名門中高一貫校に進学して中1の春からいきなり成績上位を獲得する子たちの意外過ぎるたった1つの共通点…なぜ中1の4月で成績上位トップ25%になれないのが致命的なのか
二月の勝者に無事なれた家庭も、そうでない家庭も、長かった中学受験を戦い抜いてほっと一息ついている頃ではないだろうか。
さて、春からの中高一貫校生活で重要なことは何か。教育投資ジャーナリストの戦記氏は「中1の4月から成績上位25%にならないと致命的です。そのために重要なのは、実は小学生時代の公文の活用法なのです」と指摘する。氏の独自の公文活用法と、公文本部で18年勤務した男性の独占インタビューをあわせてお届けするーー。
目次
なぜ公文経験者は中学受験合格者にも多いのか
教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。
2026年中学受験シーズンも終わりました。中学受験で志望校に合格したご家庭も、涙を飲んだご家庭も、制服注文などの4月から始まる中学校生活の準備を開始していることかと思います。制服を注文した後、受験結果に関わらず「反省会」を開催するご家庭も多いかと思います。
我が家も2022年中学受験を終えて娘の制服を注文した後に、「billsお台場」にて夕陽を眺めながら反省会をしましたが、その際に話題になったのは、「振り返ってみると、年長の2015年10月に開始した公文が入口だった」ということでした。
今回は、中学受験での高偏差値校合格者に多い公文について深堀りしたいと考えます。尚、本内容は僕の独自調査に基づくものであり、公文教育研究会の公式見解ではありませんのでご注意ください。
戦記ファミリーが公文の歴史上初めて達成したこと
インターネットや書籍の世界を見ると、公文について語る論者は多数存在します。公文本部、公文FC教室の先生、公文ユーザー、そして(公文ユーザーではない)アンチ公文派などなど。
しかし、以下の点において、「公文ユーザー」として僕は唯一無二の存在であるようです。
①娘が、年長(2015年10月)から高1(2025年12月)まで公文教室に通い、
②娘が、中2(2024年3月)で数英国の主要三科目において最終教材修了を達成し、
③娘が、中3(2025年3月)で数学R200(=大学数学)まで到達し、
そしてこれが最も重要なのですが、
④娘が、年長(2016年3月)の算数A(=小1の足し算)から中3(2025年3月)の数学R200(=大学数学)までの公文学習記録を、ほぼ毎日リアルタイムでブログ(https://senkiwork.com/)に記録として残したこと。
つまり、「中学受験と同時並行で公文を進めて、最初期の算数Aから数英国の最終教材修了までのリアルタイム記録を残してインターネット公開した人」は、現在判明している限りにおいては、僕が公文の歴史上、初めてのようなのです。
公文は1958年7月創立(1962年8月有限会社設立、1981年株式会社化)ですので、2026年2月現在で68年の歴史があります。その間、数英国の最終教材修了者は多数存在しますし、「過去を振り返る形」で書籍やブログを公開している方はいらっしゃるのですが、「リアルタイムで日々の手探りの公文学習を記録に残した人」は珍しい存在なのです。
僕という一個人、しかも娘というn=1の経験しか持たないのに公文を語ることは僭越だとも思いますが、n=1の世界を突き詰めて分析した結果が、今後の公文ユーザーのヒントになれば幸いです。
実は公文は日本より海外でより大きく成功していた
日本全体を考えた場合、「サピックス」や「鉄緑会」という固有名詞を知らない人は多いと思いますが、「公文式」という名前を知らない人はほぼ存在しないと思います。
誰でも知っている「公文」ですが、全体像を俯瞰してみましょう。
・正式名称:株式会社公文教育研究会
・事業モデル:「公文式」教室のフランチャイズ事業、及び教育関連商品事業
・教育方針:無学年制での「自学自習」
・本社:大阪府大阪市淀川区西中島5-6-6
