「脱炭素」一辺倒は本当に日本の国益なのか…自民党青年局長がメディアのタブーを断罪 世界の“きれいごと”だけでは国は守れない

祖父に中曽根康弘元首相、父に弘文元外務大臣を持つ、自民党の中曽根康隆衆議院議員。誰もが認める政界のサラブレッドだが、その経歴は決して平坦なものではなかったという。
物価高、少子化、安全保障――。課題が山積する日本で、現役世代の代表として何を思い、何を目指すのか。青年局長として自民党という巨大組織を内側から変えようと奔走している同氏に、紆余曲折の半生から日本の未来像まで、たっぷりと語ってもらった。短期連載全4回の第4回。(取材日:6月24日)
目次
地方議会が崩壊の危機に…立候補年齢引き下げは理想論ではなく“現実的な処方箋”だ
――中曽根さんは、立候補年齢引き下げ実現プロジェクトチームの座長も務められています。なぜ今、引き下げが必要なのでしょうか。
立候補年齢を引き下げるべき理由は、大きく3つあります。
第一に、議会にもっと「次の世代の声」を反映させるためです。現状の議会は、残念ながら老壮青のバランスでいうと「老」に圧倒的に偏っています。若い世代の議員が、自分たちの世代が直面するリアルな課題を議会で訴えていくことは、社会全体にとって不可欠です。
第二に、地方における深刻な議員の「なり手不足」を解消するためです。ある試算では、次の2027年の統一地方選挙では、全地方議会の3割以上が定員割れに陥ると言われています。特に地方では、議員のなり手がいないという問題は待ったなしの状況です。問題意識を持った地方の学生や若者が、手を挙げやすい環境を作ることは非常に重要です。
そして第三に、こうした取り組みを通じて、若い世代全体の政治参画意識を高めていく、という狙いがあります。
もちろん、少年法との整合性や、学生が議員になった場合の学業との両立など、クリアすべき課題はたくさんあります。しかし、自民党としても、今回の参院選の公約に、これまでより一歩踏み込んで「引き下げに向けた法整備を進める」と明記しました。これは大きな前進です。
私個人としては、選挙権年齢と同じように、被選挙権年齢も18歳に引き下げるのが理想だと考えています。ただ、まずは2027年の統一地方選に間に合わせることを現実的な目標とするならば、例えば衆議院や地方議会を20歳に引き下げるなど、少年法の議論を一旦切り離して進める方法も考えられます。座長として、党内のコンセンサスを取りまとめ、一日も早い実現を目指していきたいと思っています。
外国に依存してばかりの日本に未来はあるか「脱依存」で真の自立国家に
――最後に、中曽根さんが描く日本の未来像についてお伺いします。もし将来、総理大臣という立場でこの国の舵取りを担うことになったとしたら、どのような国づくりを目指しますか?
私が政治家として常に抱いている問題意識、そして目指す国家像は、一言でいえば「脱依存」です。日本という国は、あまりにも多くのものを他国に依存しすぎています。
特に、国家の存立に不可欠な「防衛」「エネルギー」「食料」、この3つの分野における海外への依存度が極めて高い。平時であれば、それでも何とかなるかもしれません。しかし、ひとたび有事となれば、今の日本に、国民の命と暮らしを守り抜くだけの力があるのか。この3分野において、他国に頼らず、自らの足でしっかりと立てる国。それが、私の目指す日本の姿です。
「脱炭素」一辺倒は本当に日本の国益か? 世界の“きれいごと”だけでは国は守れない
――「エネルギーの脱依存」は、具体的にどう実現していくのでしょうか。昨今の世界的な脱炭素の流れとの両立も課題です。
もちろん、SDGsや再生可能エネルギーの普及といった世界の潮流を否定するものではありません。しかし、それが本当に日本の国益に資するのか、という視点を冷静に持つべきです。日本には、日本に合った電源構成、ベストミックスがあります。
四方を海に囲まれた海洋国家である日本は、エネルギー自給率がわずか13%と言われています。エネルギーの大半を、海上輸送路(シーレーン)を通った輸入に頼っているわけです。もしホルムズ海峡が封鎖されるような事態になれば、日本経済は壊滅的な打撃を受けます。
有事が起きてシーレーンが途絶しても、国民生活や社会活動を維持できるだけの電力を、いかに国内で確保するか。これは国家の非常にクリティカルな課題です。そのためには、原子力も有効に活用していくべきでしょう。東日本大震災以降、エネルギー基本計画には「原発への依存度を可能な限り減らす」という文言が長らく入っていましたが、それが今回ようやく見直されました。
安価で安定的な電力を、いついかなる時も供給する。それが国家の責務です。そのためには、化石燃料をよりクリーンに、効率的に使う技術、例えばCCS(二酸化炭素回収・貯留技術)などを開発することも重要です。また、日本の広大な排他的経済水域(EEZ)を活かした洋上風力発電、特に浮体式の技術開発や、夢のエネルギーと言われるフュージョンエネルギーといった次世代技術に、官民が連携して戦略的に投資していく。そうした取り組みを通じて、日本ならではの強靭なエネルギー供給体制を構築していくべきだと考えています。
トランプ政権には毅然とした対応を 安全保障はディールの材料ではない
――もう一つの「防衛の脱依存」については、自衛隊のあり方も含め、どのようにお考えですか?
私は防衛大臣政務官も務めましたが、自衛隊員の皆さんは、任官する際に「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」という宣誓をします。自らの命を懸けて国を守るという誓いを立てているのです。その自衛隊が、憲法上「違憲の疑いがある」と言われ続ける状況は、私は異常だと考えています。
まずは、この国の平和を日々守ってくれている陸海空24万人の自衛官の名誉のためにも、その存在を憲法に明確に位置づける憲法改正は、必ず成し遂げなければならない課題です。
また、「自分の国を自分で守る意思がない国を、他の国は守ってくれない」。これは国際社会の厳然たる事実です。5年間で43兆円という防衛費について、国民の皆さんのご理解を得て決まりましたので、これをいかに有効に活用し、我が国の防衛力を抜本的に高め、同盟国・同志国と連携して抑止力を向上させるか。とにかく「攻められない国」にすることが重要です。
一方で、昨今のアメリカの動向、特にトランプ大統領が日本の防衛費をGDP比3.5%や5%に上げろ、と公言していることには懸念を持っています。自国の防衛にどれだけの予算が必要かは、自国で決めることです。他国から言われて「はい、分かりました」と従うようなことがあってはなりません。安全保障が、他国とのディール(取引)の材料にされるようなことがあれば、それは日本の主権を損ない、敵対勢力に隙を見せることにつながります。そこは断固として、是々非々の姿勢で臨まなければならないと考えています。
この毎日当たり前のように享受している平和な青空は、決して空気のようにタダでそこにあるものではありません。24万人の自衛官が命を懸けて守ってくれているからこそ、成り立っている。その事実を、我々政治家は、もっと国民の皆さんに伝えていく責任があると思っています。