今後のシナリオは? 投資歴20年超のベテラン投資助言者が教える「教科書」が通じない2026年の“勝ち方”

中東情勢の急激な緊迫化やトランプ氏による関税問題の再燃が連日のように市場を揺さぶり、「有事の円買い」といった過去のセオリーがまったく機能しない「教科書が通じない年」で、個人投資家はどのように戦えば良いのか。
投資歴20年超、投資助言者として日々投資家にアドバイスを届ける投資助言者【馬】さんに、どんな相場でも生き抜くマインドと戦略について語っていただきました。
みんかぶプレミアム特集「まだ上がる?また下がる? 2026下半期の攻め方」第4回。
目次
それぞれの材料が短期間に連続して市場へぶつかっている
ーー2026年に入り早4ヵ月が経過しましたが、今年の相場環境をどのように総括されていますか?
一言で言えば、今年は完全に「教科書が通じない年」だと感じています。年初からトランプ氏の関税問題が再燃し、市場がその影響を警戒していたところに、中東情勢が一気に緊迫化し、ついには米国がイランを攻撃するという想定以上の事態にまで発展しました。これだけでも十分に大きな材料ですが、今年の難しさは、単に材料が多いことではなく、それぞれの材料が短期間に連続して市場へぶつかり、相場全体を極端に揺さぶっている点にあります。
特に大きいのが原油です。いまの相場は、株も為替も債券も、原油の値動きに強く引っ張られている印象があります。夜のヘッドライン1本で原油が数ドル単位で跳ね、そこから世界中のマーケットが一気に反応する。しかも流れてくるニュースの中には、誤報やフェイクに近いものも少なくありません。何が事実で、どこまでが思惑なのかを瞬時に見極めなければならない。そういう意味で、この4ヵ月は経験のあるトレーダーほど苦しんだ相場だったと思います。これまで頼りにしてきた経験則や過去データが、今年に限っては半分ほどしか通用しない。そんな感覚があります。
ーー「有事の円買い」の言葉が通用しない相場について、どのように考えているか教えて下さい。
この相関の崩れについては、実はかなり前から「構造的な転換が起きている」と感じていました。いまだに「日本円は低金利だから安全資産として買われやすい」といった、昔ながらのメカニズムで相場を見ている人もいますが、その大前提自体がもう揺らいでいるんです。かつては「リスクオフ=円高・株安」という教科書どおりの反応が機能していましたが、日本の金融政策が正常化へ向かい、海外勢の円建て資産の扱い方も変わってきたことで、その方程式は足元から崩れつつあります。いわゆる円キャリートレードの構造変化ですね。
さらにイランとの衝突以降、資金の逃避先が従来のドルや円ではなく、より直接的にゴールドへ向かっているのも象徴的です。銀など他の貴金属が連動する局面もありますが、結局もっとも強いのは金です。以前であれば、有事のときにはドルや円へ資金が逃げるのが一般的でした。しかし今は、それよりも「まず金」という流れがはっきりしている。この変化は、極めて致命的です 。
今の相場を見ていると、本当に強烈な違和感があります。たとえば、どう考えてもネガティブな材料が出た銘柄が、なぜか大きく買われる。地政学リスクも、普通に考えればそう簡単に解決しないはずなのに、市場は都合の良い部分だけを先取りして株価を押し上げていく。テクニカルもチャートパターンも効かず、アルゴリズムがニュースの見出しだけに過剰反応して値を飛ばしていく。長く相場を見てきた人ほど、「これはさすがにおかしい」と感じているはずです。歴史的に積み上がってきた相関や逆相関、本来なら整合性を持って機能するはずのものが、今は力任せにねじ曲げられているように見える。それが今の市場に対する率直な印象です。
日経平均の今後のシナリオは?
ーー史上最高値からの急降下については「一時的な調整」か「トレンドの転換」か、見方が分かれています。日経平均株価の節目や今後のシナリオについては、どのように見ていますか?
日経平均は強い下落トレンドに入っていましたが、イランとの停戦合意報道が出てからは大きく反発し、4月第2週には前週比で3,800円高と、かなりインパクトのある戻しを見せました。一見すると底打ちしたようにも見えますが、私はまだ「本格的なトレンド転換」と断言するのは早いと見ています。あくまで、大きな調整局面の中での回復フェーズに入った段階であって、地政学リスクに起因するボラティリティが高すぎる以上、上昇の持続性には疑問が残ります。ダウ理論的に見ても、出来高が伴っていないんです。
薄商いの中で無理やり持ち上がっているだけなら、地合いが少し悪化しただけで再び崩れる可能性があります。
今後の大きな節目として意識しているのは、やはり「5万円」です。4万7,000円という数字ももちろん重要ですが、心理的にも実質的にも、5万円という大台は非常に強く意識される水準です。もし先物ベースで6万円が天井だったと考え、そこから過去にもよく見られた20%程度の調整が入るとすれば、計算上は4万8,000円前後まで下がることになる。だからこそ、5万円を明確に割るかどうかは極めて大きな分岐点になります。
そのため、シナリオとしては二つあります。強気シナリオでは、5万円台を明確に割らずに底堅さが確認され、そこから年末に向けて5万9,000円を超え、史上最高値を更新していく展開です。このシナリオには絶対条件があり、米国とイランの和平が本格的に進み、ホルムズ海峡の正常化が視野に入ることです。
逆に弱気シナリオでは、中東リスクが再燃して3月末の安値圏へ戻り、そこを割り込んで下落が加速する展開です。その場合、4万7,000円から4万8,000円台が次の強いサポート帯として意識されます。ここは投資家心理の支えにもなっている重要ゾーンなので、もしここまで崩れるなら、相場はかなり厳しい局面に入るでしょう。