いつ辞めるの!石破首相がこだわる8・15…次の総理、海外が警戒する高市、過保護の小泉を抑え急浮上してきた林芳正の評判

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 参議院選挙での歴史的敗北を受け、自民党は石破茂総理の退陣を巡り混迷を深めている。全国紙による退陣スクープが否定されるなど、党内の混乱は明らかだ。そんな中、ポスト石破を巡る総裁選の行方に注目が集まっている。有力候補とされる小泉進次郎氏や高市早苗氏の課題が露呈する一方で、急浮上した林芳正氏など、様々な思惑が交錯している。この混迷の裏側で何が起きているのか。政治に詳しいライターの池谷悟氏が、ポスト石破を巡る自民党の深層を読み解く。

目次

毎日と読売のスクープ、号外は何だったのか

 参議院選挙で自民党は大敗した。今回の改選での獲得議席は、参議院での過半数維持に必要な50を与党で下回り、総裁である石破茂総理の責任は明確だ。2024年の衆議院議員選挙、2025年の東京都議会議員選挙に続いた今回の敗北では三球三振。野党、それも新興政党の国民民主党、参政党に見事やられてしまった。当然スリーストライクなら総理の辞任は既定路線になるはずで、自民党内からも公然と退陣を求める声があがった。

 そんな中で選挙後、毎日新聞は「石破首相、退陣へ 8月末までに表明」、読売新聞は「石破首相退陣へ、月内にも表明する方向で調整」とそれぞれ7月23日にネットで配信した。辞任するまでの期限が2紙で異なるものの、「石破総理が近々辞める」という意味では全国紙2紙が揃ってスクープを放った。その後石破は自らスクープの内容を否定し、総理大臣として8月に突入した。読売の「月内にも表明する方向で調整」とは一体何だったのか。たしかに日本語的には曖昧さを残した表現で、この見出しからは月内に表明しない可能性があることも示唆はしている。ただ、だったら号外をうってまで報じるべき話なのか。誰だって今の仕事を将来「辞めるかもしれないし、辞めないかもしれない」のではないか。

 どうでもいいが、ネットで騒いでいるXユーザーを捕まえて「ミスリードだ!」「フェイクニュースだ!」と断罪する日本ファクトチェックセンターは一体何のために存在しているのか、色々と考えさせられる。そもそも自民党が選挙期間中に「ロシアが選挙介入している!」と騒ぎ出したのも、その根拠がよくわからない。ファクトチェックが本当に必要なのはそれこそ外国勢力による世論操作に対応するような場面だと思うが……。。

そもそもなんで石破は衆院選惨敗時に辞めなかったのか

 いずれにせよ、石破総理が8月末までに辞意を表明しなかった場合、毎日新聞の記事はフェイクニュースとなる。

 そもそもだが、石破総理が衆議院議員選挙の時点で辞めなかったのもよくわからない。かつては持論として”7条解散”を否定しながら、総理に就任したあとすぐ解散総選挙に出た石破総理。”ご祝儀”として高い支持率を期待した上で、信念を曲げてまで推し進めた解散だったのにかかわらず、当時石破茂首相は「自公過半数維持」を自ら勝敗ラインに設定した。これには”甘すぎる”などと批判を浴びていたが、その甘すぎる勝敗ラインすら達成できなかった。当然辞めるものだと、国民は思っていた。というのも、就任直後の選挙で明確にNOを国民が叩き続けたわけである。続けるにしても何か明確なロジックが必要なはずだ。

 しかし石破総理は一切辞めるそぶりを見せなかった。続ける理由も明確にしないまま。責任を取ろうとせず、党内基盤の弱い石破総理はその後もフラフラと政権を続けた。そのことから考えれば、今回の参院選で負けても辞めないことは容易に想像できた。もはや責任をとるという概念が石破総理にはあるように思えない。

元閣僚「石破さんは無駄な独り言が多い」

 そして、石破総理の盟友である村上誠一郎総務大臣が「やはり自民党が十数年やってきたことのいろいろな問題が今回噴き出したのではないか」と擁護したように、「自分に責任がある」だなんてそもそも思っていないのではないか。むしろ「自分は被害者くらい」に感じている可能性すら覚える。だったら、抜本的に党内改革や政治改革を進めればいいのに、結局いつもの悪い自民党のように「利権優先」の政策を掲げて参院選で大負けしているではないか……。

 8月15日の終戦記念日に現役総理として式典などに臨み「戦後80年談話」を出したい。だから石破総理は辞任しないんだという情報が永田町から漏れ伝わってくるが、そもそも複数回にわたって選挙でNO突きつけられた人間が「80年談話を発表する人」として相応しいのか。疑問は覚える。

 それにしても、なんで読売と毎日がそろって「退陣へ」と見出しを打ってしまったのか。つまるところ外部の人間である筆者には本当のところはわからない。だが、とある閣僚経験者は「そもそも石破総理は無駄な独り言が多い」と分析する。

