2025年3月期、過去最高売上高へ 100年以上のエンジニアリング力で成長を続ける椿本興業株式会社(8052)

みんかぶ編集室
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 独自の観点で注目企業の価値を分析するMINKABUマトリクス企業分析。

 今回は、創業100年以上の経験と技術を活かして様々な産業現場の課題を解決する技術系商社、椿本興業株式会社(8052)について、2025年3月期3Qベースで分析します。

Key Points

  • 100年以上の経験と高いエンジニアリング力を武器に、幅広い業界の”動かす、伝える、運ぶ”を支える老舗機械商社
  • 2025年3月期の売上高は過去最高の1,160億円を見込んでおり、増収増益基調を維持
  • グローバル展開とデジタル技術の活用を進めることで、さらなる成長が期待される

目次

ツバコーってどんな会社?

 椿本興業(8052)(以下、ツバコー)は100年以上の歴史を持つ、大阪生まれの老舗機械商社です。1916年の創業以来、半導体や自動車、物流、食品など、幅広い業界の”動かす、伝える、運ぶ”を支えてきました。

 ツバコーの特長は、機械商社でありながら、あらゆるものづくりの現場に応じたコーディネートを可能にする、高いエンジニアリング力にあります。

 社内に技術室や施工管理部門といった技術部門があるだけでなく、営業部門においても主任技術者や監理技術者といった国家資格保有者が多く在籍。これによって、エンジニアリングのプロフェッショナル集団として、商品や顧客企業のことを知り尽くした最適な技術提案を実現しています。

 また、産業用チェーンで世界シェア1位の「椿本チェイン」とは創業者同士が兄弟という関係性。ツバコーにおける椿本チェイン商品の取り扱いは3割程度を占めるなど、兄弟企業として100年以上の強い協力・信頼関係を築いています。

世の中のあらゆる”動くもの”を支えるツバコー

 ツバコーの主要事業は「動伝事業」、「設備装置事業」、「産業資材事業」の3事業です。

 売上高のほぼ半分、49.3%(2024年3月期実績)を占めているのが「動伝事業」。駅のホームドアの駆動部や車のエンジン部品など、世の中の “動くもの”に関わる幅広い製品を扱っています。国内外に広がるネットワークと豊富な商品ラインアップを活かし、顧客課題を解決する最適解を提供します。

「設備装置事業」では、工場の設備ラインや物流センターの仕分け装置といった大型産業システムに関するソリューションを提供。専門知識を持ち合わせたスペシャリストが数多く在籍し、豊富な実績と確かなエンジニアリング力で、設計から施工までのトータルサポートを実現します。

 不織布やマイクロファイバーなど時代の最先端素材を扱い、商品開発まで手掛けるのが「産業資材事業」です。液体をいれるスプレーポンプ、マイクロファイバーのカーケア用品、ウェットティッシュやマスク、おむつにつかわれる不織布製品など、生活の身近なところで使われている様々な資材を取り扱っています。

成長分野への挑戦—海外展開とセンシング技術

 さらに、成長事業と位置づけられているのが「海外事業」と「センシング事業」です。

「海外事業」では主要3事業において培った商品力とソリューション力で、顧客企業の海外工場に関するお悩みをワンストップで解決することを目指します。すでにシンガポールやタイ、中国など11拠点を展開。今後はインド進出も視野に、さらなる拡大を図ります。

 動伝事業から派生した「センシング事業」では、工場の製造工程においてこれまで見えなかった検査システムを”見える化”し、品質の向上を実現する画像処理システムを提案。IoTやAI技術を活用し、データの集約・解析を自動化といったシステム構築をサポートすることで、ものづくりの品質向上を支えます。

 ツバコーは、100年以上の歴史を持ちながらも、常に時代の変化に適応しながら成長を続ける企業です。今後はグローバル展開とデジタル技術の活用を進めることで、さらなる成長が期待されます。

4つの独自視点から企業価値をチェック

 次に、2025年3月期3Q決算をベースとした椿本興業の企業価値をチェックしていきましょう。

 チェックする項目は、評判(価値)、実利(業績)、共感(志向)、姿勢(ESG)の4つです。

 各分析の結果はこちら。

  1. 評判価値:Very Good

 2025年2月14日現在の時価総額は425億9,400万円。PERは10.26倍と10倍以上で、PBRも1倍以上の1.06倍を維持しています。また、2024年4月には1株につき3株の株式分割を実施。株式分割を考慮しない場合の実質的な配当金は180円を維持しています。

