「鷺沼よりマシ」“田園都市線嫌い”息子が選んだ茨城の新興住宅地とイオンのおせち…窓際三等兵・連載タワマン文学「TOKYO探訪」守谷

明けましておめでとうございます。タレントのマツコが「田園都市線が嫌い」とテレビで発言して以降、ネットでも田園都市線をディスる記事が相次いでいますが、窓際三等兵先生も勿論嫌いです。連載「TOKYO探訪」第7話は、田園都市線から茨城・守谷に逃げた息子の話です。なぜ、桐蔭→東大→三菱UFJのよくデキた息子は、茨城に居を構えたのか……。お正月に読むとほっこり。イオンのおせちが食べたくなりますーー。
「僕の人生は母さんのものじゃない!」あざみ野から守谷へ逃げた息子
「僕の人生は母さんのものじゃないから。悪いけど、少し黙ってくれないかな」。良かれと思って贈ったアドバイスは、最悪な形で返ってきた。四谷大塚から桐蔭学園、そして東京大学。手塩にかけて育ててきた最愛の息子が住むと決めたのは、私たち夫婦の住むあざみ野から遠く離れた、茨城県の守谷だった。
「子育ては環境が大事だから。孝之の頃と違って今はSAPIXが人気らしいから、校舎に近いマンションを買うと良いわよ」。1年前、お腹が膨らんだ嫁を連れた息子への助言は、親切心からだった。たまプラでも宮前平でも用賀でも、田園都市線沿いなら母さんが手伝いに行けるから。そんなことも話した気がする。
母親の愛情、それは子供が何歳になっても変わらない。嫁の美幸さんは地方出身だし、共働きを続けるならいくらでも頼って欲しかった。しかし、回答はこちらの意に反したものだった。「話し合ったんですけど、孝之さんも私もフルリモートだし、子育ては郊外で伸び伸びしたいなって」と目配せをする2人。
郊外で伸び伸びなんて、子育てはあなた達が思うような簡単なものじゃないわよ。受験はどうするつもり?公立の学校がどれだけ荒れてるか知らないの?つくばエクスプレスだなんて。東急の方が絶対に良いに決まってるじゃない――。私が興奮すれば興奮するほど、孝之の目の光は静かに温度を失っていった。