「支持者に高学歴いるのか」と批判する人もいるが…「天皇を中心に一つにまとまる国を」そんな参政党が掲げた「新憲法案」驚くべき中身

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 参院選で「日本人ファースト」を掲げる参政党の動向にメディアの注目が集まっている。6月の都議選で3議席獲得した参政党はマスコミ各社の調査で支持率が上昇。共同通信社が7月5、6日実施した世論調査では比例代表の投票先として2位に浮上した。全45選挙区に候補者を擁立した参政党に各党は警戒心を隠さない。SNSでも東京都港区議会議員の新藤加菜氏が「参政党支持者で高学歴の方って、いらっしゃるのでしょうか?少なくとも私の見ている範囲では見かけたことがありません」など投稿し、話題を呼んだ。経済アナリストの佐藤健太氏は「憲法観など保守層に響くものを掲げ、SNSを中心にジワリと存在感を高めている。その存在は選挙区の勝敗に影響しそうだ」と見るーー。

目次

少数政党に過ぎない参政党の勢いに各党は警戒

「ブーム的なもので終わるのではなく、政策がきちんと届いている」。参政党の神谷宗幣代表は7月7日、共同通信の調査で「野党第1党」の座を獲得したことについて、このように表現した。比例代表の投票先はトップが自民党の18.2%。2位となった参政党は6月末の前回調査から2.3ポイント上昇し、8.1%となった。国民民主党は6.8%、立憲民主党は6.6%で、少数政党に過ぎない参政党の勢いに各党は警戒する。

 公明党の斉藤鉄夫代表は7月10日、記者団に「大きく国民から注目を浴び、支持を集めていると実感している」と指摘。立憲民主党の野田佳彦代表も7月10日のスポーツ紙合同インタビューで「基本的な路線という意味では、むしろ警戒感を持たなければいけない存在ではないか」と述べたという。与野党幹部が「新興勢力」の台頭に警戒心を隠さない状況は異例と言えるだろう。

 注目されるのは、自民党への影響だ。非改選組を合わせて参院で過半数の議席を与党で維持できるかどうかが焦点になっているが、「日本人ファースト」を掲げる参政党の主張は自民党を従来支えてきた保守層に響きやすいとされる。わかりやすく、明快に訴える神谷代表の主張はSNSを中心に広がりを見せ、「空中戦」を苦手としてきた自民党は安倍晋三元首相を失った後の「岩盤支持層」確保に向け出遅れ感が否めない。

 勝敗を大きく左右するといわれる「1人区」は与党系と野党系の激しい戦いが繰り広げられており、参政党の台頭によって「岩盤」を逃すことになれば自民党は議席減に直結する。では、なぜ参政党は伸長する勢いを見せているのか。その背景を探る意味でも同党の憲法観や政策などを見ていきたい。

先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国を

 まず、参政党の綱領は①先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる②日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する③日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる―の3つの柱からなる。特徴的と言えるのは、「天皇陛下」に関する部分だ。

 この点、2022年6月に初版が発行された「参政党Q&Aブックス 基礎編」(編著・神谷代表、青林堂)には「古来、天皇陛下は日本の『権威』として存在してこられました。私たち日本人は天皇陛下の大御宝とされており、天皇陛下は日本人全員の親のような存在だととらえられています」と記されている。

 その上で「この綱領を切り取って、参政党が『天皇中心・天皇主権』の国を作ると言っている人がいますが、しっかり日本語を読んでもらいたいです。天皇を中心に国民がまとまって国を作るので、当然『国民主権』が前提です」と説明している。

 同書では、憲法について「日本国憲法は占領下でGHQの監視の中で作られており、日本の慣習や伝統文化、精神性にそぐわないものです。もう一度国民的議論を起こし、新しい憲法を作るべきです」とし、たとえ憲法の細部を変えたところで根本的な改善には至らないとする。そのため、参政党は憲法改正のスタンスではなく、新しい憲法をイチから創造すべきと「創憲」を掲げる。

「プロジェクトの成果として、新しい憲法案を完成させました」

 参政党が考える新しい憲法とは「聖徳太子が作った『十七条の憲法』のように、国民全員の意見を反映した憲法」であるとし、現在はインターネット環境があるので新しい憲法を創る際は多くの人々の意見を取り入れることが可能という。

