『水ダウ』放送作家・大井洋一「今すごいと思うタレント」を語る…『M-1グランプリ2024』の注目2コンビも発表

『SMAP×SMAP』『笑っていいとも!』『はねるのトびら』といった大人気番組から、『水曜日のダウンタウン』『BAZOOKA!!!』など、エッジの効いた番組作りにも携わってきた放送作家・大井洋一氏。この道27年を数える人気作家が考える「売れるタレントの条件」、そして「今後売れるタレント」とは。3回戦から準決勝までの審査員を担当してきたという『M-1グランプリ2024』(22日放送)で注目しているコンビも合わせて挙げてもらった。みんかぶプレミアム特集「オールドメディア vs SNS」第1回。
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売れていく人たちはみんな「変」だ!
売れていく人、言い方は悪いですけどみんな「変」だと思うんですよね。ノウハウを活かしていないというか、「そんなことやってても売れるわけないじゃん」って思うようなことを、ずっと突き詰めている気がします。今年、芸人さんの中で言えば、永野さんが再ブレイクしたと思っているんですけど、あの人50歳を超えても、まだ何かに怒っているんですよね。
普通、その年齢になると落ち着いてくるじゃないですか。更年期も始まって、いろんなことに活力が落ちていく中、ずっと怒りは収まらない(笑)。令和ロマンの(高比良)くるまくんも、お笑いに関する分析を気持ち悪いレベルでひたすらメモに書いてましたよね。とことん突き抜けているし、そんな人に見てる方も惹きつけられると思うんですよね。
たまに若手芸人のネタ見せに呼ばれてアドバイスするんですけど、僕は一応「これこれこうしたほうが面白くなるのでは」とは言うんです。ただ、それを素直に聞いてほしくない気持ちもある。その通りにやったって分かりやすくはなるけど面白くなるわけではないですから。「うるせえな」と思って、自分の信じた笑いをやる芸人としては魅力あるよなとは思うんですよね。
スターは素人と喋らないで欲しい
テレビ業界にいると、売れているどころではなく、「スター」クラスの人にニアミスすることがあります。僕が作家で関わっていた『SMAP×SMAP』のSMAP、ビートたけしさんや矢沢永吉さんなんかが該当するかと思います。そういう人たちの共通項として思うのが「ミステリアスであること」。いま大物芸能人もSNSとかインスタライブをやって、一般の人と交流を図ったりしていますが、僕からしたら一般の人とは喋らないでほしい、っていうのが本音です。
ただ今のこのメディア構造では、スターと呼ばれる人はちょっと出にくいのかもしれないですよね。ソーシャルメディアで、ユーザーにワッショイワッショイと応援されて大きくなるのが今のスタンダードじゃないですか。どこで生まれてどんな育ち方をして、いまどんな生活をしていて……という個人情報もだいたい丸裸になっています。
“世間の声が届かない存在”にはいつでもワクワクを覚える
テレビが娯楽の頂点だという雰囲気の中で育ってきた世代からすると、テレビの向こう側にいる人たちは別世界の住人という認識があって、僕自身も“下々の者”という感覚でしたね。だからパーソナルな情報なんて知ろうとも思わなかったし、「〇〇ってワキガらしいよ」みたいな、どこが情報源かわからないような噂でワクワクしてました。
そんな噂が出るくらい“世間の声が届かない存在”って、やっぱり興味深い対象なんですよね。「矢沢永吉さんはライブ終わりに速攻でガウンを着て車で帰る」っていう都市伝説が、何年も経ってウソじゃなかったとテレビで答え合わせできたとき、「ウオー!あれ本当だったんだ」って感動しましたもん(笑)。
今って、不倫したり誰か殴って怪我させちゃったりすると、SNSの反応も大きくなって必要以上に厳しい制裁を受けなきゃいけない風潮があるじゃないですか。個人的にはそれがすごく嫌で、「それはそれとして」で一定期間経ったら帰ってくるシステムになればいいなと思っています。