高市早苗、税調を批判「財務省出身の税の専門家…」愛国心に裏付けされ財務省攻撃「総裁になったら靖国に行かない」トップの信頼感

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 自民党の高市早苗総裁が「税制調査会のスタイルそのものをガラッと変えて欲しい」「つまり、財務省出身の税の専門家だけで税制調査会の役員を固めるのではなく、憲法上「全国民の代表者」として国会に送って頂いた国会議員達が必要だと考える税制の方向性を闊達に議論できる税制調査会」と発言したことが話題を呼んでいる。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が詳しく解説していくーー。

目次

民主主義の根幹に関わる戦いの狼煙

 10月、高市早苗氏が自由民主党総裁に就任した時、多くの国民が日本の政治に新しい風が吹くことを期待した。その期待の根源は、高市氏が持つ、国家への深い愛情と確固たる信念にあった。これまで多くの政治家が毀誉褒貶を恐れ、曖昧な言葉に終始する中で、高市氏は一貫して日本の国益と誇りを守る姿勢を示し続けてきた。その揺るぎない愛国心こそが、日本の長期停滞の元凶とも言われる巨大な「岩盤」への挑戦へと、高市氏を突き動かしているのだろう。

 その「岩盤」とは、霞が関の中枢に鎮座する財務省であり、その教義である「増税」である。

 高市氏の財務省に対する挑戦は、日本の政治史において特筆すべき勇気ある行動として評価されるべきである。大蔵省時代から続く「財政の健全化のためには国民負担の増加、すなわち増税もやむなし」という教義は、半ば神格化され、それに異を唱えることは政治家にとってタブーに近かった。しかし高市氏は、総裁選の段階からそのタブーに臆することなく切り込んだ。日本の税制を実質的に牛耳ってきた党税制調査会のあり方を「財務省出身者で固められたもの」と断じ、「スタイルをガラッと変えたい」と公言したのである。これは、単なる人事への介入ではない。増税ありきの政策決定プロセスそのものを国民の手に取り戻そうとする、民主主義の根幹に関わる戦いの狼煙であった。

 総裁就任後、その挑戦はさらに具体性を帯びる。高市氏の掲げる政策は、財務省が金科玉条のごとく守ってきた増税路線の軛から、日本経済を解き放とうとする試みに見える。国民生活を直撃するガソリン価格の高騰に対しては、トリガー条項凍結解除による1リットルあたり25.1円の減税を主張。さらに、赤字に苦しむ企業であっても賃上げに踏み切れるよう大胆な支援策を打ち出したことは、長引くデフレからの脱却を目指すという、強い意志の表れである。

二つの、極めて重大な「心配」

 もちろん、財務省はこうした政策に財源論をもって抵抗する。しかし高市氏は、「必要ならば国債発行も辞さない」という姿勢を隠さない。これは、財政規律を盾に増税を正当化し、経済成長という本来の目的を見失った官僚組織への、明確な挑戦状に他ならない。

 報道によれば、財務省内部では高市氏の勝利に「驚いた」「どう対応すべきか」との声が渦巻いているという。市場が「高市トレード」と呼ばれる急激な円安で反応したことも、高市氏の挑戦が単なる言葉だけでなく、実体経済を揺るがす力を持つことの証左だ。このように、高市早苗氏は、誰もが不可能だと諦めかけていた財務省という巨大な「岩盤」に、敢然と立ち向かっている。その愛国心と勇気に対して、我々はまず、心からの敬意を表すべきである。

 この歴史的な挑戦を心から応援するからこそ、筆者には二つの、極めて重大な「心配」がある。それは、この挑戦が真に実を結び、高市氏が「救国の宰相」として歴史に名を刻むために、避けては通れない構造的な問題点である。

円安こそが、国民生活を静かに、しかし確実に蝕んでいく

 第一の懸念は、高市氏が掲げる「積極財政」や「財政出動」という手法そのものが、結果として日本国民全体を貧しくしてしまう危険性を孕んでいることだ。高市氏が訴える減税は、国民の可処分所得を増やし、経済を活性化させる可能性がある。しかし、問題はその財源を安易に赤字国債に依存しようとする点にある。