「会議で石破さんの隣に座ると、独り言をブツブツと言っていて鬱陶しい。だいたい『この法案、通したほうがいいな、ん、やっぱ辞めといた方がいいな』という悩みを声に出しているパターンだった。今回もこのパターンで『総理辞めた方がいいな、ん、やっぱ辞めない方がいいな』と言っていたのが、漏れ伝わったのではないかと邪推している」

野党支持者が石破氏を応援する理由もよくわからない

  その真意は不明だが、いずれにせよ、党内からも国民からも辞任を求める声は依然として大きい。一方でなぜか一部の野党支持者から続投を求める声があがってきた。自民党と一緒に古い政党として見なされた立憲民主党や、タレントラサール石井氏の人気のおかげで議席を確保した社民党の支持者が多いように思える。たしかに石破総理は首相就任前、平然と自民党批判を続け、自民党支持者よりもむしろ一部野党支持者から高い支持を得ているように見えた。なのでその気持ち自体は理解できるのだが、石破総理になってからその一部野党支持者が思い描く社会に近づいているのだろうか。全くもってそんなことはないはずだ。ひたすら自民党の利権団体を守り抜く姿勢を貫いているだけではないか。

 また石破総理を擁護する彼らは「高市早苗氏が総理になったら大変だ」と話す。たしかにイデオロギー的に左翼と高市早苗は正反対なのかもしれない。筆者としては”ファー・ライト”同士として総理大臣となった高市氏が米国ドナルド・トランプ大統領とどう対峙するのか、カオスな世界を怖いもの見たさで興味を持ってしまうが、実際にそうなる可能性は現状低そうだ。

高市氏の総理就任を警戒するアメリカのリアリストたち

「高市さんは党内で孤立しています。これまで応援団だった自民党の右派がこの1年で次々と落選しており、党内基盤がかなり弱まりました。また支持者の一部が参政党との連携を示唆したことも、かなりの嫌悪感を生んでいます」(全国紙記者)

 20人の推薦すら実は集めるのが難しいかもしれないという話しも出ている。それでも自民党が失った保守層を取り戻すためには高市しかない、そんな声も聞こえてくるが、前出の経験者は「海外から懸念の声が届いている」と指摘している。

「昨年の総裁選で高市さんが出馬した際、私のもとには海外から心配する声が多く届きました。それは中国や韓国からではなく、アメリカです。国際的には高市さんには混とんとしている現在の国際情勢の中でうまく立ち回ることができないと思われているのです。それは官僚も同じ考えを持っており、高市さんだけには総理になってほしくないと思っている人が多い。その理由は当然、彼女の過激な発言にあるわけです」

 総裁選期間中に高市氏の優勢が伝えられると日経平均が上がるなど国際市場から歓迎ムードがみられた一方で、世界のリアリストたちは心配しているようだ。

進次郎に傷を追わせたくない取り巻き…ダークホースの登場

 また、彼女を総理にしようと推している元総理の麻生太郎氏に対する嫌気も出ているという。

「今、自民党内でも解党的出直しを求める声が大きくなっています。その状況で高市氏を推す麻生太郎氏がキングメーカーとして君臨しようとする今の構図を嫌がっているのです。これじゃ古い自民党のママで刷新感がまるで見えない、と」(政治部記者)

 刷新感といえば、小泉進次郎農水大臣だ。人気若手議員の一人で当然ポスト石破候補だ。農水大臣として自民党農水族の利権に食い込む姿勢にはたしかに刷新感がある。

 しかし小泉大臣の取り巻きは次期総裁選出馬には首をかしげる。

「もし『必ず勝てる』という確証があれば出馬すると思いますが……。前回の総裁選は『必ず勝てる』と思って出馬しましたが、PRがうまくいかず負けてしまいました。小泉氏の周辺は、小泉氏が総理として『担ぎ上げられる』構図をつくりたく思ってます。それはこのタイミングではないと思います。あまり負け続けるのもイメージ的によくありません」

 プリンスにこれ以上傷をつけるわけにはいかない、ということだ。そもそも小泉氏には「まだ経験が足りない」という意見も根強い。そんな中で今急速に注目を集めているのが林芳正官房長官だ。

 林官房長官は旧岸田派。岸田文雄前総理の再登板を求める声もあがるなかで、岸田政権を中から支えた林氏が総理になるのは、ストーリーとしても正しいように思える。また外務大臣経験者で英語も堪能だ。たしかに刷新感はないし、離れた保守が一気に戻ってくる気もしない。だが、それでも党内影響力がゼロになった石破をとりあえず辞めさせるという意味では、”ちょうどいい”人物なのだ。だが、ここで一つ問題が。

「林さんは決められない男です」(全国紙記者)

 だが、その決められない性格だからこそ、党内圧力にNOといえずズルズルと総理になる可能性もある。

 一体誰ならこの国を委ねられるのか……。

 

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