採用説明会で「部署によります」と答える人事担当者はゼロ点だ…なぜつまらないのか?生成AIが大量に生んだ「納品主義者」たちの実態

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 就活シーズンの到来に向け、企業も学生も準備している時期だろう。ウェブメディアの裏で「バズる記事」を設計する”アテンション・ハッカー”こと編集者の代表取締役・鈴木俊之氏は、読まれる記事と人事担当者に関連性を見出す。「つまらないという感情が欠如している典型的な例として、採用説明会で質問に対し『部署によります』という回答を平気でする人事担当者が挙げられます」。一体どういうことなのだどうか。この回答は、質問に「答えている」からこそダメだという。ウェブメディアの裏側やバズ仕組みを知り尽くした鈴木氏がウェブメディアの裏側や、バズを生み出す仕組みをぶっちゃける――。

*本稿は鈴木俊之著『タイトルから考えよう』(星海社新書)の一部を抜粋し、再構成したものです。

第1回:誰もあなたの文章なんて読みたくない…Webメディアの“アテンション・ハッカー”が語る「衝動読みが支配する現代」コンビニ客の7割の驚くべき行動

第2回:なぜ「そんなのAIでできます」と言う人は3流なのか…納品主義者となったインチキビジネスパーソンの末路「LLMの使い方に根本的な間違い」

目次

「それは、部署によります」という回答がなぜつまらないのか

 良いタイトルは、定型を裏切り、読者の感情を強く刺激してきます。具体的には、既視感のない意外性、喜びや不安といった根源的な感情への訴え、「誰? 何?」を知りたくなるクイズ(確認消費)要素、具体的なイメージやメリットの想起、そして読者に「自分ごと」と感じさせるパーソナライズが重要です。これらを複雑に組み合わせることで、読者の心を動かし、次の行動へ導く力が生まれます。

 私たちが目指すのは、単に「情報を伝える」ことではありません。読み手の感情を揺さぶり、共感や驚き、あるいは怒りといった「情動」を生み出し、最終的に行動を促すことです。もしコンテンツが「つまらない」と感じるなら、それは読み手の感情が全く動いていない証拠です。その「つまらない」という違和感を放置せず、「どうすれば面白くできるか」「どうすれば人の心を動かせるか」と問い続けることが、言葉のプロフェッショナルへの道なのです。

 この「つまらない」という感情が欠如している典型的な例として、採用説明会で質問に対し「部署によります」という回答を平気でする人事担当者が挙げられます。

 採用説明会で学生から「御社は残業が多いですか?」と質問されたとします。これに対し、「部署によります」と答える人がいます(というか、私が新卒採用を受けていたときにいました)。この回答は、質問に「答えている」からこそダメなのです。

自分の仕事を早く終わらせたいだけの「納品主義者」

 この採用説明会における人事担当者の真の目的は何でしょうか? それは、単に質問に答えることではありません。彼らの目的は、求職者の志望度を上げさせ、優秀な人材に入社してもらうことのはずです。そのためには、質問に対してただ事実を述べるのではなく、より詳しい情報を伝え、それによって誠実さを示し、ひいてはその情報によって学生の志望度を上げさせる、という「ゴール」があるはずです。

 それなのに「部署によります」と回答するのは、自分の仕事を早く終わらせたいだけの「納品主義者」の行動そのものです。学生が本当に知りたいのは、部署ごとの具体的な状況、例えば「営業部は忙しいが、プロジェクトのスケジュールが詰まっていない時期によっては早く帰れる日もある」「開発部は残業が多いが、裁量労働制で自由度が高い」といった、具体的なイメージが湧く情報です。そして、その情報から「自分にとって、この会社、この部署は合っているか」という判断をしたいのです。

  今、世の中に悪しき「納品主義」が蔓延しています。

 特にメディア業界に限らず、商品やサービスを提供する事業会社において、プレスリリース、メルマガ、LPといった文字コンテンツの制作が、「作ることそのもの」、つまり「納品」にのみ関心が向いています。この状態を私は「納品主義」と呼んでいます。

