「そんな方言知らん」「ねぇ、バカなの?」宮崎県民も激怒!辞任・江藤農水相のヤバすぎる言い訳に国民ウンザリ…講演会参加者「ありゃまずいよ」

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 コメ価格が高騰し、国民の生活を圧迫している。そんな中で、農水大臣だった江藤拓議員がとある発言で炎上し、辞任に追い込まれた。佐賀市で開かれた講演会で江藤氏は「私もコメは買ったことはありません、正直言って。支援者の方々がたくさんコメをくださるので。まさに売るほどあります。私の家の食品庫には」と述べたのだ。これにはネットも敏感に反応したが、江藤議員が「言い訳はしたくないのですが、宮崎ではたくさんいただくと“売るほどある” というふうによく言うんですよ。ですから宮崎弁的な言い方でもあった」と弁明したことで火に油を注いだ。SNSでは「宮崎のせいにすんなって!! 宮崎のことも宮崎弁のこともバカにしてるだろ!」「ねぇ、バカなの?」といった批判の声があがった。ルポ作家の日野百草氏が講演会の参加者らを取材したーー。

目次

講演に参加した自民党員「会場の空気が変わりました」

 放言に次ぐ放言の末の辞任、事実上の更迭だった。

「会場の空気が変わりました。居心地悪いというか、ため息をついているように見えた人もいました」

 九州の自民党員は当時の会場の空気について電話口でこう語る。

「またか、ですよ。ところどころ笑いも起こりましたが、これまでの件もあるので空笑いな感じでしたね」

 5月18日、佐賀市で開かれた自由民主党佐賀県支部連合会「佐賀政経セミナー」における江藤拓農林水産大臣(自民党・宮崎2区)の講演とその発言が、またも自民党を揺るがした。※肩書は講演時点のもの。

「またも」というのは江藤議員、4月22日の会見でもこのような発言で炎上したからである。

「(コメの品薄について)お金さえ出しさえすれば手に入るということをですね、日本人が信じ過ぎたがゆえにですね、私は食料自給率が低過ぎたという、私は側面があると思っています」

「(コメの価格について)なかなか国民のご期待に応えられない。備蓄米を出してもですね、店頭価格が下がらないということについては、責任を重く感じておりますし、申し訳ないと私自身もですね、思っておりますよ」

「(コメの輸入について)日本の米の国内生産がですね、大幅に減少してしまうということがですね、国益なのかということはですね、国民全体として考えていただきたい」

江藤農水大臣は放言をやめなかった

 この時点でコメの値段が15週連続の値上がり、備蓄米の放出も効果なく全国1,000店のスーパーマーケットにおける平均価格は5キロ4217円(4月21日当時)。そうした事態にも関わらず当の農水大臣がこれ、保守だ、革新だ、右だ左だは関係なく大臣としての自覚の問題に非難の声が殺到した。というか、ずっと続いて今日に至る。

 しかし江藤農水大臣は放言をやめなかった。本人には放言のつもりはなかったのだろうが、結果として主義主張関係なく「辞めろ」の声ばかりとなり辞表提出という「事実上の更迭」に追い込まれた。

 冒頭の佐賀のセミナーで江藤農水大臣(当時)はこう述べた。本稿、すべて会見および会場における彼の発言を書き出すため少し長くなることをお許しいただきたい。

やってもやってもケチをつけられる!

「農林はですね、やれどもやれども叱られるというですね、やってもやってもケチをつけられる! 必死でやってるんですが、怒られてばっかりですよ」

「国民の中にはですね、いわゆるその、玄米で渡されても精米できない、というお話がありますが、玄米ご飯、おいしいですよ? 身体にいいですよ? 精米された米よりも実は栄養価が高い。そして私の田舎なんかもたぶん、佐賀もそうだと思いますけど町中に行けばコイン精米機いっぱいあるじゃないですか。100円チャリンと入れてね」

「私もあの、米は買ったことありません。正直言って。支援者の方々から、たくさん米をですよ米を貰うってのも。わざとじゃないでしょうけといろんなものが混じってます。いろんなものが。ですけとうちの嫁がですね、いただいた米を、こう広げてですね、こう黒いやつを、いろいろ虫とか入ってるんですよ。そういうのをいつもあの、家庭内精米をした上で、えー、コイン精米機に持っていくと。いうような対応をいたしております。ですから精米できなければ玄米で売るということも今回は可能にしますので、今回は効果が期待できるんじゃないかと」

 この中で江藤議員の「米は買ったことありません」「支援者の方々から、たくさん米を下さる」「売るほどあります」が4月の発言を上回る大炎上となった。先の九州の自民党員はこう回想する。

講演後、会場で「ありゃまずいよ」「またニュースか」とげんなり

「終わったあと会場の知り合いとも〈ありゃまずいよ〉〈またニュースか〉と話しました。(会場の)みんな同じように思っていたんじゃないかな。農水大臣ですからね」

 筆者は多くのメディアで取り上げられているこれらの発言もそうだが、ケチをつけられるだの、もらったコメは虫が入っているだの、玄米でいいだろ的な言い回しもどうかと思った。もちろん意見は自由だし考え方は人それぞれかもしれないが、この人は日本国の農林水産大臣である。

 一部報道ではこの江藤農水大臣の講演について「よくない」と地元佐賀のJA幹部も苦言を呈した。多くが九州で農林事業に関わる方々だったろう、いくら身内でも許せるものではないという気持ちはよくわかる。