 参政党の公式サイトをのぞくと、「令和7年5月 参政党創憲チーム作成」という「新日本憲法(構想案)」なるものがある。「参政党では、党員の皆さまと共に2年がかりで取り組んできた『創憲』プロジェクトの成果として、新しい憲法案を完成させました」と掲載。その上で「憲法には日本人の価値観を反映し、日本が自立するための理念が必要だと考えます。そのため、私たちは現行憲法の一部を改正する『改憲』ではなく、国民自身が主体となって憲法を一から創り直す『創憲』を提唱し、全国各地で党員の皆さまと共にワークショップや勉強会で議論を重ねてまいりました」と説明している。

大切なのは「自分たちの国は自分たちで守る」という意志

「前文」と7章で構成された「新日本憲法」を見ると、現行憲法の前文で保守層が問題点としてあげることが多い「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする部分に該当するような記述はない。日本の成り立ちや天皇、国民生活や社会の公益確保などに関して記され、同党が重きを置く「教育」や「国のまもり」「自立」「平和」、歴史文化などについて盛り込まれていることがわかる。

 詳細は参政党の公式サイトから読んでもらいたいが、2025年6月に初版が発行された神谷代表が編著の「参政党と創る新しい憲法 創憲で幸福度を上げよう」(青林堂)では、戦争放棄や戦力の不保持、交戦権の否定を宣言した現行憲法9条について「今の憲法を使っていくということは、ずっと在日米軍に国防を任せるということです。それは永遠にアメリカに依存していくことです」と説明。「それで、日本の若者は胸を張って国際社会で自分たちの考えや正義を訴えていけますか」と投げかける。

 そして、「我々が憲法を創り直して目指すべきは国家の自立です。日米同盟は堅持しつつも、自衛隊か新設する国防軍単体で、専守防衛ができる体制を構築せねばなりません。そのために一番大切なものは、国民の『自分たちの国は自分たちで守る』という意志です」としている。

子どもの数に応じて年金の加算する「子育て褒賞年金」

 また、現行憲法の問題点については「外国への依存」であると指摘する。憲法制定過程に触れつつ、「この憲法のもとで教育されたために、多くの日本人が、本来の日本の考え方が分からなくなってしまったのです」と説明。歴史認識についても「日本の政府が、戦争によって、日本の国民に大きな被害を与えた、という前提に立っている」ことは大きな問題であるとし、「直接の責任は、連合国の軍隊、特にアメリカ軍の攻撃によるものではないでしょうか」「日本の国民を苦しめたのは、日本の政府だという錯覚をもって見てしまうと、大きなものを見落としてしまいます」と括っている。

 参政党が掲げる政策には「減税」と「積極財政」が重要テーマとしてある。国民負担率を35%に引き下げ、内需を拡大するという。その他にも、子育て教育関連費用に利用できる給付金として0~15歳の子どもに月10万円を支給。第一子より段階的に減税し、人口増に寄与する第三子より非課税世帯化(子育て減税)、第二子以降の返済猶予や元本帳消しにより、多子世帯では実質無償になるローンを創設(子育てローン)、子どもの数に応じて年金の加算(子育て褒賞年金)などを掲げる。

「男系男子による皇統の維持が大切である」

 また、経済・財政・金融政策については「消費税の段階的廃止を進め、国民負担を直接軽減」「『骨太方針』の撤回と財政法4条を改正し、国債を財源とする政府支出を可能に」「インボイス制度の即時撤回」や「『年収の壁』を現在の約倍額となる212万円まで引き上げ」といった政策を訴えている。

国柄やアイデンティティーに関しては、男系男子による皇統の維持が大切であるとし、旧宮家の皇籍復帰で安定的な皇位継承を維持するとしている。「選択的夫婦別姓制度」は認めず、旧姓通称使用の適用を広げる法制度を整備。現行のLGBT理解増進法は廃止し、同性婚に反対する立場だ。

 NHKが7月4日から3日間実施した世論調査を見ると、参政党の支持率は4.2%で4位となっている。年代別では30代以下で10%弱を獲得しており、若年層を中心に支持を広げる国民民主党と同様の傾向がみられる。政党としての今後の課題は高齢層を取り込めるかどうかだろう。神谷代表は「古き良き時代の自民党がやろうとしていたことを目指している」と存在意義を強調している。

 はたして、参政党は現在の勢いを維持し続けることができるのか。そして、その勢いはどのような影響を他党の獲得議席にもたらすのか。「高齢の女性は子どもが産めない」と発言した神谷代表に対する抗議活動も行われる中、他党は注目度の高さに戸惑いを隠せないでいる。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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