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なぜ成功したエリートほど「医学部」に狂わされるのか。京大中退、バリで経営者に…それでも埋まらなかった“心の空白”の正体

 教育ジャーナリストの濱井正吾さんが、「学歴ロンダリング」をして、人生が好転した人を取材する連載「濱井正吾 人生逆転の学歴ロンダリング」

 今回は、東海中学校・高等学校から二浪して京都大学農学部に進学。4年の留年・休学を含めて12年通った後、中退して経営者に。その後、42歳から再受験をして大阪医科薬科大学医学部に進学した“ビリおじさん”にお話を伺いました。 全2回の第2回。

目次

38歳で決断した「経営者からの引退」。4年をかけて整えた再受験への布石

 大学を中退してからずっと、飲食店などの経営をしていたビリおじさん。しかし、「途中からずっと、医学部に行けるタイミングがあれば行こうと思っていた」と、かつて自分が諦めた医学部への思いが消えることはなかったそうです。

 そして働く中で、経営をしていたバリ島のスパに来るお客さんの特性から、再び勉強する必要性も強く感じました。

「お客さんの多くは、会社の福利厚生の一環で休職している人が心を休めるために利用してくださっていました。でも、その人たちをしっかり元気にして会社に戻すためには、身体のことや健康のことをしっかり勉強しなければならないと感じたんです。当時自分は40歳手前になってきていました。忙しくなって従業員もたくさんいて、大変なこともある時期でしたが、もう一度大学に入り直して勉強し直してから経営をやってもいいんじゃないかなと感じ始めていました」

 そして38歳のときにビリおじさんは、家族に相談し、医学部を目指して再受験をするための準備を始めました。ここから3〜4年ほどは予備校講師として受験情報と最新の動向を知りながら、自分が経営していた飲食部門、美容部門、宿泊業などの部門を4年間かけて少しずつ売却していきます。そして、ようやく勉強の体制が整ったと感じた42歳の時にYouTubeチャンネル「ビリおじチャンネル」を立ち上げ、YouTubeでの勉強発信を始めました。

YouTubeチャンネルで「医学部合格」を宣言。逃げ道を断った42歳のドキュメンタリー

「42歳からもう一度、医学部受験にゼロから取り組むというドキュメンタリーを撮ろうと思い、YouTubeチャンネル『医学部受験MEDUCATE TV』で世の中の人に医学部に行くと宣言してから自身のYouTubeチャンネルを作りました。当時はまだ、医者でYouTubeをやっていた方が『医学部受験MEDUCATE TV』の細井龍先生しかいなかったので、そういう企画をしませんかと自分から持って行ったんです。ですが、今思えば最初の方は、自分もまだまだ勉強を舐めていましたね。京大に受かった時と同じように、真剣に何ヶ月かやれば学力が戻ると思っていたのですが、予備校講師の隙間時間でやれば戻るというわけではありませんでした」

 再受験1年目のセンター試験では75%程度しか取れず、前期試験では愛媛大学医学部、後期では岐阜大学医学部を受けますが全滅に終わります。

「無惨な成績だった」と1年目を振り返ったビリおじさんは、2年目で意識を変えるようになります。

「(再受験)1年目に仕事自体も勉強になるかもしれないと思って予備校講師を始めたのですが、2年目はその段階を超えて、自分がもっと勉強そのものにコミットして、反復・定着の時間を取らないと成績が上がらないなと感じていました。そこで、1年目に比べて仕事を減らして取り組みました」

 再受験2年目は2次試験の対策をしたこともあり、前期試験で受けた琉球大学医学部はそれなりに善戦しました。しかし、またしても施行1年目だった共通テストのパーセンテージと面接点が低かったことが響き、合格は勝ち取ることはできませんでした。再受験も3年目に突入したビリおじさん。またしても学習のやり方を変えることを決意します。

40代に訪れる「処理能力」限界。100マス計算で鍛え直した思考の瞬発力

「仕事を減らして勉強を増やしてもダメだったので、自分の現状を受け入れました。英語・数学などで処理能力や瞬発力の部分が若い受験生の時代の自分に追いついてないなと思ったので、それを取り戻すために何が必要かを考えました。そこで、毎朝決まった時間に計算ドリルをやったり、100マス計算をしたり、中学受験で難関校の受験生がやるような計算問題をサクサク解いたりしました。頭で理解しているだけで、身体に染みついているところまで学力が戻っていなかったので、フィジカルな勉強を増やしたんです。大人でも受験勉強はできるようになると思っていたのですが、2回の失敗によって、過去の受験時に比べて失ってしまっている能力があることに気づきました。頭の瞬発力を上げることの必要性を40代半ばで気づけて向き合えたのが大きかったですね。

 勉強法の転換が奏功してか、この年の共通テストは85%で、河合塾の共通テストリサーチでも琉球大学の医学部のB判定が出たビリおじさん。前期試験と後期試験に出願した琉球大学医学部には落ちてしまいますが、併願で受けていた大阪医科薬科大学医学部に合格できたため、無事に再度の受験で医学部に入ることができました。

「大阪医科薬科大学は過去問が国公立大学の問題と傾向が似ていたために受けてみようかなと思ったのです。私立はお金がかかるので家族とも話し合いました。安いに越したことはないから琉球大学に行ければいいけど、妻の仕事も大阪にあったので、『大阪の方が、便がいいかもしれないね』とも話していたのでよかったです」

朝から晩まで勉強できる「ありがたみ」。解剖実習で確信した医師へのリアリティ

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この記事の著者
濱井正吾

教育ジャーナリスト。兵庫県出身、1990年11月11日生まれ。大阪産業大学経済学部経済学科に入学後、龍谷大学経済学部現代経済学科に編入学。卒業後は会社員と並行して受験勉強に取り組み、受験費用300万円を貯める。退職後は受験勉強に専念し、合計9浪後に早稲田大学に合格し、教育学部国語国文学科に入学する。早大卒業後は教育ジャーナリストとして活動している。

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