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次の自民党総裁になるべき候補は誰なのか…国際政治アナリスト「外交安全保障の閣僚経験がゼロの人物を総裁に推すことはあり得ない」

 国際情勢が混迷を極める最中、自民党総裁選が開催される。この状況下で、誰が新総裁に選ばれるべきなのか。

 国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「外交安全保障の閣僚経験がゼロの人物を総裁に推すことはあり得ない」というーー。

 みんかぶプレミアム連載「渡瀬裕哉の常識革命」

目次

トランプ政権が中国・インドに50~100%関税を求める狙いは

 トランプ政権はEUに対して中国・インドに対する50~100%関税を求めている。このEUに対する呼びかけは、表面上はウクライナ戦争を継続するプーチンの資金源を断ち切るための要請であるが、ロシア封じ込め後の対中包囲網こそが真の狙いであろう。

 EUはトランプ政権と同様の措置を取ることはないとしているが、対ロ制裁の文脈から一部の中国・インド企業等への追加制裁を実施する可能性が高い。今後、トランプ政権側から日本にも同様の対応が求められることも十分にあり得る。

中国は国内不動産市況が個人消費の減退に繋がり、習近平政権は苦しい状況に

 一方、中国側は国内不動産市況が個人消費の減退に繋がり、経済的には非常に苦しい状況にある。それにも関わらず、習近平政権は軍事力強化とともに、周辺国との軋轢を強め、台湾海峡の地政学的な危機は高まり続けている。

 ASEAN各国では不安定な政情が続くとともに、台湾の政局状況も分裂状態は続いたままだ。インド太平洋地域の安全保障環境は悪化の一途を辿っている。

この国際情勢下で、誰が自民党総裁になるべきなのか…まずは本命候補の2人の経歴をチェック

 このような状況下での自民党新総裁選びはどのような観点で行うべきであろうか。筆者がお勧めする方法は、名前を伏せた上で、閣僚歴・自民党役職歴・外交実績などを比較する方法だ。

 第一候補者は44歳の若手男性、過去に環境大臣を経験し、現在は農林水産大臣を担っている。党務としては、農林水産部会長として農業改革で十分な成果を上げられなかったが、直近では国対副委員長や選対委員長として多くの身内議員に政治的な貸しを作る立場にあった。

 父は元首相の世襲家系の次男であり、日本の平凡な大学を卒業後、米国のコロンビア大大学院に留学、米国のシンクタンク(CSIS)で研究員の席に座ったことがある。ただし、同シンクタンクはトランプ氏としばしば対立的だ。党内では神奈川県連会長を務め、党内有力政治家のうち少なくとも一人がバックにいる。

 第二候補者は64歳の女性、過去に総務大臣や内閣府特命担当大臣(経済安全保障担当大臣やクールジャパン担当大臣等)を務め、党務としては政調会長の要職を務めた。松下政経塾卒業後、リベラル派の米国民主党議員スタッフ、キャスターを経て国会議員に。当初の政党遍歴は無所属、野党、自民党入りという形で変遷した

 一般的には保守派候補者と見做されており、財政出動派としても認識されている。ただし、旧所属派閥である清和会から抜けた過去があり、保守派も含めて党内基盤は万全とは断言できない。昨年の総裁選挙は最後まで現首相と競り合った。

自民党税調のインナー、筋金入りの世襲家系…

 第三候補者は開成中高から東大、財務省、ハーバード大修士号取得、その後に国会議員となった50歳男性だ。財務省時代に主計局でなかったことを除けば、画に描いたようなエリートである。防衛大臣政務官を経験した上で、内閣府特命担当大臣(科学技術政策・宇宙政策担当)・経済安全保障担当大臣としての経歴を持つ。党経歴は官僚出身者らしく国対畑ではなく外交・財金・経産・内閣などの部会の要職を務めてきた。現在は自民党税調のインナーの立場にある。過去に第二候補者の総裁選挙の推薦人になっていたこともあり、昨年の総裁選挙と同様にお互いの支持基盤が被ることが懸念されている。

 第四候補者は東大、三井物産、その後地元大手企業などに勤務し、大蔵大臣であった父の秘書官を務め、ハーバード大学修士号取得、その後に国会議員になった名家の64歳男性である。高祖父は貴族院議員ということで筋金入りの世襲家系である。参議院議員として大蔵畑でキャリアを積んだ後、内閣府特命大臣(経済財政)、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣、外務大臣、官房長官等の要職を務める。党務としては参議院政審会長を務めた。元日中友好議員連盟会長としての側面も持つ。衆議院議員として転出後、昨年度に二度目の総裁選挙に出馬して落選。

最後は、実務能力が高いが人気はイマイチなあの候補

 第五候補者は東大卒業後、商社・新聞社に勤務し、ハーバード大学修士号取得後、マッキンゼーに務めたエリート男性である。野党の国会議員からキャリアをスタートし、その後自民党に入党した。現在、69歳で過去に外務大臣や経済産業大臣などの主要閣僚を務め、経済再生担当大臣等の特命担当大臣としては数えきれないほどの実績を有している。党務の実績としても幹事長、政調会長、選対本部長を歴任し、文句のつけようがない。外交実績としては、TPP交渉の取りまとめ、第一次トランプ政権時代には日米貿易交渉を担当するなど、その実務能力も極めて高い。ただし、自派閥内も含めて党内人気が高いとは言えず、国民からの支持もイマイチな状況にある。前回の総裁選挙は「増税ゼロの政策推進」を掲げたが敗北した。

 他にも総裁候補者はリストに上がってくるかもしれないが、今回は実質的に上記5名の争いになるだろう。上記では、小泉、高市、小林、林、茂木の順番で閣僚歴・自民党役職歴等を紹介した。

 ただし、今回の記事で全員名前を伏せた意図は、自民党議員・自民党員にはその人物の外交安保・経済政策に関するキャリアを直視すべきで、いい加減な候補者を選んでいる余裕はない、ということを伝えたかったからだ。

混迷極める国際情勢下で、外交安全保障の閣僚経験がゼロの人物を総裁に推すことはあり得ない

 冒頭に述べた通り、日本を取り巻く国際情勢は混迷を極めつつある。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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