 まして6月の都議選、7月の参議院選挙を控えたこの時期である。その直接の当事者であるはずの自民党・西田昌司参議院議員(京都府選出)が、5月3日に沖縄県で行われた日本会議県本部や自民党県連などによるシンポジウムで「ひめゆり学徒隊」について自論の歴史認識を披露し炎上、当初は「事実を言っている」「撤回はしない」と強気の姿勢だったが身内の自民党内からも非難ごうごうで撤回となった。

「悪い意味で悪目立ちをしている江藤でございます」

 ちなみに江藤議員、佐賀の講演では冒頭、こう切り出している。

「いま懸命に石破内閣支えておりますが、たぶん、石破さんよりも最近、私のほうがメディアでは叩かれているんじゃないかなと、悪い意味で悪目立ちをしている江藤でございます」

 どうしよう。こういう人なんだろうとしか言えない。会場の空気がわかり過ぎて共感性羞恥に悶えてしまいそうだ。

 宮崎のドン、自民党の重鎮にして志帥会二代目会長、建設大臣(中曽根内閣)、運輸大臣(海部内閣)などを歴任した江藤隆美氏の長男として生まれ、成城大学を卒業。のち父の地盤を引き継いだ江藤農水大臣だが自民党王国宮崎で常にトップ当選、しかしその放言癖は豚コレラについて「神さまが悪い」だの、食糧法には書いてないと言い切って書いてあったりだのと「ああいう人」というのは地元宮崎でも多くの有権者の知るところだった。

 地元宮崎の80代男性が電話口でこう語る。

「悪い子じゃないよ。江藤先生(江藤隆美氏)の長男さんだから宮崎ではみんな応援するし、選挙じゃ負け知らずだ。誰がやってもコメ問題は大変だ。あんまりいじめないであげてよ」

それでも江藤「農水大臣」の口は止まらなかった

 しかし今回の江藤農水大臣(当時)の発言、当初の段階では自公内で即更迭に至るような問題とはされていなかったように思う。

 実際、石破茂首相は19日に江藤農水大臣を官邸に呼んだが「コメの価格高騰に対してきちんとした答えを出すということが農水大臣のいまの仕事」と厳重注意と同時に続投を決めたはずだった。

 公明党もまた斉藤鉄夫代表が同19日「誤解を生むような発言は控えるというのが最も大切」と述べた。もっとも、筆者の知る多くの公明党員は「いつまで自民党は足を引っ張るのか」「誤解とかじゃないだろ」「もっと強く言えないのか」とみなご立腹であったが。

 当の江藤氏も「コメは買っている」「ウケ狙い」「撤回というより修正」とした上で「結果を出す」と辞任を否定した。官邸で厳重注意を受けたあとも「引き続き努力をしっかりしろと(石破首相に)言われました」と語るにとどまった。

 それでも、江藤「農水大臣」の口は止まらなかった。

「私、言い訳はしたくはないんですが、この、宮崎はですね、たくさんいただくとですね、売るほどあるっていうふうによく言うんですよ。ですから宮崎弁的な言い方でもあったんです」

そんな方言は「知らん」「聞いたことない」

 筆者は父の一族は長崎で叔妻の両親の一族は鹿児島、そして叔父の一族が宮崎なので旧知の宮崎県の人たちに聞いてみたが、そんな方言は「知らん」「聞いたことない」だった。江藤農水大臣が自分の放言を方言だと言ったことも「迷惑」とも。

 さらに官邸をあとにして家に帰ったあとは自身のこれまでの発言に対して「YouTubeであるとかSNS系をですね、朝、明るくなるまでずっと見ました」とエゴサを語り、そうした批判について「そういうことから目を背けずに、しっかりと見た上で職務に励むべきだと思いました」と語ったが、そのSNSでは国会で居眠りする江藤農水大臣の姿が出回ってしまった。

 こうして20日深夜、江藤農水大臣は更迭の方針となった。そして21日朝に辞表を提出、石破首相に受理された。

普通に賄賂の可能性すらでてきてしまう

 18日の佐賀の講演と一連の問題発言から2日の間に放言と本人も「(ウソだったと言われても)仕方がない」と認めるウソの繰り返し、そもそも売るほどコメを支援者=有権者からもらい続けていたとするなら普通に賄賂の可能性すらでてきてしまう。ウソつきと呼ばれたほうがマシ、ということか。

 江藤氏の後任は小泉進次郎氏となった。それに対して「不安しかない」とする都議会の自民党関係者は「7月の参院選は地獄だろう」とも語る。またそれ以上に「6月の都議選はもっと地獄」とも。7月の参院選ばかりに話が及ぶが6月には都議選がある。コメの高騰と一連の失態、心ない大臣や議員の発言の数々だけでなく当の自民党東京都連でも裏金問題が発覚した。

 もうなにがなにやらむちゃくちゃだが、私たちの命に関わる食糧問題すらこの体たらく、江藤農水大臣だけの問題でなく自民党という組織の金属疲労どころか断末魔、オールド政党の終焉の端緒と言っても言い過ぎではないほどの醜態となった。

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、修士(芸術)、芸術修士(MFA)。文芸論、人物評伝および比較史におけるポップカルチャー、またフィギュアスケートなど舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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