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バーベキュー需要しかなかった埋立地に人が…1億円超のマンションを買える「親ガチャ」で当たりをひいた子どもたち、「おのれインバウンドめ」とヘイトする住民、ブルジョワ生息地「晴海」を歩く

 「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い新連載「住みたい街の真実」。

 書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第1回は2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村跡地として注目を集めた晴海を歩く。

目次

1億円超のタワマン群に群がる「親ガチャ当たり」の子どもたち

 晴海が全国屈指の注目を集めている。その理由は晴海5〜6丁目に所在する「HARUMI FLAG」。2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村跡地を用いた約18ヘクタールの土地を用いた一大ニュータウンである。

2014年の「晴海」の様子。ここに人が住むようになるとは思えない土地だ(筆者撮影)

 銀座からバスで一本という好立地もあり、いまだ住宅価格は右肩上がりだ。2025年7月7日時点の不動産情報サイトSUUMOでは価格はもっとも安い物件でも、1億3500万円(79.17m2×3LDK)。まさに都内でもハイパーな人々が暮らすエリアである。

2017年、選手村工事の最中の深夜。時々、ドライブデートのクルマが走る以外は無人だった(筆者撮影)

 この開発にともなって、バーベキューくらいにしか人の来なかった晴海埠頭公園は整備され、カフェも併設する公園にリニューアル。1億6000万円をかけた「TOKYO」のモニュメントは有名だが、周囲には遊具も整備され、休日ともなれば子どもが雲霞の如く群れている。しかし、コイツら残らず1億円超のマンションを買える「親ガチャ」で当たりをひいた子どもたちだと思うと、もやもやした気持ちは抑えることができない。

 一時は投機物件中心で、スカスカになると思われていたが、人口自体は順調に増加中。想定人口1万2000人に対して 、今年1月時点で9011人には到達している。

ラーメン屋がほぼない街で暮らすということ

 問題は、この人口に対する店舗の少なさだ。完全なマンションオンリーの計画都市ゆえに、ちょっと気の利いた個人店が出店する余地はまったくない。すべてが資本の味である。メインとなるのは「三井ショッピングパーク・ららテラスHARUMI FLAG」だ。

 スーパー・サミットのほか、ダイソーや有隣堂、ペットショップなども入っているので普段の買い物には事足りる。とりわけ、サミットは共働きのパワーカップルが多いと分析しているのか、そのまま食べられる惣菜系や火を通すだけの食材の陳列面積が非常に大きい。かつ、サミットなのにやたらとチーズが充実しているあたりが、ここはブルジョア生息地であることを知らしめている。

ブルジョア住民の胃袋を一手に引き受ける「ららテラス」。サミットの惣菜は美味い(筆者撮影)

 そんなサミットを除けば、飲食店は決して豊かとはいえない。まずラーメン屋はほとんどない。人口9000人を超えるエリアでラーメン屋がここまでないのも日本でここくらいではなかろうか。先日まで「ららテラス」には、つけ麺店が入っていたが撤退した。上野にあるガチ中華の「麻辣大学」系列のファミレス風店舗がある「ららテラス」へ行くか、徒歩15分かけて「晴海アイランドトリトンスクエア」まで行き、チェーン店のラーメンを食べるしかない。

「おのれインバウンドめ」と叫ぶ勝どき住民を横目に

 今後も「ららテラス」の店舗が入れ替わるくらいしか、新しい店が増える要素はない。対岸の勝どきは昭和からの小規模な建物も残っているため、頻繁に新店がオープンするのとは、大きな違いだ。

なんだかんだと最強の交通手段はどこもバイクシェア(筆者撮影)

夏ともなれば公園に人は少ないが、夕方になると海風のおかげでかなり涼しい(筆者撮影)

 それでも、寝に帰るところと割り切るならば、利便性はたしかに高い。特に都営バスは晴海埠頭発、銀座経由で東京駅行きなので、座って乗ることができる可能性は極めて高い。この先、勝どき経由で東京駅へ向かうバスは東京ビッグサイト発と二系統あるのだが、東京ビッグサイト発のほうは、有明にインバウンド目当てのホテルが増加した結果、常に混雑。

 ようやく来たバスに「満員ですので、次をご利用ください」と素通りされて「おのれインバウンドめ」とヘイトを溜めている勝どき住民は日に日に数を増している。それに比べれば、空いている都営バスに加えて、同じく比較的スムーズに乗車できる東京BRTが走る晴海は通勤通学に優しい環境だ。

新設校は「もう荒れ気味」…ブルジョア生息地の教育現場

 さて、そんなニュータウン住民の子弟が通うのが晴海西小学校と中学校。中央区といえば、一時アルマーニの制服導入で話題になった泰明小学校(銀座五丁目)。高層ビルに入居した城東小学校(ミッドタウン八重洲の中にある)など大都会ならではの一風変わった小学校が勢揃い。久松小学校(日本橋久松町)は都内屈指の歴史を誇り、周年行事ではビッグネームが来賓することでも知られている。一昨年の創立150周年は秋篠宮殿下が訪れた。

ママチャリは漏れなく電動。ポンと十数万円出せるクラスの人々のみが暮らすのだ(筆者撮影)

そんな中で、新設の晴海西小中学校はどのようなものか。

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この記事の著者
昼間たかし

1975年岡山県岡山市生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。X(https://x.com/quadrumviro)

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