「学部、キャンパスよりも結局“大学名”」受験系YouTuber「就職で有利な学部はほぼない」

「文系は法学部が有利らしい」「慶應でもSFCなんて邪道」ー。受験界でこのような言説がはびこる中、チャンネル登録者数60万人越えの受験系YouTuber「wakatte.TV」のびーやま氏は「大学は“大学名”で選べ」とアドバイスを送る。なぜ学部やキャンパスの立地よりも「大学名」が勝るのかについて、びーやま氏が語る。全3回中の3回目。
※本稿はびーやま著『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』(ダイヤモンド社)から抜粋、再構成しています。
第1回:受験系YouTuber「受験勉強を頑張るのは甲子園を目指すのと同じ」学歴は誇ってもいい
第2回:受験系YouTuber「学歴はめちゃくちゃ大事」東大生が「なんだ。早稲田か」と思うのは当たり前の話
目次
「就職に有利な学部」はない!
皆さんはどうやって志望する学部を選んでいますか?
どんな選び方でも構いませんが、「学部」で就職が不利になることはほぼないので安心してください。逆を言えば、一部の職種を除いて学部で就職が有利になることもほぼありません。
文系の場合は、「法学部」「経済学部」「経営学部」あたりが就職に有利とされ、逆に「文学部」や「教育学部」などは不利と考えられています。
理系は文系よりは全体的にマシですが、「工学部系」が就職に有利で、「農学部」や「理工学部(特に数学科)」などは不利と言われています。
これを信じている親御さんも多く、「うちの子どもは就職のことを考えて、法学部に進学させようと思います」というケースを何千件と見てきました。
もう一度言いますが、どの学部かは就職に大きな影響を与えないので、進学したい大学にはなんとしても滑り込みましょう。誤解を恐れずにいえば、学部の優先順位は2番目でいいです。
「いやいや、学部は大事でしょ?」と思ったそこのあなた。いい視点です。たしかに学部は大事です。好きなことを勉強できたほうがいいですし、偏差値の高い学部のほうが地位も高いような気がしますよね。
ただ、就職においては、学部で優劣が決まるのは本当に最終局面で競ったときだけです。しかも、そんな局面はほぼありません。
結局は「なにを勉強してきたか」
そもそもですが、経営学部出身だからといって、有名企業でいきなり活躍できると思いますか?
経営学はあくまで学問であって、現場で使えるかはまた別の話ですし、そもそも社会で働いたこともない大学生が、いきなり「経営の専門家」として活躍できるわけないですよね。このことは、ちゃんとした大人は誰もが理解しています。
ですから学部よりも、皆さんが大学でなにをしてきたか、どんな姿勢で勉強してきたのかのほうが強く問われます。
仮に、早稲田の政治経済学部出身者と早稲田の教育学部出身者で競ることがあったとしても、大学でなにをしてきたかしか見られません。
そのため、就職のことを考えるのであれば「学部」よりも「大学」で選ぶほうが合理的です。
たとえば、早慶とMARCHを比べたときに、「早稲田の教育学部と明治の国際日本学部・政治経済学部だったら就職では明治のほうが上!」といった議論がされることがありますが、早稲田は早稲田ですし、明治は明治です。
偏差値的には明治のほうが上の場合もあるという意見があることに異論はまったくありませんが、残念ながら就活における学歴フィルター上は「早稲田」に軍配が上がります。
そのため、特別学びたい学問があるわけではない場合は学部よりもどの大学かを優先することをおすすめします。
海外の場合だと、大学でなにを専攻し、どの分野の学位を持っているかということは非常に重要です。そのため、特殊な技能を身につけたスペシャリストが人材としては好まれますが、日本の場合はその逆です。
日本企業の多くは、まだまだ新卒一括採用ですので、入社後にジョブローテーションをさせながらゼネラリスト(オールラウンダー人材)に育てていくスタイルが主流です。入社さえしてしまえば、さまざまなことに挑戦できる可能性は高く、まずは入社に必要な学歴を持っていることのほうが大事です。
その「大学」というのはおおむね、世の中の序列通りと考えていただいて構いません。「潰しがきく学部」などというおいしい話は、資格が必要な仕事や一部の特殊な研究職以外は存在しないので注意しましょう。あくまで、潰しがきくのは「大学」です。
辺鄙な場所でも「いいから行け」
大学選びの際に学部問題に加えて、もう1つ議論に上がるのが「キャンパスの場所問題」です。
たとえば僕の母校である早稲田であれば、新宿区にある早稲田キャンパスに通うのか、所沢キャンパスに通うのかはよく話題にあがりますし、慶應でもSFC(湘南藤沢キャンパス)か否かはいまだに議論されていますよね。
MARCHで考えても、東京の多摩エリアにキャンパスを持つ中央や法政、神奈川の相模原キャンパスを持つ青山学院、埼玉の新座にキャンパスを持つ立教など、言い出したらきりがありません。
いわゆる「メインキャンパス以外に進学するかどうか問題」は、常にホットな話題ですが、結論からお伝えすると「いいから行け!」です。
先ほどもお伝えしましたが、よほどやりたいことがない限り、大学は学部よりも「大学名」です。キャンパスも関係ありません。
大学事情に詳しい皆さんは、「慶應のSFC?邪道だよね」と思うかもしれませんが、慶應は慶應です。逆立ちしたって日本にある大抵の大学は学歴では敵いません。仮に慶応のSFCをバカにできる人たちがいるとすれば、それは慶應の他学部にもダブル合格した人たちだけです(とはいえ、心からSFCをバカにするようなことを慶應生からは聞いたことがありませんし、ちゃんとした学生ばかりです)。
ですから、皆さんがいわゆる「Aランクのマイナーキャンパス学部」と「Bランクのメインキャンパス学部」にダブル合格して迷った場合は、個人的にはAランクのほうを選ぶのがおすすめです。
もちろん、「やりたいことを考えたらBランクだ!」というのであれば、それ以上に正解なことはないので、この話は忘れてください。あくまで、悩んだ場合の話です。
「マイナーキャンパス」を推すこれだけの理由
僕がここで言いたいことは、メインキャンパスでないことを理由に受験の候補から外すのはもったいないということです。
基本的にマイナーキャンパスはメインキャンパスに比べて人気は下がりますから、皆さんが合格する確率も上がります。
入ってしまえば、早稲田は早稲田ですし、慶應は慶應です。しかも、キャンパス再編なんていつ起きるかわかりません(特に近年は都心回帰の傾向も強いです)。所沢キャンパスにある学部がいつ早稲田キャンパスに来てもおかしくないのです。
それでもまだ、キャンパスの場所を理由に受けるのをやめますか?
たとえば、青山学院の相模原キャンパス。「青山に憧れがあるから」と見送らなくとも、相模原キャンパスに通いながら青山に遊びに行くことはいくらでもできますよね?
大学名が相模原学院大学に変わるならまだしも、名前は青山学院大学なわけですし、先生や学生のクオリティは変わりません。むしろ上がることすらあります。
なにより、都心のキャンパスよりも郊外のキャンパスのほうが学生街になりやすいですから、いわゆる「大学生らしい生活」はしやすいです。妬みも込めて言いますが、青山に近いエリアで1人暮らしなんて、一体お金がいくらかかるのでしょうか。
ですから、キャンパスの場所で大学を選びすぎるのもやめましょう。メインキャンパスでないからと受験を見送る行為は、たとえるなら、目の前に乗れるはずの電車が来ているのに、わざわざ見逃しているのと同じです。まずは乗りましょう。乗ってから、降りるかどうか決めればいいのです。