・設立:1962年8月(1958年7月創業)
・創設者:公文公(くもん とおる)(1914年生、1995年没)
・設立背景:公文式の原点は、高校数学教師だった公文氏が、算数が苦手だった当時小学2年生の長男のために作った手書きの算数プリント。その後、公文氏は公立高校教諭歴任後、1958年7月に大阪数学研究会(現:公文教育研究会)を設立して現在に至る。
以上が簡単にまとめた歴史です。
次に、株式会社公文教育研究会の財務内容を見てみましょう。以下の数字を見ると驚くと思います。
(2025年3月期)
・連結売上高:940億(2021年3月期から4期連続増収。単体=国内は472億円)
・連結経常利益:167億円(営業利益率17.7%)
・連結総資産:1,702億円(自己資本比率66.0%)
・連結従業員数:3,626名
公文が事業として十分に成功していることが分かるかと思います。
そして、以下の数字を見ると更に驚くと思います。
・国内教室数:14,800教室(直営教室は少なく、ほぼ全てFC教室)
・国内学習者数:131万人
・海外教室数:8,600教室(世界61の国と地域/日本を含む)
・海外学習者数:226万人
なんと、学習者数としては、日本よりも海外の方が多いのです。海外事業の売上高比率としては、アメリカ約50%、中国約20%、韓国約15%と推計されます。以上から分かる通り、公文は国内のみならずグローバルに展開できる普遍性を有していることが分かります。
国内教室数は14,800教室ですが、国内の公立小学校の数が18,500校ですので、それよりは少し少ない程度です。つまり、日本全国津々浦々、どこに行っても公文の水色の看板を見かけることになります。
次に、公文の国内事業を、他の教育サービス会社(リアル教室運営)の国内事業と比較してみましょう。
(教室数 / 生徒数)
(a)公文:14,800 / 130万
(b)学研:18,490 / 35万
(c)やる気スイッチ:2,400 / 14万人(※海外含むが大半が国内)
教室数の観点では、公文は学研に及んでいませんが、生徒数では圧倒しています。
売上高ではどうでしょうか。国内最大の教育事業者である株式会社ベネッセホールディングスは売上高4,100億円です(うち、教育事業は約2,000億円と推計され、またその中でも通信教育の進研ゼミが主体)。また株式会社学研ホールディングスの売上高は約2,000億円(うち、1,000億円が教育事業)となります。公文の売上高は940億円ですので、ベネッセの半分の規模で、学研とはほぼ同じくらい、という立ち位置になります。
以上をまとめると、公文とは、「1958年の創業後、68年間もの間成長を続け、現在は売上高940億円の約50%をアメリカ・中国・韓国などの海外事業で稼ぎ、これは日本発の教育事業者としては海外進出に最も成功したケースであり、国内には小学校の数18,500校の約80%に相当する14,800教室」を展開する事業体と言えるでしょう。
上記を見る限り、公文は海外にも通用する普遍性を持った、最強の教育サービスと言っても過言ではないでしょう。
公文の教材は「自由度」が最強
そんな公文の教材ですが、「算数(数学)」「英語」「国語」の3教科が主要教科となります。「理科」や「社会」がないことも特徴の一つとなります。尚、公文は「フランス語」「ドイツ語」も展開していますが、これらはあまり一般的ではないので今回の分析対象から外します。
公文の歴史に詳しくない方は、
「科目の順序ですが、普通、数国英とか英数国という順序で呼びませんか?なんで“数英国”なのですか?」
と思うかもしれませんが、公文式では「数英国」という順序で呼ぶことが一般的です。これには深い理由があり、算数(数学)→英語→国語の順序で開発されたためです。
・1954年:数学教材の誕生
・1958年:組織化と数学教材の体系化(大阪数学研究会(現:公文教育研究会)を設立)
・1974年:数学教材を米国ニューヨークに展開