納品主義が引き起こす実害は甚大

 この納品主義が引き起こす実害は甚大です。例えば、あなたが新商品のプレスリリースを作成したとしましょう。上司から「今日中にこの内容で出してくれ」と指示され、あなたは言われた通りの情報を過不足なく盛り込み、期限内にリリースを配信しました。これで「納品完了」です。しかし、そのプレスリリースがメディアに取り上げられず、PVも低く、顧客からの問い合わせもまったくなかったとしたらどうでしょうか? 新商品の認知度も上がらず、売上にも繋がらない。

 これは、単に「出しただけ」で終わってしまい、ビジネス上の何の成果も生み出していないことを意味します。あるいは、莫大な広告費をかけてアクセスを集めたLPが、洗練されたデザインで情報も満載なのに、コンバージョン率が全く上がらないとしたら。これも納品主義の典型的な失敗例です。

なぜ「結果にコミットしない自己中」が生まれるのか

 結局、美しく作られたLPを「納品」しただけで満足し、訪問者にそのLPの情報をどう受け止めさせ、最終的に購入という行動に至らせのかという感情の動線を設計できていないのです。結果として、広告費は無駄になり、本来得たかった売上も失われます。

 人事担当者の話に戻ります。「部署によります」という一言は、学生の疑問を解消せず、むしろ不信感を抱かせ、結果として志望度を下げることになります。これは、結果に興味がない無責任な振る舞いであり、このような人材は今後確実に淘汰されるでしょう。彼らは、コンテンツ制作における「読者の感情を動かす」というゴール設計を完全にサボっている自己中心的な存在なのです。人事担当者は採用説明会というコンテンツで参加者の心を動かそうとしていないのです。

 なぜ「結果にコミットしない自己中」が生まれるのでしょうか? それは、彼らが自分のタスクを「質問に答えること」という極めて狭い範囲でしか捉えていないからです。学生が残業について質問する背景には、「ワークライフバランスを重視したい」「激務の部署は避けたい」「入社後のミスマッチを防ぎたい」といった、個人的な不安や希望が必ず存在します。

学生の志望度が上がるかより、自分の「仕事」を終わらせたい

 しかし、納品主義の人事担当者は、そうした学生の感情や真のニーズに思いを馳せることなく、ただ目の前の質問に形式的に答えることで、自分の「仕事」を終わらせようとします。彼らにとって、学生の志望度が上がるか否か、ひいては会社が優秀な人材を獲得できるか否かは、自分の責任範囲外の出来事なのです。これは、自分の仕事の「影響範囲」を限定し、その先の「結果」に責任を持とうとしない、極めて自己中心的な態度と言えます。彼らは、自分の行動がもたらす最終的な価値よりも、自分のタスクが完了すること自体を優先するのです。

 何か企画を考えましょう、この内容をもとに企画書を作りましょう、と言ったときに、反射的にすぐ「AIに聞いてみませんか?」とか言うやつは全員ダメなのだ、と私は断言します。もちろんAIは悪くありません。AIは素晴らしいツールです。しかし、AI好きを公言する人の多くは、そのツールを使って「納品」すること自体が目的になってしまっている「納品主義者」なのです。

その先にいる読み手や受け手の感情を動かす

 彼らは、企画の真の目的や、その企画書を受け取る役員やクライアントの感情、そしてその企画書によってどのような成果を出したいのか、といった「結果」について深く思考することを怠ります。例えば、「新規事業の企画書を作ってほしい」と依頼された際、AIに「新規事業の企画書を20個出して!」と入力し、出てきたテンプレートに情報を流し込むだけで「できました!」と提出するのです。

 その企画書が、役員の心を動かせるのか、クライアントの予算を引き出すためのストーリーがあるのか、具体的なデータに基づいた裏付けがあるのか、競合他社との差別化ポイントが明確なのか、といった本質的な部分には関心がありません。彼らにとって重要なのは、「企画書が完成した」という事実、つまり「納品」することだけなのです。

 真のプロフェッショナルは、単にタスクを「納品」するのではなく、その先にいる読み手や受け手の感情を動かし、具体的な「結果」を生み出すことにコミットします。「納品主義」を脱却し、相手の真のニーズを洞察し、行動変容を促す情熱と工夫こそが、企業にも個人にも求められるのです。

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