5人連続死を招いた“呪いの人形”との奇妙な同居生活「可愛がると殺しに来るので…」呪物から身を守るために実践している習慣とは

怪談師であり、日本を代表する「呪物コレクター」として知られる田中俊行氏。彼が収集するのは、持ち主に災いをもたらすとされる曰く付きの品々である。介護施設で5人を死に導いたとされる呪いの人形「チャーミー」との出会いが、この世界に引きずり込まれるきっかけになったという。
呪物の力を「間違いなく存在する」と断言する理由から、メルカリでも取引される現代の呪物マーケット事情まで、オカルトの枠を超え民俗学の領域にも通じる呪物の奥深い世界を、同氏に解き明かしてもらった。短期連載全3回の第2回。(取材日:6月25日)
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「可愛がると殺しに来るので…」呪いの人形との奇妙な同居生活
――今もチャーミーちゃんとは一緒に暮らしているのですね。愛着も湧いているのではないでしょうか。
もちろん愛着はありますが、好きとか可愛いとか、そういう感情とは少し違います。
――と、言いますと?
チャーミーは、先ほどお話しした通り「可愛がると殺しに来る」と言われている人形です。だから、あえて距離を取っています。物理的にも、精神的にも。僕にとってチャーミーは「ビジネスパートナー」なんです。ステージの上では仲が良いアピールをしますが、家に帰ったら「本日はお疲れ様でした」と、一線を引く。そういう関係です。
呪物から身を守るために実践している“たった1つの作法”とは
――田中さんご自身には、呪物をコントロールするような力はない、ということでしょうか?
ないですね。ないと思います。僕の感覚では、常に呪物のほうが立場が上なんです。僕よりも、彼らのほうが格上。だから、僕が彼らをコントロールするのではなく、「お世話をさせてもらっている」というスタンスです。
――コントロールできない危険な物と一つ屋根の下で暮らしていて、身に危険が及ぶことはないのでしょうか?
いや、問題は起きますよ。やっぱり「良くないことをしているな」という感覚は常にあります。怪談もそうですが、亡くなった方の話をしたり、呪物のように本来は隠されるべきものを表に出して紹介したりするのは、ある意味でタブーに触れる行為です。だからこそ、ものすごく気をつけなければいけないと常に思っています。
――危険を回避するために、何か特別な作法やルールなどはあるのですか?
例えば、メディアで呪物を紹介させてもらった後は、必ずその呪物に対してお礼として供物を捧げるようにしています。「今日はお疲れ様でした。ありがとうございました」と。お菓子とかを供えるのですが、それが勝手に減っていたりすることはないですけどね(笑)。まあ、あまりちゃんと見てないですけど。
メルカリで呪物が買える? 曰く付きの品が取引される、現代の呪物マーケット事情
――そういった呪物って、結構高い値段がついていたりしそうな気もするのですが。
しますね。今はやっぱり、オークションでも呪物が売られているので。ヤフオクやメルカリでも見かけますよ。特にメルカリは、かなり古くから「曰く付きの品」として呪物が取引されていましたね。あとは海外のサイトだとeBay。それから、世界中のコレクターだけが参加できる、会員制のプライベートオークションというものも存在します。そういった場所で引き取ることもあります。
コレクターが明かす“呪物を集める本当の目的” 呪物に込められた強烈な願いの正体とは
――コレクターの方々は、どういう目的で呪物を集めているのでしょうか?
基本的には「お守り」としてだと思います。呪物というと「呪い」のイメージが強いですが、本来は「現世利益」を願うためのものなんです。死んでから天国へ行くとか、来世で幸せになるとかではなく、「今すぐお金持ちになりたい」「今すぐ恋人を手に入れたい」「今すぐ誰かを呪いたい」といった、今この瞬間の願いを叶えるための力が呪物にはあると信じられています。
「呪い」という漢字は「まじない」とも読みますよね。ポジティブな願いもネガティブな願いも、両方を内包しているんです。そして実は、世の中にある呪物の多くは、圧倒的にポジティブな願いが込められたもののほうが多いと思います。人を呪うための物は、むしろ少数派ですね。
呪物コレクター・田中俊行がネガティブな“呪いの品”だけを愛するワケ
――では、田中さんご自身はなぜ、その少数派であるネガティブな「呪いの物」を専門に集めているのですか?
よく聞かれます(笑)。なぜか、ポジティブな力を持つ物にはあまり興味が湧かないんですよ。僕が惹かれるのは、人間のネガティブな感情のほうなんです。呪物の背景には、必ず「人」がいます。その人が抱えた憎しみや嫉妬、絶望といった黒い感情のほうに、僕は強く興味を惹かれます。だから、自然とネガティブな呪いの物を集めてしまうんです。
――呪物を手に入れる際は、その背景にある歴史や物語も一緒に知ることができるのですか?
そうですね。前の持ち主からエピソードを教えてもらったり、古い時代の呪物であれば、その土地の歴史や文化を調べたりします。それが、この活動の面白いところでもありますね。
その骨董品、大丈夫? 店主も気づかぬまま売られている“曰く付きの品”のリアル
――現在はどのようなルートで呪物を仕入れているのですか?