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人命優先でクマ駆除したら猛烈な抗議する日本の末路…「クマ除けスプレイ」だけで立ち向かえという警察は誰の味方なのか

 2024年11月30日、秋田県秋田市のスーパーに侵入したクマがわなにかかった後に麻酔で眠らされ、その後駆除された。しかしこれが報じられると、市などに「人間の都合で殺すな」「山に返すべき」といった100件を超える抗議の声が寄せられたことが波紋を呼んだ。環境省によると、クマの被害を受けた人は昨年度、全国で219人と過去最悪で、23年12月の被害の67%は市街地で発生したという。それゆえ銃を扱うハンターの存在も重要になってくるのだが、市街地や住宅地で猟銃を使用することは、危険性が高いことから鳥獣保護管理法で禁止されているという。そんな中でクマによる農作物への被害は年5億円とされている。作家で経済誌プレジデントの元編集長の小倉健一氏が解説するーー。

目次

人身被害は、統計史上過去最多の198件

 北海道砂川市で2018年8月、市の要請に応じてヒグマを駆除した猟友会砂川支部長の池上治男さん(71)が、銃所持許可を取り消された問題は、警察の対応に重大な疑問を投げかけている。池上さんは市職員と警察官の立ち会いのもと、民家近くに出没したヒグマを適切に射殺したにもかかわらず、後に「建物に向けて発砲した」との理由で所持許可を取り消された。しかし、現場には高さ8メートルの土手があり、弾丸が人や建物に当たる危険性は低かった。さらに、検察はこの件を不起訴処分としており、違法性は認められていない。それにもかかわらず、北海道公安委員会は銃の所持許可を取り消し、銃を押収し続けている。この対応により、ハンターたちは警察への不信感を募らせ、駆除活動を控えるようになってしまった。

 凶暴なクマとの遭遇は、人命や財産に重大なリスクをもたらすだけでなく、クマ自身の生存にも影響を与える深刻な問題である。

 2023年のクマ類による人身被害は、統計史上過去最多の198件だ。2024年度の人身被害も、2023年とほぼ同じようなペースで増えている。近年特に注目されているのが「アーバンベア」だ。集落や家のすぐ裏の森で日常的に暮らしていて、山奥にいるクマよりは人間に対する警戒心が低いクマのことを指す。住民たちはクマに襲われる恐怖と隣り合わせの現実なのである。

 こうしたリスクに対応するため、熊スプレーと銃器のどちらを選ぶべきかという議論がしばしば行われる。今回は「クマ抑止のための銃器の有効性」(2012年、※1)と「クマ除けスプレーの有効性」(2008年、※2)の二つの研究を比較し、クマ除けスプレーだけでは心許ない現実をお伝えしたい。

 クマ除けスプレーの有効性はどうなのか。この研究では、1985年から2006年にかけてアラスカ州で記録された83件のスプレー使用事例を分析している。その結果、全体で92%の成功率が確認され、ヒグマに対する成功率は92%、クロクマは90%、ホッキョクグマは100%という高い効果を示した。

スプレー使用者の98%が負傷を回避

 また、スプレー使用者の98%が負傷を回避しており、負傷した3名も軽傷で済んだことが注目に値する。スプレーの特長として、非致死性であることが挙げられる。クマを殺さずに攻撃や不要な行動を停止させるため、環境保護の観点からも優れている。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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