・1980年:英語教室がスタート
・1981年:国語教室がスタート
次に料金体系を見てみます。料金については、公文は2018年10月に値上げをしましたが、2026年2月現在では「幼児・小学生」は以下の通りになっています。
・入会金:無料
・月額会費:7,700円(東京都と神奈川県の教室)、7,150円(それ以外)
(2026年4月にそれぞれ+330円値上げ予定)
つまり、教育事業として興味深いことに、「入会金無料なので始めやすく、そして、どれほどのプリント枚数を進めても同一料金」という事業モデルになっています。
学習者個人のニーズや状況に合わせ、これほど柔軟に対応できる教材は世の中には他に存在しないと僕は考えます。実際、2026年1月には、小2で数学O200(=数IIIの微分・積分)を修了したお子様がTwitterで話題になりました。
公文の考えこまれた教材の意外な強み
そんな公文のプリントですが、その特殊性について解説してみたいと考えます。少々マニアックな話になりますが、恐らく、公文ユーザーの99%の方は気が付いていないことも含まれると思います。公文のこだわりの世界を覗いてみましょう。
①A5というサイズ
一部例外はありますが、公文プリントはA5用紙(=A4用紙の半分のサイズ)の表裏で構成されています。実は、このA5という用紙を選んだことが、公文の発展の基礎になったのだろう、と僕は分析しています。
公文の記録によると、「創始者である公文公氏が、小学2年生の息子さんが取り扱いやすいサイズを考慮したため」とのことですので、小学生での扱いやすさという概念があったことは事実のようです。読者の方からは「そんなに紙のサイズが重要とは思えませんが・・・」という声が聞こえてきそうですが、僕の考えは以下の通りです。
公文を開始する未就学児や小学校低学年生の特性を考えれば分かるのですが、未熟であることから、視野が狭く、そして集中力も低いのです。例えば、机の上にA5用紙ではなく、A3用紙を置いた場合、どちらが未就学児にとって取り組みやすいでしょうか。もちろん、A5用紙ですよね。A3用紙に多数の情報を掲載した場合、子ども目線では集中することは難しいはずです。A4用紙でも手に余ると思います。B5用紙でも厳しいですね。ということで、A5用紙が最適なのです。
後述しますが、公文は「引き算の美学」を極めた教材なのですが、このように「無駄な情報を掲載せずに、未就学児というユーザーの視界を邪魔しない」という思想のもとに、A5用紙が使われているのです。
②集中させる仕組み
A5用紙を選択したメリットは、もう一つあります。それは、余白のスペースが限られる構成にしたことです。
考えてみたら当たりなのですが、A5用紙に問題を印刷した場合、解答スペースが限定されることになります。これは、限られた余白に解答するという記述力を向上させることになります。
例えば、数学H(=中2の連立方程式)に入ると、余白に埋まる形での式展開能力が求められます。これは、算数A(=小1の足し算)から算数F(=小6の四則混合計算)までも同じことです。仮に、A4用紙に印刷されていたら、余白が大きいので、あまり考えることなく必要ではない計算ステップを進めてしまうことになります。
Twitter(現X)を眺めていると、「公文算数なんて、市販のドリルで代替可能ではないか?」という言説を見かけますが、そういう方はA5用紙という特殊性を理解していないように思います。僕が知る限り、市販のドリルはA4またはB5で作成されており、A5サイズで販売されているものはありません。
これは、ドリル制作会社の視点では、「A4サイズにして問題を多数掲載して販売した方が、1冊あたりのコスパが良くなることから、ユーザーである保護者目線で選択される可能性が高い」という読みがあるものと考えます。「A5サイズで集中させて余白も限ることで記述力を上げる」、という設計思想に気が付いていない保護者が多いのが現実だと思います。
③破れず、裏写りしない紙質
