令和の「マンション投資」の新常識は?やっぱり買うべきは「東京23区」!

投資用マンションの仲介業者として、創業以来2000戸以上のマンションを販売してきた株式会社エイマックス代表の天田浩平氏。そんな天田氏は、投機的な不動産投資とは一線を画す、「地道で、手堅い資産形成への道」を勧めている。不動産価格が高騰するいま、買うべき不動産とはどのようなものなのか、天田氏が解説する。全3回中の1回目。
※本稿は天田浩平著『インフレ時代に始める 東京〈中古〉マンション投資の教科書』(ビジネス社)から抜粋・再構成したものです。
第2回:自己資金10万円から始める不動産投資……「金利上昇」は不動産投資家にとってチャンスでしかない
第3回:年収500万円でも不動産が買える!金融機関が重視するポイントと日常での注意点とは
目次
家賃が1000円下がると、資産価値は30万円下がる
優良物件を見極める上で、立地と並ぶほど重要な条件なのにもかかわらず、多くの投資家が見落としがちなのが「家賃の適正価格」です。
「購入を検討している物件の家賃は、そのエリアの相場と比べて適正なのか?」
この問いを抜きにして、不動産投資の成功はあり得ません。
なぜなら、相場よりも割高な家賃が設定されている物件は、将来的に家賃が下落する危険性を抱えていると言えるからです。
現在の入居者が退去したあと、同じ高い家賃で次の入居者が見つかる保証はどこにもありません。むしろ、周辺の適正な相場価格まで家賃を下げなければ、空室が長期化するリスクが非常に高いのです。
家賃の下落がもたらす影響は、単に毎月の収入が減るだけにとどまりません。投資用不動産の資産価値は、「収益還元法」という考え方に基づいて算出されるのが一般的です。
簡単に言うと、「その物件が生み出す収益(家賃)が多いほど、物件の価値も高くなる」という考え方です。裏を返せば、家賃が下がるということは、資産そのものの価値が目減りすることを意味します。例えば、物件の利回りが4%だと仮定します。この場合、資産価値は以下の式で計算できます。
資産価値=年間家賃収入÷利回り
月の家賃が1000円下がると、年間の家賃収入は1万2000円減少します。これをもとに資産価値がどれだけ下がるか計算してみましょう。
下落する資産価値=1万2000円(年間家賃収入の減少額)÷4%(利回り)= 30 万
毎月の家賃がわずか1000円下がるだけで、マンションの資産価値は約30万円も下落してしまうのです。
このように、目先の空室を埋めるために安易に家賃を下げると、将来的に大きな損失につながる可能性が高いため、慎重に判断する必要があります。
信頼すべきは生の情報
では、どうすれば家賃が適正かどうかを見抜けるのでしょうか。
もっとも確実な方法は、その物件が所在するエリアの、地元の賃貸仲介会社に直接ヒアリングすることです。
「そちらのエリアの、このような条件の物件なら、家賃はいくらぐらいが妥当ですか?」と、電話で構わないので、最低でも3社に聞いてみてください。インターネットの賃貸サイトの情報は、過去の募集事例や客寄せのための「おとり物件」が紛れ込んでいる可能性があり、必ずしも最新の正確なデータとは限りません。
その街で日々、入居者と向き合っているプロの「生の情報」こそが、もっとも信頼できるのです。
「適正な家賃を制する者が、マンション投資を制する」。この言葉を、ぜひ胸に刻んでおいてください。
やっぱり買うべきは「東京23区」
物件選びの9割は「立地」で決まる。これは、私が何度でも繰り返してお伝えしたい、不動産投資で成功するための絶対に譲れない条件です。そして、やはり「東京23区」が基本となります。
なぜ東京なのか。
その理由は、圧倒的な人口流入と、それに伴う底堅い賃貸需要があるからです。日本の他の都市が人口減少に悩む中、東京だけは若者を中心に人々が集まり続け、常に住宅が不足している状況です。
建設費の高騰と人手不足の影響もあり、新築マンションの供給戸数は減少傾向にあります。「需要>供給」というシンプルな構造が東京の不動産価値を根底から支えているのです。
