なぜ「そんなのAIでできます」と言う人は3流なのか…納品主義者となったインチキビジネスパーソンの末路「LLMの使い方に根本的な間違い」

ここに1冊の本がある。『タイトルから考えよう』(星海社新書)だ。著者の鈴木俊之氏は長年ウェブメディアの裏側でバズを生み出してきた男だ。その鈴木氏は「AIに丸投げして仕事した気分になっている納品主義者」が増えていると警鐘を鳴らす。業界の一部で”アテンション・ハッカー”とも呼ばれる鈴木氏が解説する――。
*本稿は鈴木俊之著『タイトルから考えよう』(星海社新書)の一部を抜粋し、再構成したものです。
第1回:誰もあなたの文章なんて読みたくない…Webメディアの“アテンション・ハッカー”が語る「衝動読みが支配する現代」コンビニ客の7割の驚くべき行動
第3回:採用説明会で「部署によります」と答える人事担当者はゼロ点だ…なぜつまらないのか?生成AIが大量に生んだ「納品主義者」たちの実態
目次
納品主義とは何なんだ
今、世の中に悪しき「納品主義」が蔓延しています。
特にメディア業界に限らず、商品やサービスを提供する事業会社において、プレスリリース、メルマガ、LPといった文字コンテンツの制作が、「作ることそのもの」、つまり「納品」にのみ関心が向いています。この状態を私は「納品主義」と呼んでいます。
この納品主義が引き起こす実害は甚大です。例えば、あなたが新商品のプレスリリースを作成したとしましょう。上司から「今日中にこの内容で出してくれ」と指示され、あなたは言われた通りの情報を過不足なく盛り込み、期限内にリリースを配信しました。これで「納品完了」です。しかし、そのプレスリリースがメディアに取り上げられず、PVも低く、顧客からの問い合わせもまったくなかったとしたらどうでしょうか? 新商品の認知度も上がらず、売上にも繋がらない。これは、単に「出しただけ」で終わってしまい、ビジネス上の何の成果も生み出していないことを意味します。あるいは、莫大な広告費をかけてアクセスを集めたLPが、洗練されたデザインで情報も満載なのに、コンバージョン率が全く上がらないとしたら。これも納品主義の典型的な失敗例です。結局、美しく作られたLPを「納品」しただけで満足し、訪問者にそのLPの情報をどう受け止めさせ、最終的に購入という行動に至らせのかという感情の動線を設計できていないのです。結果として、広告費は無駄になり、本来得たかった売上も失われます。
「納品が目的になっているコンテンツ」のことを、私は「納品主義型コンテンツ」と呼びます。一方、読み手の行動や感情を動かすことが真の目的になっているコンテンツを、「成果主義型コンテンツ」と呼んでいます。コンテンツを作ること自体がゴールではなく、そのコンテンツによって読者がどのようなアクションを起こし、それがビジネスにどう貢献するのか、その「出口」までを明確に設計しているのが「成果主義型コンテンツ」です。
なぜ今の時代、編集者が求められるのか?
そして、この成果主義を徹底できるプロの編集者が、今の時代にこそ強く求められています。その理由は、皮肉にもAIの急速な発展にあります。
AI、特にLLM(大規模言語モデル)の進化は、誰でも簡単に文章を生成できる時代をもたらしました。ニュース記事の要約から、ブログ記事の草稿、メールのテンプレート、商品説明文に至るまで、AIは驚くべき速度で大量のコンテンツを生み出すことができます。これにより、コンテンツの「量」は爆発的に増え、世の中は情報で溢れかえっています。
しかし、ここで見落とされがちなのが、「品質」です。AIがコンテンツを量産できるからこそ、世の中に出す際の「最後の品質チェック」が、かつてないほど重要になっているのです。AIによるコンテンツの過剰供給は、既にいくつかの深刻な問題を引き起こしています。例えば、検索エンジンの上位表示がAI生成コンテンツで埋め尽くされ、本当に価値のある情報を見つけ出すのが困難になる「情報の砂漠化」現象。あるいは、似たような文章、定型的な表現ばかりが増え、読者が飽き飽きしてしまい、結果的にどのコンテンツも読まれなくなる「コンテンツのコモディティ化」も進行しています。読者は「またこのパターンか」と瞬時に判断し、スクロールをせず次の情報へと移ってしまうのです。
AIの登場でコンテンツの品質に大きな差が
品質管理担当である「編集者」が不在のまま世に出されるコンテンツは、まるで殺菌されていない状態で売られている牛乳のようなものです。あるいは、毒キノコと食用キノコが判別されていないままスーパーの棚に並べられている状況と言っても過言ではありません。見た目は問題なさそうに見えても、その中には読者の期待を悪い意味で裏切る、あるいは全く心を動かさない「毒」が潜んでいる可能性があります。誰もそんな牛乳を飲みたくないし、そんなキノコを選びたくないはずです。
