燃え尽きた?部活やりすぎ?医学部生特有の事情が影響する「留年のパターン」

年収も地位も約束されている、資格仕事だから失業の恐れもない、そして何より人に感謝をされる仕事ーー。それが医者だ。
多くの親が子供を医師にしようと早期教育に力を入れ、医学部に強い学校・特化した予備校は人気を博している。しかし、内実を知る専門家から見ると「医学部に入ったから安泰」というイメージは実態とかなり異なるようだ。
個別指導塾CASTDICEの代表、小林尚氏は次のように語る。
「わが子を医学部に入学させれば、将来安泰という思い込みをしている親御さんは非常に多い。でも実際には、入学後にさまざまなハードルが待ち受けています」
大学受験の専門家で医学部専門のCASTDICE Medicalも運営する同氏に、医学部受験を考える全受験生に知っておいてほしい最新事情を伺った。連載全3回の第2回。
目次
「ミスマッチ」で留年するパターンは深刻
医学部生の留年には、3つのパターンがあります。まず、前提として言っておきたいのは、彼らは学力も志も高いため、皆さんが想像するような「遊びほうけて留年」「バイトにのめり込んで留年」というケースは極めて少ない。
医学部特有の環境や特徴が、留年や中退の引き金になっているケースが多いんです。
第一のパターンはバーンアウト、つまり燃え尽き型です。 激しい受験競争を勝ち抜いてきた学生が、合格と同時に心の糸が切れてしまうケースですね。学生によっては中学受験や幼少期から「医者になるため」と頑張ってきて、ちょっと休憩したいという気持ちで、少し気を抜きすぎてしまう子は一定数存在します。
第二は部活頑張りすぎ型です。 皆さん、医学部生は勉強漬けと思いがちなんですけど、実はものすごく部活が盛んです。そんななかで、部活のせいでちょっと油断して必修を落としちゃったというケースが結構あります。
第三はミスマッチ型で、 これが最も深刻な問題かもしれません。親が医者だからとか、なんとなく安定してそうといったイメージで医学部に入学し、そこから社会のことや学問のことを色々と知って「本当にこの道で良かったのか」と悩んでしまう学生たちも少なくありません。こういう子は医学への興味が持てず、学習に前向きになれないという状況に陥りがちです。
また、受験で英語、数学、物理、化学といった理系科目が得意で医学部に入学したのに、入学後は膨大な暗記の世界が待っていて、困惑してしまう子も少なくありません。
一般的な理系学部の場合、専攻を変更したり、文系就職をしたりという選択肢もありますし、1年休学して自分を見つめ直すという時間も取りやすいです。しかし、医学部では決められたルートから途中で抜け出すことが極めて困難なんです。