中学受験で“穴場”の中高一貫校など存在しないが、実力以上に偏差値が上がっている“バブル”の学校はたくさんある…中堅“バブル校”の特徴と実名大暴露

近年、Webメディアにて「入りやすいのに大学受験の実績が良い高コスパな中高一貫校」というテーマの記事が多数散見される。しかし、教育ジャーナリストの四谷代々氏は「穴場の学校などないが、逆に実力以上に偏差値が上がっているバブル校は多数ある」と指摘する。いったい、どんな学校なのか。同氏が暴露するーー。みんかぶプレミアム特集「中学受験 最強戦略」第2回。
目次
「中学受験で入りやすいのに大学受験で名門大に入りやすい“穴場”の中高一貫校」など存在しない現実
中学受験業界に身を置く四谷代々と申します。今回はみんかぶさんにお声をかけていただき、「穴場の中堅校」というお題をいただいたが、正直、穴場はない。なぜなら、今、中学受験はボリュゾ、つまり、中堅校狙いの層が増えており、激戦になっているためどこも難しくなっているからだ。
ある中堅校の教師はいう。
「コロナ前はうちの学校は名前を書けば受かる状態でしたが今はそうではない」
どこもこんな感じで、「穴場」の学校はもう存在しない。
一方で、実力以上に偏差値が上がっている「バブル」の学校はある…なぜそのような学校が存在するのか
一方で、「バブル」の学校はある。つまり、実力以上に偏差値が上がっている学校だ。
中学受験は市場が大きいので、情報を持っていない保護者も多い。そうなると、広報がうまくいっている学校や塾が熱心に勧める学校の偏差値が上がっていく。
この偏差値バブル学校に入学するのは「コスパが悪い」ので避けたいところだ。
中堅校が偏差値を上げていく要因として、1番厄介なのは「大手塾がその学校に多く受験させる」というものだ。
第1志望や第2志望は、本人の希望や家庭の方針によって決めていくが、いわゆる「すべり止め(併願校)」に関しては特に思い入れもないから、塾が勧める学校を受験しがちだ。
そのため、大手塾が受験生を送り込む中堅校の偏差値が伸びていく。
渋谷幕張や広尾学園も、大手塾が生徒を受験させたことが偏差値が伸びた一因と言われているし、実際、ある大手塾の関係者は「あの学校はうちのおかげで難関校になったんだ」と自慢げに話している。
ただ、渋谷幕張も広尾学園もちゃんと地道な努力をし、大学合格実績を伸ばしたから偏差値が安定して「髙止まり」にあるが、そうではない学校も存在する。
大手塾が生徒を特定の学校に回すのは「大人の事情」と「お気持ち」
この大手塾が一定の学校に生徒を受験させる理由はふたつある。
ひとつは、「大人の事情」である。学校が大手塾の関連企業に業務を依頼し、費用を払うとその大手塾が「生徒を回してくれる」のだ。金銭的な損得である。
ところがトップ塾はそういった金銭的な損得なしで、「お気持ち」で特定の学校を併願校として受けさせる。保護者が満足するような内容の学校を選ぶ。聖光や本郷が大学進学実績を伸ばしたり、偏差値が上がっているのはこれが大きな理由とみている。
開成の併願校として、塾がこれらの学校を受けさせるから、優秀な生徒が入学してくる。どちらも学習面で面倒見のいい学校であった。
他にも世田谷学園や普連土といった誠実な学校がトップ塾の生徒の併願先だった。「中学受験はうまくいかなかったけれど、中学から頑張って大学受験でリベンジしよう」という家庭の方針があり、それにマッチする学校が併願校として選ばれた。
ところは今は客層が変化している。トップ塾も生徒数が増えたことで、教育熱心というよりもタワマン文学に出てくるような人たちが目立つようになった。窓際三等兵さんがいう「タワマンに住んでトップ塾に子どもを通わせる」というライフスタイルに憧れる層だ。「タワマン文学に出てくるようなママ」通称タワマン文学ママである。
中堅“バブル校”に子供を進学させる母親たちの共通点
トップ塾が合格実績を上げてきたのは、高学歴な母親たちがしっかりと子どもの学習をサポートしたからだ。テキストの内容を理解し、学習の管理をするためには母親も学力が必要だ。また、中学受験を経験してなくても高校や大学の受験をきちんとやってきた母親は受験で必要なものが分かっている。
しかし、タワマン文学ママは勉強よりは経済力がある男性を捕獲することに熱心だった人種だ。そういうママは受験もよく分かってないから、子どもの勉強の管理も苦手なので、トップ塾ではうまくいかない。
しかし、彼女たちは「努力せずにマウントを取りたい」という願望がある。
そうなると、子供が中学生になって以降、子をより勉強させて大学受験でリベンジさせるのは地道な努力が必要なので嫌なのだ。そもそも、中学受験で負けたことも認めたくはない。
トップ塾は賢いので、そういった「楽してマウントを取りたい」「負けを認めたくない」保護者のニーズに応え、最近では「探究学習」「グローバル教育」「サイエンス教育」などをアピールしている学校を併願校としてとして推奨している。
「自分の子どもは中学受験で御三家や早慶付属や渋渋に入れなかった。偏差値競争では勝てなかったが他のレースなら輝けるかもしれない」とタワマン文学ママは考え、それに答えるのが「探究学習」「サイエンス教育」「グローバル教育」なのだ。
つまり、「中学受験はうまくいかなかったけど、中学から真面目に勉強をさせて大学受験を目指そう」という謙虚な気持ちではなく、「偏差値教育では測れない才能がうちの子にはあるの」と考え、そういったキラキラ系教育に惹かれるのだ。今、偏差値バブルになっているのはそういった「キラキラ系教育」の学校である。
では、実際にはどういった学校がそれなのか。偏差値バブルの学校を具体的に述べよう。