もう一つ、具体的なルールとして覚えておいていただきたいのが、「最寄り駅から徒歩10分以内」という基準です。もちろん駅に近いほど有利ですが、10分圏内であれば、入居率に決定的な差は生まれません。
ただし、これも例外があり、渋谷、銀座、六本木等といった、都心の中でも特にブランド力と人気が高いエリアであれば、駅から徒歩12分、15分といった距離でも、需要が衰えることはほとんどありません。エリアの持つ「格」が、駅からの距離というハンデを凌駕するのです。
加えて、東京23区以外で唯一、投資対象として検討する価値があるのが、「横浜駅」と「川崎駅」の周辺です。この2駅は、東京へのアクセスが抜群に良く、駅周辺の再開発も進んでいることから、大きな賃貸需要があります。また、限定的ではありますが、中央線沿線の「三鷹駅」や「吉祥寺駅」も、その人気の高さから安定した需要が見込めるエリアと言えるでしょう。
これら以外の地方都市の物件を、私は一切おすすめしません。東京に比べて利回りが高いからと言って、うかつに地方物件に手を出すのは非常に危険な賭けです。
不動産投資は、その土地が持つ未来へのポテンシャルに投資する行為です。その意味でも、日本の未来が凝縮された東京23区という立地を選ぶことが、大切な資産をもっとも安全かつ確実に増やすための、賢明な選択なのです。
築年数がすべてではない
「不動産は新しいほど価値が高い」
これは、ある意味では真実ですが、投資という観点から見ると、必ずしもそうとは言い切れません。中古マンション投資において、築年数は確かに重要な要素ですが、単に新しければ良い、古ければダメ、という単純な話ではないのです。
むしろ、もっとも重要なのは、「その築年数の物件が、将来的に家賃を維持、あるいは上昇させられるポテンシャルを持っているか」という点にあります。
この観点から、私が現在、お客様におすすめしている物件の築年数の目安は、「築5~30年」です。なぜ「築5~30年」なのか、説明しましょう。
まず、築5年未満の物件を外しているのは、「新築プレミアム」と呼ばれる新築特有の付加価値が失われていく過程で、「家賃下落リスク」がもっとも高いからです。新築時に割高に設定された家賃が、周辺の中古相場に落ち着いていく。その下落幅を、あなたが被る必要はありません。
逆に、築30年を超えると、金融機関の「ローン審査」が厳しくなる問題が生じます。多くの金融機関は、ローンの完済時年齢だけでなく、建物の耐用年数も考慮します。
一般的な投資用中古マンションの融資期間は「築60年-現在の築年数」といった基準で設定されることが多く、築30年を超えると、長期のローンが組めなくなる可能性が高まります。そうなると、月々の返済額が大きくなり、投資効率が悪化してしまうのです。
つまり、「築5~30年」は、新築プレミアムによる家賃下落リスクが一段落し、かつ長期のローンが組める条件で、投資効率上、もっともバランスの取れた期間なのです。もちろん、これはあくまで目安です。
また、大前提として、1981年6月以降の「新耐震基準」で建てられていることは絶対条件です。この基準を満たしていれば、鉄筋コンクリート造のマンションは80年以上もつと言われており、物理的な寿命を心配する必要はほとんどありません。
こうした条件をクリアした上で注視すべきポイントは、「家賃を上げる力」を持っている物件かどうか、という点です。
新しめの物件、特に人気の設備が整っている物件は、家賃の上昇率が高い傾向にあります。逆に、古い物件でも、相場より安い家賃で貸し出されていれば、将来的に家賃を適正価格まで引き上げられる可能性があります。
「古いか新しいか」という表面的な情報だけでなく、その物件が秘めている将来の収益性を見極める。プロのマンション投資家は、こうした視点で物件選びをしているのです。
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