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「右眼球が眼窩から外れて露出」…恐怖のクマ被害が日本列島で増加中に「日当8500円」に猟師たちも怒り爆発!いくらなんでも安すぎる

 全国的にクマによる人的被害が近年増加している。餌が“凶作”ということもあり、人里に下りて来てしまうことが原因の一つに挙げられる。農林水産省によると、クマによる農作物の被害は年約5億円にも上る。2024年4月には「指定管理鳥獣」に追加され、国を挙げての対策も進行中だ。分岐点を迎えているクマ対策の現状と課題を、作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏が解説する――。

目次

2023年、クマによる人身被害は過去最高を記録

 2024年中の北海道内でのクマの目撃件数は7月16日午後4時現在、「1477件」となった。6月は1か月間で913件で令和最多となり、7月も北海道内全域で目撃が相次ぎ285件となっている、と北海道ニュースUHB(7月17日)が伝えている。また、環境省によれば、2023年度に報告されたクマによる人身被害は過去最多の219人で、死者は6人。今年度も4月から7月2日で人身被害34人、死者2人が出てしまっている。

 クマに襲われると、その場で殺されなくても危険な後遺症が残るようだ。日本人によって報告された『Prompt Procedures Have a Great Impact on the Consequences of Asiatic Black Bear Mauling』(2017年)という英語の医学論文にはこんなことが報告されている。同論文は<2013年5月から2015年9月まで、日本の3次医療機関である会津中央病院の救急・救 命センターにおいて後方視的研究を行った。この期間にツキノワグマによる傷害患者14例(男性12例、女性2例)に遭遇した>という。そして、下記4つの被害状況が報告されている。

クマの攻撃は命は落とさずとも重篤な後遺症が残る

CASE1
 5月中旬のある朝9時ごろ、77歳の女性が夫と一緒に山菜採りをしていたところ、ツキノワグマに襲われました。クマは夫には怪我を負わせずに立ち去りました。夫は彼女を車で病院に連れてきました。彼女は頭皮、顔、左耳、右太ももに裂傷を負い、右腕は変形していました。診察を行い、血液検査、生化学検査、X線検査を実施しました。X線では右手首の橈骨遠位端、尺骨茎状突起、第三中手骨の骨折が確認されました。

CASE2
 5月末のある日の午前7時、71歳の男性が山菜を採りに行った森林でツキノワグマに襲われました。彼は頭皮、顔、両手に裂傷を負いました。地元の消防署が救急車を呼びました。緊急医師による救急車内での診察時には、表在側頭動脈の枝からの出血により出血性ショックを起こしており、輸液蘇生と止血処置が必要でした。

頭皮、頭部、両前腕に裂傷を負い、右眼球が眼窩から外れて露出

CASE3
 8月初めのある日の午前8時ごろ、81歳の男性が作物畑に座っていたところ、ツキノワグマに襲われました。救急車が呼ばれました。彼は頭皮、頭部、両前腕に裂傷を負い、右眼球が眼窩から外れて露出していました。救急車内で輸液蘇生が開始されました。病院到着後、全身麻酔下で緊急手術が行われ、傷の一次縫合が実施されました。術後、感染症の合併症はありませんでしたが、視力が著しく低下し、まぶたが癒着していました。

CASE4
 8月末のある日の午後2時ごろ、64歳の男性が友人と一緒に山で山菜採りをしていたところ、ツキノワグマに襲われました。救急車が呼ばれました。彼の顔、左太もも、右上腕に裂傷があり、右鼻涙管も損傷していました。また、右上腕には裂傷に伴う剥離骨折がありました。全身麻酔下での洗浄とデブリードマン(壊死組織の除去)後に、傷の探索と修復、骨の損傷および鼻涙管の損傷の管理が行われました。彼は合併症なく16日目に退院しました。

クマは人間の顔面を襲うことが多い

 どの例も悲惨な攻撃を受けているが、ツキノワグマは通常、自己防衛のために人を襲う。この4つのケースもそうだが、クマは人間の顔面を襲うことが多い。<クマによる一般的な攻撃手段は、被害者の頭部や顔面部位を平手打ちすることであり、頭蓋骨や顔面骨の骨折、頭蓋外・頭蓋内出血、難聴、 血液の誤嚥による呼吸閉塞、顔面の深い裂傷を引き起こす>のだという。もし、こうした被害者がいたら、頭蓋骨が骨折をしていないか、よく確かめた方がいいということになる。また、クマから攻撃を受けた場合、打撃への処置だけではなく、感染にも注意した方がいいようである。<野生動物による咬傷は、傷口が様々な病原体に汚染されている可能性があるため、局所感染を引き起 こす可能性がある>と指摘されている。

<クマによる傷害は通常致命傷には至りませんが、クマと人間の遭遇は遠隔地で起こることが多く、その結果、通報、救助、適切なケアにかなりの遅れが生じます。人里離れた場所で発生した場合、致死的な失血死が起こることもあるため、傷口からの止血、輸液による蘇生、気道管理など、これらの傷害の管理は早期の積極的な取り組みが命を救う可能性があるため、遭遇現場そのもので開始すべきです。救命救急センターにいる救急医が早期に適切な処置を行うことができるため、患者を救命救急センターに搬送することは非常に有益です>

「ヒグマと対峙して日当8500円」という金額に驚き

 兎にも角にも、クマに襲われたら一刻も早く救急車を呼べということに尽きよう。

 こうしたクマによる死亡者がでてくる背景には、日本の人口の高齢化と減少、特に地方でその傾向が顕著になっていることから、クマの人間の生息地域への活動が増えていることがあるようだ。

 襲ってくるクマを排除するには、銃を手にしたハンターの協力が欠かせない。しかし、基礎自治体は、ハンターに支払えるお金が足りないようだ。

<北海道空知地方の奈井江町の猟友会がクマが出没した際の出動を辞退した問題で、町は猟友会奈井江部会への出動の依頼を断念しました。/この問題はクマが出没した際に出動したハンターに町から支払われる報酬額などを巡り、地元の猟友会が出動を辞退したものです。/ これまでに町が提示した額は日当が8500円、発砲した場合は1万300円でした。/猟友会側は危険な業務であるにもかかわらず額が低すぎるなどとして、5月18日付でハンターの出動を辞退するとの文書を三本英司奈井江町長に宛てに提出していました>(北海道ニュースHUB、6月11日)

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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