河村たかし、驚きの教育改革を提言「高校入試はやめないかん」成績の低さを問い詰められて自死する生徒「1人の子も死なせない日本に」

 日本の未来を担う子どもたち、そして子育て・教育は、国の根幹に関わる重要な課題だ。少子化が加速し、教育現場の疲弊も叫ばれる中、私たちは子どもたちにどのような環境を用意すべきなのか。日本保守党共同代表で、前名古屋市長の河村たかし衆院議員を直撃し、その独自の教育観と子育て支援策について伺った。短期連載全4回の第3回。(聞き手、小倉健一、みんかぶ編集部)

目次

中高生が自死する理由に驚愕

ーー河村さんは、名古屋市長時代から「1人の子も死なせない名古屋」というスローガンを掲げ、子どもの問題に強い関心を持っていらっしゃいましたね。

(河村たかし)

 そうですね。もし私が国のトップなら「1人の子も死なせない日本」を目指しますよ。

ーー「1人の子も死なせない」。非常に強いメッセージですが、残念ながら、日本では子どもの自殺が深刻な問題となっています。文部科学省の調査によると、小中高生の自殺者数は近年増加傾向にあり、2022年には過去最多の514人にのぼりました。この現状をどうご覧になりますか?

(河村たかし)

 本当に悲しいことですわ。名古屋でも、私が市長をやっていた間、残念ながらこの目標は完全には達成できなかった。1ヶ月に1人くらいのペースで、中学生や高校生が自ら命を絶ってしまうという現実がありました。

ーーその原因は、いじめだったのですか?

(河村たかし)

 いじめもあるでしょう。しかし、名古屋で見てきた中で、一番大きな原因となっていたのは、驚くかもしれませんが「成績と進学」なんです。なんと。

ーー成績と進学ですか…? それが直接的な原因になっていると。

(河村たかし)

 そうです。国全体で見ても、年間500人以上の子供たちが亡くなっている。その背景には、やはり成績や進学へのプレッシャーが大きい。考えてみてください。今の日本は、義務教育で学校に行かざるを得ない。そこで否応なく成績をつけられ、進路を選ばされるわけです。

ーー確かに、テストの点数や偏差値で評価されるシステムは根強いですね。

(河村たかし)

 そうでしょう。そこで、もし家庭環境に少しでも問題があったり、親からのプレッシャーが強かったりすると、子供たちはもう逃げ場がなくなってしまう。絶望してしまうんですよ。

河村たかし「高校入試をやめないかん」

ーー日本社会特有の、ある種の息苦しさのようなものが背景にあるのでしょうか。

(河村たかし)

 そう思います。日本は、決められた路線、つまり「お勉強ができて、いい学校に入って、いい会社に入る」というレールに乗っかっている子には優しいかもしれない。でも、そこから少しでも外れたり、つまずいたりすると、途端に厳しくなる。親も周りも「あんたねぇ!」と責め立てるような風潮があるでしょう。それで子供たちは追い詰められて、最悪の場合、自ら命を絶つという選択をしてしまう。これは本当に異常なことですよ。

ーー成績至上主義や画一的な評価システムが、子どもたちを追い詰めている構造的な問題があるということですね。では、河村さんは、この状況を打破するために、具体的にどのような改革が必要だとお考えですか?

(河村たかし)

 まず、高校入試をやめないかんですよ。

ーー高校入試の廃止ですか? それはかなり大胆な提案ですね。

(河村たかし)

 そうかもしれんけど、アメリカなんかは高校入試なんてありませんから。多くの先進国では、高校までが実質的な義務教育のような位置づけになっている。それでいいんですよ。公立高校は地域の子どもたちが普通に進学できるようにする。私立は特色を出して、行きたい人が選べるようにすればいい。

高校入試がないロサンゼルスのスクールカウンセラーは子供をどう指導しているのか

ーー入試がないとなると、学力差などが問題になるという意見も出そうですが。

(河村たかし)

 学力だけで人間を測るからおかしくなるんです。それよりも大事なのは、子供たち一人ひとりの個性や興味を伸ばしてあげることでしょう。以前に、姉妹都市のロサンゼルスに行って教育現場を見てきたんですが、驚きましたよ。まず、学校の先生の役割が違う。日本みたいに教科を教えるだけの先生じゃなくて、「子供の人生を応援する」専門の先生がたくさんいるんです。例えば、高校では人生の選択肢を15種類ぐらい用意して、子供たちに提示するんです。公務員になりたい子、農業に興味がある子、ジャーナリストを目指す子、ドローンを飛ばしたい子、パティシエや料理人になりたい子…本当に様々です。それらの分野について、専門家を招いたり、体験学習を取り入れたりしながら、毎日1時間、じっくり学ぶ時間を設けている。

