「彼の指先を見ただろうか」闇落ちした羽生結弦の背徳の美しさ… RE_PRAY『鶏と蛇と豚』氷の上をぬめる者

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漆黒の衣装をまとった羽生結弦は、闇に落ちていた
場内に流れる般若心経。
椎名林檎『鶏と蛇と豚』だ。
羽生結弦は常に大衆を驚かせる。それは意図的でもあり、おそらく意図せずとも、である。そして『RE_PRAY』は共感性羞恥を呼び起こす。その芸術性ゆえに、私たちはどこか心地よくも身悶えするような羽生結弦の「意図」に嵌められる。
漆黒の衣装をまとった羽生結弦は闇に落ちていた。
ゲームで「生きる」ことを選択したはずの羽生結弦という存在は、同時に闇も受け入れたというのか。白鳥のオデットに、黒鳥のオディールがいるように。
プリマ・バレリーナは白鳥と黒鳥の両方を踊らなければならない。『白鳥の湖』は光と闇、その対照的な演技を技術的にも、精神的にも身に着けなければ踊れない。芸術であるからには、常にこうした光と闇という「普遍」を昇華した形容で表現しなければならない。