問題化しており、大規模プロジェクトの開発や景観破壊などへの懸念は北海道議会でも議論されてきた。
無許可で3.9ヘクタールの森林が伐採、造成された問題
6月24日の北海道議会定例会で、早坂貴敏議員は「倶知安町巽地区において、無許可のまま約3.9ヘクタールの森林が伐採、造成された問題が発覚しました。開発には森林法や景観条例に基づく許可が必要でありましたが、それらの手続きがないまま工事が進められ、自然環境や住民生活への影響も懸念されており、責任のある対応が今後求められております」と指摘。その上で「こうした事態を受け、倶知安町議会では6月19日、羊蹄山の麓・巽地区における違法開発行為に対する厳正な対応と再発防止を求める決議が全会一致で採択されました。決議では、違法行為の厳正な対応とともに、許認可制度の運用強化や監視体制の見直しが求められております」などと、道側に対応を求めた。
これに対し、北海道の鈴木直道知事は「開発行為などへの対応についてでありますが、倶知安町以外でも無届けの森林伐採があったと報じられた事案については、地元市町村から振興局に事前に情報提供があったところであり、市町村への森林法の伐採届出が必要な地域であるものの、伐採規模は0.2ヘクタールと、道の開発許可を要しないものであり、道の水資源保全条例の届出は要しない地域であると認識しております」と説明した。
外国資本による不動産取得や開発を不安視する向き
が、「道では、倶知安町で生じたような事案の防止に向け、開発行為等に関連する法令や条例の制度や手続を整理したホームページを立ち上げ、市町村と改めて共有を図ってまいります。道としては、引き続き市町村と連携し、林地などでの無届け開発案件などについて情報収集とその共有を図ってまいります」と答弁するにとどめた。
ただ、議員にも外国資本による不動産取得や開発を不安視する向きは少なくない。渕上綾子議員は「外国資本による土地の取得について、不安の声が多数寄せられています。外国資本による土地の取得は、GATS協定により制限できない状況ですが、倶知安町での森林伐採開発やニセコのこともあり、適切なディフェンスを講じることが必要です。そこで、信託法を活用して受益権だけを売却し、法令上重大な違反や固定資産税の滞納などがあれば受益権を失い、所有者の元に戻すというような条文を付しておくことができます。信託法の活用についてどのように考えるか伺います」と指摘した。
無届けで開発されることが繰り返されている
また、6月25日の道定例会で、林祐作議員は「今、道民の皆様が長年守り続けてきた大切な財産である北海道の森林、水、そして景観が目の前で踏みにじられているその現実に強い危機感と怒りを覚えております。近年、倶知安町をはじめとする道内各地で外国資本による開発行為が急増し、中には、森林法や条例を無視した無許可開発、さらには、住民への説明もないまま大規模な伐採や建築が進められるという深刻な事態が発生しております。倶知安町では、届出もないまま大規模な伐採が行われた上に、実際に施工された建物は提出された設計図とは全く違うものであったとの報道もありました。是正を求め、設計変更や図面の再提出を促しても事業者は協力的な姿勢を示さず、既に住宅としての建物が完成している状況で、規制の実効性が問われております」などと憤りを隠さなかった。
北海道の貴重な水源地を含む重要な土地が外国資本に売買され、無届けで開発されることが繰り返されていることへの不安の声は尽きない。ただ、北海道の総合政策部長兼地域振興監は「水源地近傍の売買などによる土地取引に関し、事前届出を求める道の条例について広く周知を行うとともに、今般の倶知安町における事案等を踏まえまして、地域の実情に即した土地取引の規制の強化を国に要望するなど、適切に対応してまいります」などと述べるにとどめている。
中国資本の大規模プロジェクトも目立ち、バブルのような好景気
世界的リゾートに成長したニセコエリアは、海外からのマネー流入で地価や人件費の高騰も招いている。国土交通省が発表した2025年の地価公示によれば、ニセコ地域の倶知安町の住宅地は前年比9.7%増の18万1000円。商業地では1平方メートルあたり50万円を超える土地もあった。実に10年前の2倍を超える値だ。
ニセコ町の観光入込客数(2024年4月~2025年3月)は162万4886人(うち北海道外からは91万4305人)に達し、倶知安町には1戸あたり5億円を超える高級コンドミニアムや別荘が並ぶ。中国資本の大規模プロジェクトも目立ち、バブルのような好景気を見せているのだ。その結果、飲食代も高くなり、働く人の時給も2000円を超える水準に高騰している。
2022年に土地利用規制法が施行されたものの、安全保障上重要な土地の利用を調査・規制するというように対象が限定され、制度や運用上の問題が指摘されてきた。
今「第2のニセコ」と呼ばれる地域
政府がこれまで重視してきたのは、世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)の存在だ。この協定によって、日本は外国人の土地取得などへの規制に及び腰となっている。
それを裏付けるように政府は2024年6月、井坂信彦衆院議員が提出した外国人による土地の所有に関する質問主意書に対し、このような答弁書を決定している。
「外国人による土地などの取得の規制については、例えば、2020年11月9日の第1回国土利用の実態把握等に関する有識者会議において、『外国資本等の定義は難しく、仮に、外国資本などだけを対象にすると、いわゆるダミー会社等を捕捉できないおそれもある』という意見が示されており、2020年12月24日に同会議で取りまとめられた『国土利用の実態把握等のための新たな法制度の在り方について』においても、『新しい立法措置を講ずる場合には、内外無差別の原則を前提とすべきである』とされているところ、これらの意見なども踏まえ、慎重に検討する必要があると考えている」
世界的に知られる国際リゾート地となったのは、外資・外国人の要因だった面はあるものの、これまで触れてきた様々なトラブルや問題は看過できないとの懸念が渦巻く。北海道・富良野や長野県の白馬村・野沢温泉村などは「第2のニセコ」といわれ、地価の爆上がりや外国人観光客の殺到がみられている。今年、白馬村が定住者を対象に実施した意識調査によれば、土地利用や開発への規制を「強めるべき」との回答が6割近くに達しているという。
10月に新内閣を発足した高市早苗首相は、外国人による不動産取引について国内法の見直しを視野に入れて検討を進めているが、国土の持続可能な開発を目指していく上で「ニセコ観光圏」の現状を放置するわけにはいかないはずだ。単なる外資や外国人の「排除」ではなく、地元とより良い形で「共生」できるような仕組みを国家として整えられるかが問われている。