ーー自分の興味や適性を見つけるための時間ということですね。

(河村たかし)

 そうです。子供たちはそこで「わしは数学は苦手だけど、農業なら面白いかもしれん」とか、「スイーツ作りなら頑張れそうだ」とか、自分なりの道を見つけていくわけです。成績という一つの物差しだけじゃなくて、多様な価値観の中で自分の可能性を探ることができる。ロサンゼルスのスクールカウンセラーが言っとった。「私達は、子供たちに人生を生きるためのオプション、選択肢を作っとるのよ」と。これですよ、教育で一番大事なのは。

日本はチャレンジする人間を育ててこなかった

ーー日本の教育は、どちらかというと選択肢を狭めていく方向にあるのかもしれません。

(河村たかし)

 そうでしょう。受験勉強に偏りすぎて、内申点がどうだ、偏差値がどうだ、と。そんなことばかり気にさせて、「先生の言うことを聞け」「余計なことは言うな」と教えているようなもんですよ。これでは、子供たちの自由な発想や、新しいことに挑戦しようという気持ちは育ちませんわな。

ーーそうした画一的な教育が、ひいては日本の産業の活力低下にも繋がっているのではないか、というご指摘ですね。

(河村たかし)

 そう思いますよ。さっきも言ったけど、NEC、富士通、日立…かつて世界の半導体の半分を作っていた日本の電機メーカーが、今どうなっとるか。台湾の企業に技術で追い抜かれ、存在感が薄れている。自動車産業はトヨタが頑張っとるけど、それだって安泰ではない。なぜこんなことになったか。もちろん理由は一つじゃないでしょうけど、私は教育の問題が大きいと思っとる。チャレンジする人間、新しいものを生み出す人間を育ててこなかったからですわ。

教員ではなく、生徒が一番忙しい

ーー学校現場そのものが抱える問題、例えば教員の多忙化なども指摘されています。名古屋市長時代には、政令指定都市の市長が集まる会議などで、そうした議論はありましたか?

(河村たかし)

 ありましたよ。政令市長会に行くとね、必ず出てくるのが「教員が忙しい」という話ですわ。「教員をもっと増やせ」とか「負担を減らせ」とか、そういう要望ばっかり。確かに先生方も大変でしょう。努力されているのは分かります。でもね、私はその会議でいつも言っとったんですよ。「教員も忙しいかもしれんけど、もっと忙しい人たちがいるじゃないか」と。

ーーもっと忙しい人たち?

(河村たかし)

 生徒。

ーー子どもたち自身が、一番忙しい、と。

(河村たかし)

 そうでしょう?考えてみてください。今の子供たちは、昼間は学校で勉強して、夜は塾に行って、また勉強ですよ。2つも学校に行っとるようなもんじゃないですか、これ。それで家に帰ってきたら、今度はお母さんに「学校で何番だったの?」とか「勉強しなさい!」とか、わーわー言われるわけでしょう。成績のことばっかり聞かれて。そんな毎日で、一体いつ「社会をどうしよう」とか「将来何をしよう」とか、ゆっくり考える時間があるんですか。そんな余裕、ありゃせんがね。教員の負担軽減ももちろん大事ですけど、それ以上に子供たちの負担をどう減らして、もっと自由に、のびのびと学べる環境を作るか、という視点が抜け落ちとる。

ーーまずは子供たちの視点に立つべきだと。

(河村たかし)

 当たり前じゃないですか。彼らが主役なんですから。

ーーその観点から、学校での席次、つまり成績順位をつけることについても、河村さんは疑問を呈されていましたね。

(河村たかし)

 名古屋市長の時にやめさせようとしました。教育委員会に聞いたら「いや、全部の学校でつけてるわけじゃありません」とか言うんだけど、校長先生たちを集めて話を聞いたら、やっぱりつけとるわけですよ。彼らが言うにはね、「いや、内申点のためです」と。「高校入試で選別するために必要なんです」と。さらに言われたのは「市長、そんなこと言うと、父兄からめちゃくちゃ嫌われますよ」と。

ーー親が順位付けを求めている、と?

(河村たかし)

 そういうことらしいですわ。学校の校長先生たちがそう言っとった。生徒自身も、席次をつけてほしいと思っている子がいる、と。あきれ果てましたよ、本当に。

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