編集者・箕輪厚介「ライターも活字メディアも淘汰され、限られた編集者だけが残る」ファンに愛される条件

近年AI技術の進歩は目覚ましく、さまざまな分野で人間の仕事を奪う可能性が指摘されており、よく挙げられるのが「ライター」というテキストメディアに関する仕事だ。『多動力』(堀江貴文)、『メモの魔力』(前田裕二)、『お金2.0』(佐藤航陽)など数々のヒット作を連発してきた幻冬舎の敏腕編集者・箕輪厚介氏が、AI時代に死にゆくライター仕事、そしてテキストメディアという存在について語る。みんかぶプレミアム特集「オールドメディア vs SNS」第8回。
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2025年、ライターの仕事はなくなる可能性がある
僕は先日Xで「なかなか立場的に言えんが、ライターさんは消滅でしょうね。。。なにがやりたいか、その問いの立て方に注目が集まる編集者だけ残る。来年ざっとそうなるわ。」とつぶやきました。こう書いたのは「AIがキャズムを超えた」、そう確信したからです。
正直、これまでも「ChatGPTで本が書ける」「ChatGPTにタイトルを考えさせる」と聞いて試したことはあったんですが、「めっちゃ精度低いな……」という感想でした。今後大きく伸びることもないんだろうなと。 ただ、最新の「ChatGPT Pro」に課金して使ってみたところ、進化に驚いたんですよね。
例えば「村上龍さんが、コロナ禍の政府とメディアの情けない対応について鋭く書いたエッセイをください」とプロンプトを投げたら、よほど普段から龍さんの文章を見ている人以外なら、わからないレベル。「見城さんが箕輪厚介を褒めている文章を書いてください」で生成された文章を見た見城さんも「これ俺の文章だ」って驚いてました。なのでAIは、すでに感情が込められたような表現ができるということです。
AIであればコストも時間も圧倒的に抑えられる
これで現実問題、編集者はライターにお願いする必要がなくなってきました。「こんなふうに書いてください」っていう、ある程度の正解があるような文章は全部AIが担えますし、完成までのスピード感も段違いです。書いてもらうまでに5日間かかる文章が、数十秒であっという間に完成するわけです。費用だってライターさんに1本5万円のギャラで、10本で50万でやってもらっていたものを、「ChatGPT Pro」に月3万円課金すればできてしまう。おそらく会社としても「もうChatGPTでやろうよ」っていう経済合理性が働いて、それまでの予算も出なくなっちゃうと思うんですよね。
という理由などから、僕は「来年にはライターの仕事はなくなる」と書きました。すでに企業がリリースを書く場合に、外部に依頼せずChatGPTを使って爆速で仕上げているという事例もあります。ただ、出版業界は旧態依然としていて、いまだにFAXを使っているところも多く、AIをちゃんと使おうとしないため、これまで通りの仕事が残るっていう事態はあり得ますね。遅かれ早かれ代替されていくとは思いますが。
Webメディアの状況も異常…大量の謎広告に「はっきり言って機能してない」
ライターの仕事だけではありません。活字のメディアもすでに「死」に迫っていると思っていて、たとえばWeb記事を見ようと思っても、謎の広告があちこち飛んできて、間違ってクリックさせることを目的にしてもはや読ませてくれない状況。それって異常だと思うんですよ。配信している側もそれに違和感を覚えず思考停止しているわけですから、もはやメディアとして機能していないわけですよね。
一応、僕が「取材を受ける側」のときは、よっぽどわけのわからないメディアじゃない限りは基本断らないようにしているんですけど、ホリエモンとかひろゆきさんみたいに個人の情報発信力がある人は、「出るメリット」っていうものがどんどんなくなっていきますよね。最近、前澤(友作)さんの本を担当したんですけど、「前澤さん、うちのメディアでインタビューさせてください」っていう依頼がめっちゃ来るんですよ。でも大半のところが前澤さんが出るメリットがなくて、自身でツイートした方が余裕で影響力があるんですよね。