AIの発展によってコンテンツの供給が過剰になった結果、この世の中に出るコンテンツの「品質」には、今まで以上に大きな差がついています。読者は無意識のうちに、質の低いコンテンツを瞬時に選別し、読み捨てるようになっています。コンテンツが量産される時代は、ますます可処分時間の奪い合いになります。すると、あなたのコンテンツが読まれるか読まれないかは、もはや「0か100か」という残酷な時代になるのです。
何でもドヤ顔で「AIでそんなの簡単にできますよ」
読者の貴重な時間と注意をわずかでも獲得できなければ、存在しないも同然となってしまいます。
ところが、私が最近仕事をしていると、打ち合わせで「AIでそんなの簡単にできますよ」とドヤ顔で語るビジネスパーソンが増えているのです。彼らが実際にやりがちなのは、例えば「ブログ記事のネタ出しから執筆までAIに丸投げ」「プレスリリースをAIに作らせてコピペで入稿」「LPの冒頭のキャッチコピーをAIに複数案出させて、その中から採用」といったものです。しかし、「AIでそんなの簡単にできますよ」と軽々しく口にする者は、全員が「納品主義者」であると言わざるを得ません。彼らは、AIを使って「とりあえず形にすること」で自分のタスクを終わらせたいだけの、責任感の欠如した「サボリーマン」思考に陥っています。彼らは、AIを思考のツールではなく、単なる「手抜きのための魔法の杖」として捉えているのです。
とりあえず納品だけして請求書を発行する業者は、ある意味、詐欺師に近い存在です。顧客が求めているのは「文章」そのものではなく、その文章がもたらす「結果」だからです。「とりあえずAIで作りました」と、何の人間的配慮も、感情を動かす工夫もなくコンテンツを世に出す行為は、インチキビジネスパーソンそのものです。
確実に淘汰される人たち
これに対し、プロの編集者、あるいは「編集の作業ができる人」「品質チェックできる人」の存在は、コンテンツ制作において今後絶大な価値を発揮するでしょう。彼らは、AIが生成した文章に人間の感情や意図を吹き込み、読者の心に響くように磨き上げ、最終的な「品質」を保証します。単に誤字脱字をチェックするだけでなく、ターゲット読者の心理を深く洞察し、タイトルの選定、リード文の惹きつけ方、本文の構成、感情の起伏、そして最終的な行動喚起まで、一貫したストーリーと戦略を練り上げます。さらに、誰も読まないコンテンツを作るという無駄な仕事を、そもそも企画段階で食い止めることができます。これにより、クリエイターも、読者も、ひいては世界全体がハッピーになるのです。
ここ数年でAIは一気に普及しましたが、ほとんどのビジネスパーソンはAIを「活用」しているのではなく、ただ「利用」しているだけです。彼らはAIを「楽をするための道具」としか見ておらず、その先に顧客や読者にどのような価値を提供するのか、という「ゴール」や「結果」に興味がありません。これは、自己中心的であり、極めて無責任な態度と言えるでしょう。このような人材は、今後ますます厳しくなるコンテンツ競争の嵐の中で、確実に淘汰されていきます。
良い編集者になるコツは「つまらない」と思うこと
では、どうしたら「納品主義者」にならずに、プロの編集者のような「人間理解」に基づいたタイトル力やコンテンツ制作スキルを身につけられるのでしょうか?
それは、何かを強烈に「つまらない」と思う感情を持つことから始まります。
コミュニケーションの基本は、まずは相手の話に「うんうん」とうなずいて肯定することだ、と言われます。もちろん、それは否定しません。表面的な関係性を円滑に進める上では、非常に大切な態度です。しかし、心の奥底では、常に「この人、つまらない話をしているな……」とか、SNSを眺めていて「この投稿、全然面白くないな……」、プレゼンテーションを見て「この資料、漢字とカタカナが多すぎるんだよ……」、あるいはウェブ記事を読んでいて「途中で読むのをやめてしまったけど、何がダメだったんだろう?」といった、具体的な「つまらない」という感情、そしてそれに伴う違和感をしっかりと持ってほしいのです。
この「つまらない」という違和感、そしてそれに対する批判的な感情こそが、良いタイトル、良い文章を生み出すための出発点となります。なぜなら、その感情こそが、現状を打破し、読者の心を動かす「新しい何か」を探求するための原動力となるからです。「なぜつまらないのか?」を突き詰めることで、読者が本当に求めているもの、彼らの感情が強く動くポイント、そしてその裏にある深層心理が見えてきます。
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