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IPOで初値何倍も狙える時代は終わった?fundnoteファンドマネージャー川合直也が語る、これからのIPO戦略と注目銘柄

本稿で紹介している個別銘柄:JRC(6244)、コロンビア・ワークス(146A)、霞ヶ関キャピタル(3498)

「IPOで株価が初値から2倍、3倍に跳ねる──」

 そんな“夢のある話”に心躍らせた経験のある投資家も多いだろう。かつては、上場初日に株価が急騰する“IPO祭り”が、個人投資家の一攫千金を後押しした。

 だが今、IPO市場には大きな地殻変動が起きている。制度改正、審査の厳格化、地合いの悪化──。かつての熱狂は落ち着きを見せ、「短期イベント」ではなく「中長期投資」の対象として見直され始めているのだ。

 今回は、「井村助言ファンド」で話題沸騰のfundnoteのファンドマネージャーであり、国内中小型株・IPOのスペシャリストである川合直也氏に、2025年のIPO市場の現在地と、今なお“化ける可能性”を秘めた注目銘柄を聞いた。(2025年6月11日取材)

連載「fundnote 川合直也の目」

目次

IPO制度は毎年変化、初値バブルの反省が背景に

「IPO市場の制度は、2022年から毎年少しずつ変わってきています」

 そう語る川合氏は、ここ数年でIPOにまつわる“お祭り的”な側面が抑えられてきた背景を説明する。

 2022年には、コロナバブル下において初値騰落率が2倍を超えるような案件が続出し、IPOポップ問題(IPOポップ:IPO直後の株価急騰のこと)として話題になった。日本取引所グループがフェアバリューから乖離した公募価格が付与されている可能性を調査し、東京証券取引所は主幹事ごとの初値騰落率などの実績を公表するようになった。

 2023年には、成行注文の抑制や仮条件の価格レンジ制の導入など、初値形成の透明性・柔軟性を高めるための改善も進んだ。

「初値が高騰しすぎるということは、裏を返せば公募価格が安すぎたということ。企業側からすれば、“もっと高く売れたはず”という不満もあった。だから、制度が見直されてきたのです」と川合氏は語る。

IPO件数は半減、その背景にある地合いと“オルツ問題”

 2025年上半期のIPO市場は、例年と比べて明らかな変化が見られる。

「まず、IPOの件数は明確に減っています。2024年上半期は40件弱ありましたが、2025年は6月末時点で25件ほど。ざっくり言って、ほぼ半減という印象です」

 この背景には、主に2つの要因がある。

 ひとつは、市場全体の地合いの悪化だ。アメリカの大統領選をはじめ、海外の不確実性が高まる中、直近では中国・欧州との関税合戦を巡る報道が相次ぎ、世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まっている。足元の地合いが悪いと、上場しても企業価値を評価されにくく価格が付きにくいといった背景があり、IPOを延期する企業が増えることはよくあることだ。

 そしてもうひとつは、「オルツ問題」である。

 2024年に上場したAIスタートアップ「オルツ社」は、上場後わずか数ヶ月で粉飾決算の疑いが発覚。市場に大きな衝撃を与えた。公募価格で株を購入した投資家が含み損を抱えるだけでなく、東京証券取引所の上場審査そのものに対する信頼も揺らぐ事態となった。

 これを受け、東証は審査体制を全面的に見直し、情報開示の透明性や財務の健全性に対する審査基準が一段と引き上げられることとなった可能性がある。

「IPO件数が減るのは、投資家としてはチャンスが減るという意味で寂しい面もあります。ただその一方で、市場の健全性が高まること自体はポジティブにとらえるべきだと思います」

“初値バブル”の終焉と「企業価値に投資する時代」

 IPOが“短期勝負のイベント”としての魅力を失いつつある中で、個人投資家がどう向き合えばよいのか。

「最近は、初値で2倍になるような銘柄は激減しました。逆に公募割れするケースも珍しくない。でも、それは悪いことではないと思っています」

 初値が落ち着くことで、本質的に優れた企業に冷静に投資できる環境が整ってきている。川合氏は「企業価値に投資する時代」に移りつつあると語る。

「以前は初値が高騰しすぎて買えなかった銘柄も、今なら適正な価格で投資できます。ちゃんと分析して中長期で保有するチャンスが増えているんです」

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この記事の著者
ちょる子

投資歴14年。平成生まれの兼業投資家。2児の母として育児をしながら億り人を達成し、現在の総資産額は2億円。『日経WOMAN』『ダイヤモンドZAI』、『日経マネー』、『日経電子版』、『日経モーニングプラス』など数多くのメディアに出演。(X:https://x.com/kabu_st0ck)

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