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高市政権の経済政策は結局、何を狙ったものなのか…高市首相に潜む大きなリスク

(c) AdobeStock

 11月2日にJNNが発表した世論調査で、高市内閣の支持率が82.0%に上ったという。素晴らしい支持率だが、今後、この支持率が続くかどうかは、高市政権の政策・言動次第だろう。あらためて、高市首相は何をしたいと考えているのか。作家の伊藤慶氏が綴るーー。

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目次

 結局、高市政権の経済政策は何を狙っているのか

 高市首相はどのような経済政策で日本を再興していこうとしているのか。まずは、2025年10月4日の自民党総裁選での主張を見ていこう。

高市氏は「日本の底力」で成長の未来を切り拓くことをアピールし、「危機管理投資」と「成長投資」を軸とした政策を発表した。これは経済再生・安全保障強化・社会保障の拡充といったものを三位一体で進めていくものと言える。

 首相の推進する「サナエノミクス」は、安倍晋三政権時代のアベノミクス(財政出動、金融緩和、成長戦略)を基調としつつ、インフレ下の積極財政と投資を特徴とするものだ。高市氏は「責任ある積極財政」を掲げ、日本経済の再生を目指している。

 高市氏の「責任ある積極財政」の中身を見ると、ガソリン税の暫定税率廃止や給付付き税額控除の導入、さらに国民民主党がこだわる「103万円壁」見直しといったものを実現して家計支援を強化し、さらに租税特別措置の見直しによって税収増を図ることが軸になっている。無秩序な財政出動との区別をつけるため、政府債務残高の対GDP比の引き下げを目標としている点も忘れてはならない。

 次に「危機管理投資」は、食料・エネルギー・健康医療を「安全保障」の観点から捉え、強化していくものだ。農業の構造転換や国産資源開発、電力供給力の向上を図りつつ、水害・土砂災害防止、耐震化などを進める。そして、「成長投資」はAIや半導体、量子コンピュータ、バイオなどの先端分野に官民連携で投資し、スタートアップ支援を強化してイノベーションを促進する。

 高市首相の経済政策は、雇用創出や国民の所得増を通じて税収増を狙い、経済成長を優先する点が特徴と言える。

 ただ、サナエノミクスには懸念点もある。それは、自らが継承者となる「アベノミクス」との相違点にある。まず、安倍政権時代のアベノミクスは「デフレ脱却」を目的としていた。だが、高市首相の「サナエノミクス」はインフレ・物価高対策を前提としている。経済環境がそもそも異なるのに似たような手法は通用するのかという点である。

 安倍政権は、日本銀行の黒田東彦総裁(当時)による大規模金融緩和策と歩調を合わせながら財政政策を調整してきた。2012年末の政権奪還前後から日経平均株価を急上昇させ、円安を事実上誘導することで輸出企業は大きな恩恵を得られた。「2年で2%の物価上昇」という目標は達成不十分だったが、多くの経済指標は好転していった。

 だが、高市首相が誕生した今は日本でも物価上昇が続いている。アベノミクスがデフレ下で一定の効果を生んだからといって、物価高騰が国民生活を直撃している中でサナエノミクスが発動されれば、円安・物価上昇の悪循環を招くリスクがあるとの見方は根強い。

 積極財政がインフレ期待を高め、輸入物価の上昇を誘発していけばインフレを加速させる恐れがある。さらに高市首相は国債の増発も容認する発言をしてきた。財政規律が緩みから金利上昇やコストプッシュ型インフレが生じる懸念も尽きない。金利が上昇すれば住宅ローンなどを抱える人々にとっては大打撃だ。日本版「トラス・ショック」の到来を予想する経済アナリストも存在している。

 たしかにサナエノミクスは、供給力の強化を通じた経済再生を実現する可能性はあるものの、インフレリスクへの対応と財政規律を守ることをないがしろにすれば、その失敗のツケは国民に訪れる恐れもある。

高市首相の「リスク」

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