公文プリントのA5用紙の紙質についても、奥が深い要素となります。僕は文房具が好きなので、いろいろな紙を試したことがありますが、学習目的としては公文ほど良い紙は無いのではないか、とすら思います。
なにしろ丈夫ですから。
「丈夫な紙なんてあるのですかね?」という声が聞こえてきそうですが、紙の丈夫さは実は日常生活においても重要なイシューです。
例えば、世界最強のハードカレンシーである米ドル紙幣は、世界中どこでも流通しています。マンハッタンでも、南米の高温多湿なジャングルでも、そしてアフリカの乾燥した砂漠地帯でも。一般的な紙は「木材パルプ」から製造されますが、米ドル紙幣は「コットン(綿)75%、リネン(麻)25%」が原材料です。要するに、紙というよりは布に近い素材です。それゆえに、破れにくく、濡れても分解せずに形状を保つ仕組みになっています。米国紙幣の紙は、米国マサチューセッツ州に拠点を置くクレイン社が1879年以来、一貫して供給している特別な紙なのです。
日本の紙幣についても同じです。日本の紙幣は和紙の一種なのですが、サピックス生ならば誰でも知っている和紙の原料である「ミツマタ」と「アバカ(マニラ麻)」(破れにくさを高めるために配合)で製造されています。それゆえに、とにかく丈夫ですよね。紙幣は紙そのものが偽造防止のために重要になりますから、旧大蔵省紙幣局が、1877年(明治10年)に国産第1号紙幣を製造したときから、国が製造しています。現在は、国立印刷局が用紙から印刷まで一貫して紙幣を製造しています。
さて、公文の紙はどのようにこだわっているのでしょうか。
紙の調達先は残念ながら非開示情報なのですが、公文は千葉県船橋市(東日本拠点)に大規模な自社印刷工場を保有しており、国内向けに、年間で約10億枚以上ものプリントを印刷・裁断しています。
公文は自社工場でのプリント作成にこだわりぬいた結果、未就学児が鉛筆で紙に書き込んだとしても、消しゴムで消しやすいプリントを提供することに成功しました。一般的なコピー用紙ですと鉛筆の跡が残りやすいのですが、公文プリントの紙は文字を消しやすいのです。子供は握力と腕力が弱いので、消しゴムでうまく消すのは大変なことなのですが、この労力を軽減しています。
また、公文プリントは両面に問題が掲載されますが、紙質は薄いわりには文字が裏写りしませんので、子供は目の前の「A5用紙の世界」に没頭することができます。読者の方からは「薄さなんて大事な要素ではないでしょ・・・」という声が聞こえてきそうですが、生徒向けに大量の公文プリントを扱う必要がある公文FC教室の観点からは、保管場所を取らなくてよい紙の方が好都合なのです。FC教室の最大の固定費はなにしろ賃料ですから、プリントの保管スペースは少なければ少ないほど良いのです。こういう地道な努力が、公文の安価な会費を実現する下支えになっています。
④匂いが少ない
公文はインキの安全性などにも配慮しています。
匂いについては選定基準に入っていないようですが、公文プリントを嗅ぐと分かるのですが、あまり匂いがしませんし、感じ取れる匂いも心地が良いものです。読書家の方は、書店にて新品のハードカバーや文庫版を開くとインキの香りにうっとりとする体験を持つ方も多いかもしれませんが、公文の場合は控え目な香り設定にしてあると言えるでしょう。
子供が勉強に集中できるよう、公文はインキにまでこだわっているのです。
⑤糊付けされており、5枚単位にちぎりやすい
公文プリントはA5用紙で数学と英語が4つ穴(国語はA5横なので2つ穴)、そして綴じ側が10枚単位で糊付けされています。1枚ずつはがすこともできますが、通常は5枚単位で剥がして毎日の宿題とすることが多いです。このように、紙がバラバラにならない工夫がされているので、子供が未使用プリントを間違えて机から落としても、床に散らばることがありません。
以上、公文プリントの特殊性について解説させて頂きました。公文がいかに紙にこだわり、子供の学力を伸ばすことに注力しているか、お分かり頂けたかと考えます。