 国債を増発して財源を確保するということは、市場に供給される円の量が増えることを意味する。これは必然的に円の価値を希薄化させ、さらなる円安を招く。すでに「高市トレード」で円安が進行しているが、この路線を続ければ、円の価値下落はもはや止まらなくなるだろう。

 そして、この円安こそが、国民生活を静かに、しかし確実に蝕んでいく。日本はエネルギー資源や食料の多くを輸入に頼っている。円安は、これらの輸入品の価格を直接的に押し上げる。ガソリン減税で一時的に家計の負担を和らげたとしても、電気代、ガス代、そして日々の食料品がそれ以上に値上がりすれば、国民の生活は実質的に苦しくなる一方だ。減税というアメの裏側で、円安と物価高騰というムチが、より広範な国民を打ちのめすことになる。

結果的に日本を貧しくする「貧困化政策」に

 これは、国民の富が円安という形で海外に流出していくプロセスに他ならない。国債増発による財政出動は、一見すると国内にお金が回るように見えるが、その実態は、通貨価値の下落を通じて国民全体の購買力を削ぎ、結果的に日本を貧しくする「貧困化政策」となりかねないのだ。

 財務省の増税路線を否定するならば、進むべき道は一つしかない。それは「歳出改革」である。非効率な公共事業、利権が絡み合った補助金、そして何よりも、少子高齢化という現実から目を背けたまま膨張を続ける社会保障費。これらの構造的な問題に断固としてメスを入れることこそ、政治家の覚悟が問われる領域だ。歳出を徹底的に見直し、無駄をなくして財源を生み出し、それを減税や未来への投資に充てる。この困難な道を歩んでこそ、持続可能で揺るぎない経済成長が実現する。国民は、目先のバラマキではなく、国家の百年を見据えた本質的な財政改革を、高市氏に期待しているのだ。

 第二の懸念は、その力強い言葉が、必ず行動によって裏付けられるかという点である。高市氏の信念の強さは誰もが認めるところだが、政治の世界は、時にその信念を貫くことを阻む様々な力が働く場所でもある。

未だに覚悟と行動計画がみえない

 例えば、多くの支持者が固唾をのんで見守っていた、靖国神社への参拝。総裁就任前、あれほど「参拝する」と明言していたにもかかわらず、就任後初の秋季例大祭での参拝は見送られた。公明党という連立の枷が外れ、誰に遠慮することもなく自らの信念を行動に移せる絶好の機会であったはずだ。もちろん、そこには我々が知り得ない高度な外交的判断があったのかもしれない。しかし、支持者から見れば、最も期待していた「有言実行」の姿が見られなかったことは、一抹の不安を抱かせるに十分であった。

 台湾からの就任祝いに対するメッセージも同様だ。「大切な友人」「極めて重要なパートナー」という言葉は美しいが、国家のリーダーには、その美しい言葉を現実に変えるための具体的な行動が求められる。「日台間の協力と交流が深まることを期待します」というのは、国家のリーダーとして他人事のような言い方だ。具体的に日台の自由貿易を進めること、台湾有事が現実の脅威として迫る中、日本の総理大臣として、具体的にどのような手を打ち、この重要なパートナーを守り抜くのか。その覚悟と行動計画こそが、今、問われている。

その言葉は単なる美辞麗句か

 高市氏の愛国心と国家観を信じるからこそ、支持者はその言葉が単なる美辞麗句ではなく、国家の針路を定める具体的な行動へと繋がることを熱望している。人事においても、本当に財務省と戦い抜ける布陣なのか、支持者は固唾をのんで見守っている。この不安を払拭するのは、今後の力強いリーダーシップ以外にない。

 高市早苗氏の挑戦は、日本の未来にとって極めて重要である。その挑戦が真に成功するためには、提示した二つの懸念、すなわち「歳出削減」と「有言実行」というハードルを乗り越えなければならない。我々は単なる批判者としてではなく、この国の未来を思う一国民として、高市氏の「覚悟」と「行動」を、厳しく、しかし最大の期待を込めて見守っていく必要があるだろう。

 高市氏の愛国心と勇気ある挑戦は、日本の未来を左右する。しかし、歳出改革の断行と有言実行こそが、真の「救国の宰相」への道を拓く。国民は、その覚悟と行動に最大の期待を寄せ、厳しく見守るだろう。

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