  1. 実利価値:Very Good

 2025年3月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比6.5%増の増収、営業利益が7.2%増、最終利益が11.3%増と、すべての利益項目で増益。2025年3月期の通期業績予想では、売上高・営業利益ともに過去最高を見込んでいます。

  1. 共感価値:Excellent

 明確な数値目標を設定し、企業の競争力向上と社会貢献を両立する経営方針を示しており、不透明な市場動向の中、持続的な成長に向けた取り組みを進めています。

  1. 姿勢価値:Good

 環境・社会・ガバナンス(ESG)を意識した経営を推進しています。環境面では、気候変動への対応としてTCFD提言への賛同を表明するなど、今後の取り組みに期待が持てます。

それでは各項目について詳しく見ていきましょう。

株式分割を実施 株主還元の向上を目指す

 

 2025年2月14日現在の時価総額は、425億9,400万円と、個人および中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベルにあります。また、所有者別株主数比率では12.1%が外国人であり、海外ファンドからも注目されています。

 PER(株価収益率)は10.26倍と、10倍以上の水準を維持しており、割安感はないものの適正範囲内といえます。

 また、PBR(株価純資産倍率)は1.06倍と1倍を超えており、企業の資産価値に対する市場評価は一定の水準を保っています。

 2024年4月には1株につき3株の株式分割を実施。これにより、表面的には年間配当金が180円から60円に減少したように見えますが、株式分割を考慮しない場合、実質的な配当金は180円を維持しており、安定した株主還元の姿勢がうかがえます。

 また、2024年3月期の配当性向は28.2%から28.9%へと上昇。個人投資家の増加を目的とした株主優待制度の拡充に加え、2024年11月29日には自己株式を45万株取得するなど、資本効率の向上にも努めています。

2025年3月期、売上高・営業利益が過去最高の見通し

 2025年3月期第3四半期の業績は、売上高が前年同期比6.5%増の増収、営業利益が7.2%増、最終利益が11.3%増と、すべての利益項目で増益となりました。地政学的リスクや経済の不透明感がある中でも、受注活動を強化し、豊富な受注残をおおむね納期通りに計上できたことが成長の要因です。

 また、2025年3月期の通期業績予想では、過去最高を更新する売上高1,160億円を見込んでおり、引き続き増収増益基調を維持する見通しです。

 一方、財務面では自己資本比率が前年同期比1.9ポイント低下しましたが、40.5%と健全な水準を維持しています。また、ROEは0.6ポイント減少し10.8%となりましたが、国内企業の平均とされる8~10%を上回っており、引き続き収益性の高さを維持していると評価できます。

高い技術力とトータルサポート力で産業界の未来価値を創造

 椿本興業(8052)は、「社会に貢献すること」を企業理念に掲げ、機械と技術の総合商社として最適な商品を提供することで産業界の未来価値創造を目指しています。

 また、2025年度までを目標とする中期経営計画「ATOM2025」では、ミッションステートメントを「Advanced Technology for Optimum Machinery(最先端の技術で最適な機械をお客様に提供します)」と制定。

 明確な数値目標を設定し、企業の競争力向上と社会貢献を両立する経営方針を示しており、不透明な市場動向の中、持続的な成長に向けた取り組みを進めていると評価できます。

サステナブル経営を推進する明確な企業姿勢

 椿本興業(8052)は、サステナビリティ経営の一環として、環境・社会・ガバナンス(ESG)を意識した経営を推進しています。環境面では、気候変動への対応としてTCFD提言への賛同を表明し、情報開示を進めている点が評価できます。

 社会面では、女性総合職比率を2023年度の6%から2025年度には8%に引き上げる計画を掲げ、また、男性の育休取得率も71%から100%を目標としており、多様性や働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。一方で、管理職の女性比率は0.9%と依然低いものの、人的資本を重要視する経営方針のもと、改善に向けた動きが期待されます。

 ガバナンス面では、社外役員比率が45.5%(5/11名)と一定の独立性を確保しているものの、女性役員比率が9.0%(1/11名)と低いため、さらなる多様性の推進が求められます。総じて、サステナブル経営を推進する企業姿勢が明確であり、今後の取り組みに期待が持てます。

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