「フィギアスケートやってます、羽生結弦と申します」…能登、彼は素直な心で、真摯にみんなの輪に入る『羽生結弦 伝えたい思い」

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被災、他人事ではありません
「みんな忘れているのでしょう。とくに都会の人たちはみんな忘れている。そう思ってしまいます」
能登、旧知の80代女性は電話口でこう語った。彼女は七尾の人なので能登と言っても輪島や珠洲に比べれば、被害は少ない地域だった。
被害は少ない――それでも七尾市は全壊、半壊、一部破損あわせて1万4484棟、とくに津波では1万3000棟余りの家屋が被害を受けた。死者も出ている。
「七尾は断水とか停電の被害は少なかったけど、それでも同じ能登の人ですからね。輪島や珠洲の人たちの被災、他人事ではありません」
身近に知った者がいると、こうした声は自分の身近に届く。あの東日本大震災も、私は妹が岩手に嫁いでいたからこそ身ごもったまま車中生活を送った話など届く。また私の妻は兵庫県西宮市出身、10代の時分に阪神・淡路大震災で被災している。友人の家が失われたり、亡くなったりもしている。こうした話もまた、身内であるなら我が事として捉えることも容易だろう。私の父以外のすべてが死んだ長崎の原爆もしかり。
自分のできることを多くの人はしない
しかしそうでない人が大多数、あることは確かだ。とくに震災のような、ある意味局地的な被害となると「その場とその関係者」に限られてしまうことが多いこともまた、確かだ。